ユニークネームモンスターは割とどこのダンジョンでも見かける。見かけるのだ……!
客観的に聞かされると顔から火が出そうなチート系主人公やってる俺ちゃんに、期待なんだか畏怖なんだか、はたまたドン引きなんだか分かんない視線を向けてくる皆様方。
敵意は一切ないから全然いいんだけど、居た堪れないのは正直あるからね。とりあえずさっさと調査結果を聞いて、規則上潜れそうなら全探組に連絡入れて探査に取り組もうか。
仮にB級以上のダンジョンの場合、仕方ないから空間転移で誰かしら、俺より級が上の人にご協力願おう。
それこそウワサの伝道師さんとか、あと昨日の今日で顔を合わせづらいとか思ってそうな酒癖悪いほうの統括理事とか。
S級に知り合いがいるってのはこういう時便利だね。そもそもこんな成り行きでダンジョンに潜ることってそんなにあるか? って感じだけれども。
さておき調査業者さんに向き直る。代表らしいおじさんもまた、俺を見て驚いていたけどすぐに気持ちを切り替えて、件のダンジョンについての仔細を語ってくれた。
「専用のソナー、レーダー機材によって調べたこちらのダンジョンの階層数は3、部屋数は19。一階層目ごとに6個から7個ほど部屋がある形になります」
「規模的には規模の大きめなE級から、小規模のB級までってとこですか。モンスターについてはどうです?」
「機材の性能上、最初の一部屋しかエコーロケーションによる判定はできませんでしたが……D級モンスターらしき敵影は確認しました。"動く海草"というモンスターですね」
「動く海草……ユニークネームモンスターですか」
ダンジョン調査にあたっては専用の機材を使い、いわゆる反響定位を用いての調べ方がなされる。
大ダンジョン時代初期は性能が悪く、てんで調査にならなかったそうだけど……そこはさすがの文明発展力、開発に開発を重ねて今や、100階層近くまでなら大まかな部屋数や階層をほぼ確定レベルで割り出せるってんだからすごいよね。
そんな進歩した技術によって今回、割り出されたのはなんと動く海草なる奇妙なネーミングのモンスター。
以前行われた竜虎大学での探査者イベントにて知った、珍妙な名付けが為されたモンスター、通称ユニークネームモンスターの一匹だろう。名前からしてこう、美食派とかそれに準じた派閥によるネーミングって感じだ。
隣の関口くんも微妙な顔をしているよ。
まあ、それはさておいても。100年の年月を経て積み重ねた、科学力をもって得られた知見。
それらを踏まえて調査業者さんは件のダンジョンの難易度について、以下の通り結論付けた。
「──このダンジョンはD級です。規模から言ってC級に近くはありますが動く海草らしき影が確認された以上、D級扱いとして全探組には登録を依頼しました」
「つまりは俺と山形で十分に探査できる範疇ってことですね……よし! 行けるぞ山形!」
「良かった……規模もそんなに大きくないし、全力でいけば一時間もあればどうにかなるかもね」
「ああ! イベントもどうにか再開できる芽が出てきた!」
ギリギリ、俺でも潜れるラインの難易度認定が下されていたようで関口くんと二人、笑顔で頷く。
3階層19部屋。そのくらいならダッシュで行って一時間以内でなんとかなるだろう。ならなかったら伝家の宝刀、空間転移でスタコラサッサだ。
さすがに最初から空間転移を駆使してものの数分で終わりました〜、だとイベントは良いものの俺と関口くんが変な疑われ方をしてしまいかねない。
なるべくなら尾を引く形にはしたくないからね。というわけでここはいつも通り真正面から踏破を試みることにしようか。
関口くんがマネージャーさんに声をかけた。
「マネージャーさん。というわけなんで今から探査します。14時を少し回るかもですけどイベントは再開させられますんで、今のうちに遅れてる準備を進めるようスタッフさんに伝達お願いします」
「わ、分かりました! ですがあの、私もお手伝いしたほうが良いんじゃないでしょうか? 一応D級ですし、多少の役には立てるかも」
「適材適所ですよ、そこは。あなたはハミバが最高のパフォーマンスを発揮できるように動いて、俺は山形と一緒に速やかな探査を試みる。それぞれにそれぞれの役割があるはずです」
探査者でもあるマネージャーさん的には、アイドル装束にすでに身を包んでいるハミバはともかく自分が探査に加わらないのが気が引けるんだろう。心苦しそうに表情を歪めている。
だけどそこを卒なく、イケメンスマイルとともにスマートなフォローを入れる関口くん。そう、まさしく適材適所で、俺達ではどうにもできないイベント再開への道筋を立てるってのが今回、マネージャーさんのやるべきことのはずなんだ。
そして苦笑いとともに、関口くんはウインクしてマネージャーさんに言った。
「俺だって正直、山形の足を引っ張るだけの気はしてますけど……彼を連れてきた者として、せめて手伝いくらいはしないと申しわけが立ちませんからね」
「関口くん……」
「俺達は俺達の仕事、責任、使命をまっとうします。だからマネージャーさんも、ハミバも、今の自分達にできることやしなくちゃいけないことをしてほしい。お願いします」
「…………分かりました。どうかお二人とも、ご武運を」
なんだかんだ、探査者としての誇りや良心を強く抱いている関口くんの、彼らしい言葉が胸を打つ。
かつて邪悪なる思念による力の誘惑、魅力にさえも瀬戸際で抗い……当時憎んでいた俺をも案じてくれたその気高さは、真人類優生思想を拭い去ったことにより真の輝きを放つようになったと俺には思えるよ。
マネージャーさんも、ハミングバード・サーチャーズの5人もそんな彼の真摯な言葉に覚悟を決めたみたいだ。
力強い、頼もしい表情を浮かべて──スタッフさん達に今、できることをするように要請し始めるのだった。
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