課金したからと言ってお目当てのキャラが手に入るかは分からないのがガチャの怖さよ……!
決戦スキル保持者間での念話も終わり、俺はエスカレーターに乗って二階まで戻ってきていた。
すでにグルチャで梨沙さんや松田くんには連絡済みで、みんな二階のゲーセンで遊んでいるとのこと。商業施設内にあるってことでクレーンゲームやファミリーで遊ぶゲームが多いみたいだね。
足早に現場へと向かう。
「ええと、通りに出たら南に進んで……と。あれか」
広く長大な商業施設、南北に伸びる長い大通りを進めば、すぐにそれらしき店舗が見えてきた。っていうか遠目からでもゲームの筐体が見えてるし、一発で分かるね。
そしてそうなると友人達も見えてくるわけで。梨沙さんに松田くんと木下さん、片岡くんと遠野さんがそれぞれクレーンゲームを遊んでいるところを発見したのだった。
店内に入る直前、こっちに気づいた面々が手を振る。遠野さんなんてピョンピョン身軽に跳ねながら大きく両手を振ってるよ、ウサギさんみたいだね。
俺もみんなに手を振りつつも近づき、そして合流を果たす。概ね1時間ぶり、お仕事をこなしてからの再会だ。
「公平くん! お疲れ様、怪我はない? 大丈夫?」
「お疲れー。全然この通りピンピンしてるよ、なんなら宙返りだってできちゃうくらい元気だよ」
「マジ? って、まあ探査者だしそのくらい朝飯前だよな、お疲れー」
梨沙さんがすぐさま寄り添ってきて、俺の身体のあちこち、怪我や異常がないことを確認してくれるのがなんだか照れくさい。
思えばこの子、春先のスタンピードの時からずっと気にかけてくれてるものなあ。危うく狼人間に襲われそうになったから、モンスターの怖さとか危険性を強く認識しちゃったがゆえなんだろうけど。
だから安心させるように俺は笑い、軽口なんかも叩いてみる。松田くんもそれに応えてねぎらってくれて、梨沙さんも多少は安心してくれたみたいだった。
さて、これで元通りの遊びに来た学生グループの出来上がりだ。今、みんなでやってたっぽいクレーンゲームを指差し、俺は尋ねる。
「今これやってるの? ゲームのフィギュア……かな? 誰か欲しい人いるの?」
「あ、私が欲しいんだー。スマホゲーの推しキャラ! イケメンだよね〜」
筐体内に景品として置かれているのは、見たことあるようなないような微妙なラインのイケメンのフィギュアの箱。
ロゴを見るに巷で人気なスマホゲームの男性キャラだったと思うんだけど、いかんせんそのゲームは名前だけ知ってるけど実際にやってないからなんともかんとも。
ただ、木下さんがどうも夢中らしくてハッスルしてるのが印象的ではある。梨沙さん同様にリア充陽キャギャルって感じの彼女だけど、推しキャラがいる程度にはゲームにも傾倒しているんだね。
ちょっと意外そうに松田くんが言った。
「木下って意外にそういうゲームもするんだな。俺とか山形なら分かるけど」
「俺達は俺達で同じスマホゲームしてるもんね。こないだの水着ガチャどうだった?」
「SSR3枚抜きしちゃった。山形は?」
「爆死した」
爆死した。すっからかんだよ、俺の石。
と遠い目をして呻くと松田くんの勝ち誇る笑み! あーあ今年の夏ももうおしまいですねお疲れさまでした!!
ゲームキャラのフィギュアに夢中な女子一人、ソシャゲのガチャで明暗くっきり分かれちゃった男子二人。つまりはこのグループの半数が、スマホゲームにまあまあのめり込んでいるのが伺える一幕。
そんな俺達を残る3人、梨沙さんに片岡くん、遠野さんは苦笑いして眺めていた。
「熱中してるね、3人とも。私はあんまりゲームしないけど、なんかすごい楽しそ……んー、公平くんはなんだか嘆いてるけど、うん」
「家ではするけど、外でやるようなスマホゲームとかはしないなあ。遠野はそういうのしたりするのか?」
「あはは、全然! お小遣いはぜーんぶ美味しいものに注ぎ込んでるから!」
「ああ……まさしくグルメなんだな」
「えへへへ!」
あまりスマホゲームをしない人達の、特に梨沙さんの苦笑いが胸に刺さる。片岡くんはいわゆる家庭用ゲーム機とかはするようだけど、外出先でまではしないみたいだ。
そして遠野さんはやはり安定している。素晴らしい。自身の食欲に対してどこまでも真摯に向き合っている感じがして、いっそ清々しくさえ思うほどだ。
『うーむ。この遠野とかいう女、少しは見どころがある。隣りにいる男に惚れてるのか、時折妙なところでブレーキをかけるのはマイナスだけど、食への貪欲さは大したものかもしれないね』
ほら、なんか脳内のアルマさんが謎の上から目線で認めてやってもいい感を醸し出してるし。
史上最悪レベルで貪欲なこいつに認められるとかちょっぴり不安になるんだけど、どこまでいっても遠野さんは人間だしその枠を越えることはさすがにないだろう。
邪悪なる思念としての発言というより、単なる大食いかつ舌の肥えたアルマとしての物言いと解釈すべきだろうね。
「──あともうちょい! あとちょっとで取れそう! 落ちる!」
「お、マジか!? そこは慎重にいけよ木下、物理法則をよく考えろよ!」
「ガンバ、涼子!」
と、言ってるうちに木下さんにフィギュアゲットチャンスが到来していた。何度かクレーンを動かしてるうちに、いい感じに景品を取出し口付近まで持ってこれたらしい。
みんなで集まり観戦する。さあどうなるか! ──見てるだけでも楽しい、これもある意味青春の光景ってやつなのかもね。
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