「悪意自体に興味はないけど、それに振り回される人間を見るのは楽しいよ」
関口くんや大勢の人達の期待、願いを受けて駆け抜ける。俺一人でのダンジョン探査、しかも今までほぼ関口くんに先導してもらっていたので体力気力も有り余っている状態。
道も部屋も関係なしに駆け抜けて、モンスターの気配がすれば一瞥さえせずに山形くんビームで片付けていく。
今の俺はまさしく風。
あらゆる魔を浄めて払う、一陣の疾風だった。
『おーおー、飛ばしまくってるね公平! 以前には玩具にもならなかったあの雑魚と別れてから、ものの5分でもう2階層目の終着か!』
「関口くんを侮辱するな、お前にその資格はない。っと……山形くんビーム!」
「ぐげごりゃばぁぁぁ!?」
邪悪なる思念が植え付けた悪心の種を、見事に打ち払ってみせたかつての関口くん。だが当の邪悪なる思念ことアルマからすればまったくもって面白くないらしい。
あからさまな侮辱を脳内にて吐いたアルマを叱りつつ、今入った部屋内、反応できずに振り向くことさえしないでいるモンスター、たぶんオークとかかな? に向けて《あまねく命の明日のために》つまりは山形くんビームを放つ。
あっけないほど速やかに上半身を消し飛ばされ、魂が解放されて輪廻に消えていく。
その姿を確認して俺は、そこで一旦立ち止まった。この部屋が2階層目の最奥のようだ。下に続く階段が、部屋を抜けた道の先に見える。
ここに至るまで7つの部屋を突破してきたけど、時間的には5分かそこらってところか。さすがに本気で飛ばせばこうもなるよな。
ふぃー、と息を吐く。これで残るは3階層目、6部屋か。このペースで行けばトータル大体30分程度で最奥に辿り着ける。予定していた1時間程度に比べてかなり良いペースだな。
とはいえのんびりしていて良いはずもなく、先へと進む。階段を下りていきながらも俺はふと、独り言ちた。
「……そう言えば初めてかもしれない。マジで一人で探査するのって」
『いつも御堂香苗がベッタリだものな。戦闘には参加しないものの、ひたすらビデオカメラ回してるし』
「それな」
いつもいてくれている人が今日はいない。そう、香苗さんだ。
さしもの彼女だって俺のオフの日にまで行動をともにしているわけじゃない。そもそもあの人にはあの人の探査業が別口にあるはずだからね、本来。
たしか別個に組んでるパーティメンバーの人達だっているはずだ。未だご挨拶もしたことないけど。
どうも隣県での活動の際に香苗さんが時折参加しているってくらいのパーティだから、日常において接点がないんだよなあ。
「そのうちお会いしてみたいんだけどな、香苗さんのパーティメンバー。みんなA級なんだろうし」
『パーティメンバーねえ……実は御堂香苗に好意を抱いているようなのがいて、あの女をとんでもないアレな伝道師に仕立てちゃった君に嫉妬を抱いてたりするかもよ』
「怖ぁ……微妙にありそうなこと言うなよお前……」
なんでもない調子でとんでもない可能性を提示してきた脳内のアルマさんにドン引きの声を漏らす。
こいつ実は修羅場の妖精とかだったりしない? 妙に解像度の高い妄想を展開してくるの本当に止めてほしいよ、怖ぁ……
いや、しかしまあ、可能性自体はなくもないのか。
香苗さんほどの美女で大成した探査者で、しかもお家も太い。パーティメンバーくらい近しい間柄の男の人なら、恋慕くらいは抱いて然るべきかも。
無論、パーティメンバーの男女の構成にもよるけどね。たとえば宥さんみたいに女性オンリーのパーティなら、そんな修羅場はそうそう起きはしないだろうし。
逆に万一香苗さん以外全員男性のパーティだったりしたらもう地獄だよ、俺へのやっかみとか嫉みとかで大変なことになりかねない。
『あとはまあ、他に一人だけ女がいるパターンとかかな? 男はみんな御堂香苗にゾッコン、そして女はそんな男のうち一人あるいは複数人に恋慕していてだね──』
「あーあーはいはいわかったわかった、もう聞きたくないそれ以上!」
いわゆる女性の嫉妬まで絡めてきたよ。聞いているとそのうち、香苗さんのパーティメンバーに会いたいと思えなくなりそうなので強制的に打ち切る。
もはやドロドロの恋愛ドラマだよそこまでいったら。何がアレって仮にそうだとして、渦中にいるはずの香苗さんが何一つ疑う余地なく伝道師してるもんだから場外乱闘に近い状態に過ぎないってことだよ。
ていうかさあアルマ、普段そんなこと考えて生きてるのか?
やたら飯食え飯食え言ってくるけど、実は人の悪意や憎悪の感情が主食です! なんて悪魔か妖怪にありそうな生態してたりするんだろうか。
だったら悪いけどさすがにそんなの俺は食えないよ、我慢してください……
『普通に人間の食べる美味しい食事が主食だよ!! ふざけるなよ悪魔だの妖怪だのと失敬な奴め、今しがた君が言ったドロドロの恋愛ドラマとやらみたいな話を四六時中聞かせてやろうか!』
「なんで四六時中話せるくらいネタのストック持ってんだよ!?」
興味津々かよ、こっちがふざけんなだよ!!
一人だから気兼ねなくアルマに怒鳴り返せるし、アルマのほうも遠慮なしに脳内で騒ぎててくるし。
そんなふうにギャーギャー言い合いながらも俺達は、階段を降りきって3階層目に突入するのだった。
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