探査者がダンジョン探査業以外に基本、就労してはいけない端的な理由
楽しく話しながらのお昼ごはん。ラーメンの麺を啜り咀嚼して、その味に酔いしれながらも俺はみんなのやり取りを耳にしていた。
主に近づいてきた二学期への期待とか不安の話がどうも多いようだ。夏の終わりも近いし、そりゃあ気になるよねー。
「文化祭にしろ体育祭にしろ、うちのクラスは関口くんグループに任せとけばとりあえず成功は確定してるから楽でいいよなあ」
「文化祭何やるのかなあ。演劇、喫茶店、あとお化け屋敷とか? ……面倒な準備がいらないものだと良いんだけど」
「探査者が二人もいるんだし演劇とかいいんじゃないか? ほら、演舞的な感じで山形と関口にこう、いい感じにぶつかってもらうとか」
「えぇ……?」
二学期半ばにある文化祭やら体育祭。もっぱら話の中心はそこになってるんだけど……何やら片岡くんが怪しいことを言い出した。
演劇で俺と関口くんがいい感じにぶつかるって、模擬戦でもしろってこと? たしかに超人的な能力を持つ探査者同士のバトル──もちろん擬似的なね? ──は見応えあるんだろうけど、ちょっといろいろ問題と言うか、ハードルが多いよ。
みんなが俺を見てくる。その視線にはどうも期待の光が差してある気がしてならない。
なんか、否定的な意見を言うのもちょっと気まずいけど……俺はそれても意を決して、ちょっと難しいかもとみんなに告げた。
「いくつかの難点があるから、そういうのはたぶんできないと思うよ」
「難点……いくつか? 探査者同士のバトルは法律的に厳禁ってやつ?」
「もちろんそれもある、というか筆頭だね。事前に許可を取ればいけるかもだけど、たぶん許可は下りないと思うし」
「えー、なんか理由とかつけたらできないかなあ? 見たいよ私、生シャイニング山形と生関口くんの白熱生バトルー」
生ってなんですか怖ぁ……案外ミーハーっぽいことを仰る遠野さんに苦笑いする。
気持ちは分かるけどね、おそらくは絶対に許可なんて下りないと思うんだよ俺。
別に嫌がらせとか、面倒だからとかでこんなことを言ってるわけじゃない。法律的にもそうだけど何より、学校側から見ても俺と関口くんが模擬戦なんてのは絶対に認められない行為だと容易に想像できる。
慎重に言葉を選びつつ、俺はいくつがある理由を挙げ連ねていった。
「そもそもの話、探査者同士でのバトルなんて演劇で披露するには危険すぎるんだ。たぶん体育館とかでやるんだろうけど、ちょっと匙加減を間違えたら大惨事が起こるだろうし」
「あ……そっか、山形はたしかビームとか撃つもんな。誤射したら体育館ごと塵も残らないとかあり得るか」
「いや、さすがにそこまでは……と、ともかくまずはそこ。関口くんだって大技を持ってるだろうし、たとえば良いところを見せようとかって思ってお互いぶっ放した結果、観客に飛び火なんてしたら学校の責任問題じゃ済まなくなる」
山形くんビームは威力調節可能だから、仮に演劇とか模擬戦で使うとしてもまったく無害なものを放てたりはするんだけど……
今の論点はそこじゃなく、そもそも一般人に害が及びかねないところで妄りに攻撃系スキルを使うんじゃないよってところだ。
俺はもちろん関口くんだって、こないだ見た勇者剣だのチョコさんに仕込んでたブレイブブレイバーだの、技のレパートリーは割と豊富みたいだからね。
となれば範囲攻撃や必殺狙いの大技だっていくつか用意していてもなんらおかしくない。真面目に探査に取り組むようになってからの関口くんはオペレータとしての才能を開花させて、今や破竹の勢いで実力を伸ばしているみたいだし。
そんな2人が狭い体育館でぶつかり稽古なんて、どう考えても危険極まる。学校や生徒達の安全を考えれば、模擬戦なんてのは、もっての外だって判断されるのは火を見るよりも明らかだ。
加えて別の理由もある。俺はさらに話を続けた。
「あと、探査者の存在そのものがズルみたいなものだからね。各クラスの演目は最後には順位付けされるんでしょ?」
「ああ。さやかちゃん先生に聞いたけど、文化祭と体育祭のどっちもクラス対抗みたいな側面があるって……あ、そっかお前らチートすぎるか」
「山形くんと関口くんのバトルなんて、みんな見たがるよね……」
そう。今のところ東クォーツ高校に二人しか存在してない探査者が二人とも集う一年13組は、それだけで他にない極端な武器を手にしていると言えるんだ。
自分で言うのもなんだけどいろいろ、良くも悪くも話題になっちゃってる俺と、泣く子も惚れるスーパーイケメンにして探査者というリア充を超えたリア充たる関口くん。
比重で言えば圧倒的に後者に偏ってるんだろうけど、もうこの時点で注目度が高いんだ。
そんな2人が表に出て何かするだけで、即座にクラス間の平等な競争なんてのは無に帰すだろう。有名な探査者ってのはそのくらい、インチキなんだ。
「そこは関口くんも十分に理解していると思うから、文化祭にしろ体育祭にしろ、俺と彼だけは何があろうと一切表に出ない裏方作業に徹することになると思うかなぁ」
「そっか……んー、ちょっと残念だけど仕方ないよね」
「探査者がいる学校ってだけでも珍しいのに、しかも同じクラスに二人だもんな。今さらだけどすげーレアじゃね俺等のクラス」
「本当に今さらじゃーん」
そのへんの説明を受け、納得してくれたみんな。
法律的にも学校的にも、何より誰もが楽しんで競い合うべき催事的にも……俺と関口くんが出しゃばって、まるで主役かのように振る舞うことはあってはならないんだ。
俺は微笑み、そう締めくくった。
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