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意外と地味なシステム領域のオシゴト

 エレベーターに入ったと思ったら、秒もかからず上層に辿り着いていた。なんだか不思議な体験だよ。

 現世ならかなりの超技術だが、元より空間転移がデフォルトの移動手段であるシステム領域からすれば割合普通のこととは言える。とはいえエレベーターのオブジェクトに構築してかつ固定化するってのは、この領域においてもかなり異様なこだわり方だけどね。


 さておき何階なんだか知らんけど、オフィス広がる上層を歩く。通路を進めば何やらパーテーションやらで区切られた部署ごとに精霊知能がデスクに座って、システム管理業務をこなしている。

 各人精霊知能としての権能を使ってシステム・コマンドプロンプトに接続。主にデータ領域におけるデータの整理整頓やスマート化、あるいは新規プログラムの作成や編集などなど……まあなんていうか、非常にお固い仕事をしている印象だ。


「うーむ、完全にオフィスの光景だな。娯楽要素を模倣するのは分かるのだが、なぜこんなビジネスシーンにまでこだわるのか……」

「そこはそれ、ブームだからなァ。現世のものならなんであれ取り入れたいのさ、みんな。特に楽しいことも何もないデータ管理業務なんざ特に、変化をつけて楽しみたいってこともあるだろうし?」

「人格と個性、感性を得た以上はそうしたメンタルケアにも目を向けねばならないからな。あと現世のドラマでもこうした風景はよくあるため、それに憧れてのオブジェクト設定とも言える」

「トレンディドラマあるあるですねー。何やってるんだかイマイチよく分かんないけどなんかオシャレなオフィスでオシゴトしてるやつー」


 怖ぁ……システム領域がトレンディドラマの影響を受けまくりである。

 やってることがはっきり言って無味乾燥の極みみたいな内容で、かつそれをずーっと行っていくわけだからまあ、何かにつけて変化というか味付けは変えたいんだろう。

 せっかくの人格を得てまでやることが、虚無顔で永遠続く管理業務ってなると遊びたくなるのは理解できるし、そこは全然構わないとは思うよ、俺も。


 ちなみにみんな空中ディスプレイみたいな感じで管理画面を何もない宙に展開して、それを念波で操作している。

 オペレータやアドミニストレータのステータス機能に近いというか、あれの機能の元ネタと言えるものがこれなわけだね。とはいえ現世領域用のステータス画面は指によるタッチ操作が必要なので、結果的に別物と言えるだろう。


「にしても忙しそうだなあ……パッと見た感じ、主にデータ領域の復旧作業が主たる内容ってところかな、このへんは」

「ええその通り。さすがですね、一目して分かりますか」

「そりゃあな。俺の本体にもバッチリ接続して頑張ってくれてるみたいだし……っと。お疲れ様でーす、はじめまして、コマンドプロンプトの端末ってか転生体でーす」

「えっ!? ……あっ、あっ、ああああ!? コマンドプロンプト!? お、お疲れ様です!!」

「わわわわっ! 本物です!?」


 お仕事の最中ながら、俺達に気づいて精霊知能達はみんなこっち向いて慌てて挨拶してくる。なんだか居たたまれなくてただただ、お疲れ様ですって感じだ。

 修羅場とまでは言わないけど結構忙しいっぽいのは、やはりセーフモードから解除された世界の復旧作業、とりわけ邪悪なる思念によって侵食されていたデータ領域に関してのそれが急務だからだろう。


 そもそもデータ領域ってのが何かって話なんだけど、つまるところを言うとシステム領域の管轄下にある、データ格納庫のことを指していたりする。

 システム領域と、その直下にある始原の4体が住まう領域よりも下層にある、数億もの層から形成されているデータのみの次元の束と言えよう。

 

 そのデータ格納用領域のさらに概念領域、そして現世領域と続くため……位置関係で言えばシステム領域と概念領域の間に存在している。

 たまにハンバーガー屋さんで販売していることもある、パテを10枚近くも重ねたカロリーのお化けみたいなやつあるじゃん。あれの上下バンズがシステム領域と概念領域、現世領域とするなら真ん中のてんこ盛りのパテがデータ領域だ。


 つまり世界の構造って話になると、実のところ9割5分くらいはデータ領域で構成されてたりしますって話なんだよね。

 そんな部分の大半に至るまでこれまで侵食されていたのが、いきなり解放されたわけである。激務も必然といえば必然だった。


「システム領域が復旧したことでセーフモードも解除され、これまで邪悪なる思念への対応のために最低限にしていた本来の業務も急ピッチで原状復帰しつつあります」

「だから精霊知能の頭数が足りなくて、慌てて新規プログラムをバカスカ生み出してるんですよワールドプロセッサも。アフツストもたしかそのへんの業務の補佐をしてるんだったっけか?」

「最終チェックだけだな。本来はコマンドプロンプトにしていただくべき部分を不遜にも私が受け持ってしまっている──お気を害されたならば謝罪いたします」

「いやいや、むしろこちらが頭を下げなきゃいけないよ。ごめんアフツスト、余計な業務を担わせちゃってる」

 

 アフツストやシャーリヒッタの解説。やはり原状復帰のためにこれまでとは別種の忙しさが発生しており、そしてそのために新しい精霊知能達も次々生み出されようとしているってわけか。


 本来ならば新規精霊知能のチェックは俺もやらなきゃいけないところを、アフツストに丸投げしちゃってるのはさすがにまずいよなあ。

 このあとワールドプロセッサに会ったらそのへん、ちょっと相談してみようかな。せめて最終チェックだけでもこっちで引き受けようか? って。

 俺ももう、知らぬ存ぜぬを決め込む気もないしね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 始原の四体も概念存在なのに随分とポジションが異なるのだなあ
[一言] さすがにここまでは、「伝道の波」は押し寄せていないようですね…。 ほっと一安心。 (ただし、時間の問題かも…?)
[一言] これは、いつの間にか出来てた娘を認知するって事かぁ( パパ型さん、父親の自覚がついに…これにはワープロさんもにっこり
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