山形、お前のスキルおかしいよ(真顔)
先行する関口くんが、通路の時点から部屋内のモンスターを弓で狙撃して、残った敵は進入後に剣で切り刻み処理する。
撃ち漏らしや対処できなさそうなやつがいた場合、そっちは俺が山形くんビームで処理する。
基本的にはその繰り返しだった。
彼の手際はかなりのもので、その繰り返しであっという間に一階層目を突破したんだ。
モンスターがそんなに大量に発生していないのもあってか、6個もの部屋を彼メインで処理したことになる。
それでいてここに至るまで概ね20分程度しかかかってないんだから、全力の、そして本気の関口くんがどれだけ有能な戦士かが分かろうってものだよ。
ただ、それだけに関口くんにかかる負担も凄まじいものがあった。
俺同様C級である彼にとり、D級であるこのダンジョンは本来パーティを組むことで順当に攻略できる程度の難度だ。それを俺をなるべく温存すべく、そして1秒でも早く踏破するために毎回弓を使っての大技、発動後にデメリットが起きるハードショットを駆使し続けていたんだ。
はっきり言ってもう限界だ。2階層目への階段を前に、彼はついに片膝をついて疲労困憊の様相を呈していた。
「はぁ……はぁ……っ! く、ふぅ、ふぅ」
「関口くん、ちょっと休憩しよう。良いペースで進めているよ、俺達」
「あ、ああ……探査者やってて初めてだ、ここまで全力でゴリ押ししたのは、はあ……」
相当な無理をした彼を少し落ち着かせ、軽い休憩に入る。と言っても関口くんだけだな、俺はそのまま先に進むけど。
ダンジョンの約3分の1を楽させてもらったんだ。残りは俺が受け持たせてもらう──気合も十分だからね、サクサクっと行かせてもらうさ。
俺は荒く息をする関口くんの背中を軽く擦りつつ、ここからは俺が先行する旨を伝える。
「ありがとう、関口くん……これ以上ない、最高のサポートだった。ここからは俺が行くよ、君はどうか体力をしっかり回復させて、落ち着いたらダンジョンから離脱してほしい」
「い、いや、待て。すぐ、に……息も……整える、から。俺、も」
「君だってこの後、再開するイベントがあるでしょ? ゲストが疲れ切っていたんじゃいけないよ」
「う……」
ダンジョンを踏破したらはい、おーわり! な俺とは違い、関口くんはその後イベントに出演しなくちゃならないんだ。何しろゲストだからね。
そんな彼が今、この探査で賄える負担はこれが限界だ。本当に、よくここまでしてくれたと思うよ。だからここから先は、責任を持って俺が引き継ぐさ。
「今日、関口くんにはまだダンジョン外でやるべきことがある。だからダンジョンのことは俺に任せてほしい……君の分まで、頑張らせてくれ」
「…………分かった。世話をかけてすまん、山形」
「入り口付近までのワームホールを開くよ。潜ればすぐ地上に出られるから、それを使って脱出してほしい」
納得しがたいものはどこかあるんだろう。悔しげに俯き、それでも以後の探査を俺に一任してくれる関口くん。俺が入口までのワームホールを開くと、名残惜しみつつもそこを潜り、空間を隔ててこちらを見てくる。
頷き、俺は立ち上がった。ここから先はソロ探査、つまりはフルポテンシャルでの一騎駆けだ。
であるならば、当然のようにこのスキルは発動する。
俺のファースト・スキル。なんか巷では俺の代名詞にもなっているらしい、あのポエミースキルが。
「《風さえ吹かない荒野を行くよ》……発動したな」
「っ……はは、一人で戦う時、全能力10倍か。相変わらず無茶苦茶な条件と効果だよ、そのスキル」
一人での戦闘時、全能力を10倍に引き上げるアドミニストレータ用スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》。
その発動とともに俺の放つ気迫、闘志までもが増したんだろう。あてられたかのように関口くんが、眩しいものを見るように目を細めた。
なんなら今に限って言えば、関口くんによるスキル《勇者》のバフもあり実質15倍。
元より発動していた《誰もが安らげる世界のために》の50倍バフも絡んで、今や戦闘能力に限って言えば、素の状態から実に750倍の出力になっている。
普通に考えれば無茶苦茶な、ヤケクソかよってレベルのバフ量なんだけど……本当に全力なら10万倍だからな。
まだまだ0.65%しか力を引き出してないあたり、コマンドプロンプトでありアドミニストレータでもあるってことがどれだけ規格外か、よく分かる話になってるよね。
ともあれ引き出した力はすでにこの先の、待ち受けるモンスター達を瞬殺できるだけのパワーを持つ。
俺は下層への階段を見据え、関口くんへと告げるのだった。
「1時間以内に必ず戻るよ。イベントは再開できるし、人々は安心して施設を引き続き利用できる。そう信じて関口くん、君はイベントの打ち合わせとかしといてよ」
「分かった……すまん! ありがとう。お前が今日、ここに来ていてくれて本当に良かった」
「こちらこそ。ここまで道を拓いてくれたこと、とてもありがたく思う」
大分息は落ち着いたけど、それまでの戦闘による消耗は激しいのだろう。しんどそうにそれでも、俺に感謝を示してくれる関口くん。それに応じて二人、顔を見合わせて軽く頷けば彼は地上へと戻っていく。
そして俺は階段を下り、2階層目へと向かうべく駆け出したのだった。
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