この際救世主扱いはもう仕方ないけど、魔法少年は断固として拒否したい山形くん(15)
フードファイター遠野さんへとパーフェクトなコミュニケーションを取ってくれた片岡くんにニッコリしつつも、さておき食事は行き渡ったのだからいよいよ実食だ。
思い思いにみんなが食べ始める中、俺も購入したラーメンちゃんをいただくことにする。手と手を合わせていただきますして、お箸とレンゲを手に取りさあ、食べようか!
「まずはスープから、と」
ラーメンはスープから味わう派の俺ちゃん、透き通ったスープをレンゲで掬い、一口啜る。
瞬間、口の中、舌の上で広がる味わい。醤油と鶏ガラのスープの塩気、旨味が伴いつつもあっさりしていて喉越しもいいという、なんとも複雑な風味がまるで解けるように俺の味覚に浸透していく。
あー、美味い。
ラーメンのスープっていろんな食材や調味料を様々な加工、いろんな手間を加えて濃縮して生み出してるから、とても複雑で繊細な味がしてなんか好きだ。
奥行きがあって、いろんな要素が見え隠れする瞬間があるっていうのかな。それを舌で味わい、味覚を少しずつ紐解いていく感覚は楽しさすら覚えるよ。
『いやに語るね……僕も同感だけれども! いやこれは素晴らしい、本当に大したもんだ! このスープ一つとってもこの世界のこの国の食文化がどれだけ異常なこだわりを持っているかが分かるような気さえするよ! ああ、なんて素敵な味わい!』
脳内のアルマにさえ言われるほどに拘りを見せた形になるけど、本当にそう思えるくらいにラーメンのスープには不思議な魅力があるように思う。
もちろん、他のどんな料理にも負けないくらいの素敵な味わいがあるんだけどね。今はとにかく眼の前のラーメンに集中している感じだよ。
周囲を伺うと、松田くんや木下さん達もそれぞれの料理を口に運んでいる。みんな美味しそうに頬張っていて、なんだか楽しくなってくる。
みんなで過ごす食事時の、ある種の醍醐味だね。美味しいものを同じ空間で一緒に食べるということそのものに、大きな価値があるようにすら思えるよ。
「そういやさあ、山形」
「うん? どうかした、松田くん」
と、ふとカレーを口に運んでよく咀嚼し、飲み込んでからの松田くんが声をかけてきた。
なんじゃらほい? とは俺だけでなく他のみんなも思って顔を上げる。彼はそうした視線をも見回しつつ、最後にはやはり俺に視線を向けていた。
俺の視線に、彼はそのまま続けて言う。
「お前もうすぐまた首都行くんだって? 救世の光チャンネルで伝道師さんがハープ弾きながらアレコレ言ってたけど」
「あっ、たぶんその配信見たよ私も。御堂さん、いつもより2段階くらいテンション高かったよね」
「高かった高かった! あんな高かったのっていつぶりだ? 夏休み入ってすぐ、山形が魔法少年デビューしたって話で尊さにむせび泣いてた回以来かな」
「えぇ……? いやていうかちょっと待って魔法少年デビューなんてしてないよ!?」
怖ぁ……ここに来てまさかの狂信者チャンネルの話題ですか。しかも伝道師さん、割といろいろ話してるみたいだし。
俺が首都に行くって話は、おそらく香苗さんがご自身のS級探査者認定式絡みの話をされた時に勢い任せで話したとかそんなところだろう。
そこについては別に、話すことでもないけど隠すことでもないとは思うからどうでもいいんだけど……魔法少年デビューなどという不穏極まりない話はなんだ。
魔法なんてスキルとしても持ってないんですけど? という心地で、でも内心ではたぶんアレのことだろうなあ、と思いつつも仔細を尋ねれば、案の定な答えを木下さんが答えてくれた。
「ほら、終業式の日。昼間、山形くんが仕事帰りのタイミングで出くわしたじゃん、バーガー屋の前で」
「あん時に山形、なんかめちゃくちゃ青くて目立つコート着込んでたよな。あれについての話を、そこから数日して御堂さん、動画でしてたんだよ。ものすごいマシンガントークだったなあ」
「やっぱり……」
ほら見ろ、やっぱりアレ──神魔終焉結界についての話だったよ! 案の定語ってたんだな、伝道師様!
今ここにはいない香苗さんを想う。マシンガントークってつまりは句読点飛ばしてたんですね? 怖ぁ……
さらに言えばここにいる面子、2回くらい神魔終焉結界を着た俺を見てるんだもんなあ。
はっきりと中2デザインなコートを夏でも装着している俺ははっきり言って変人だろうけど、にしたって魔法少年扱いってのは明らかに香苗さんの伝道の影響を受けている気がしてならない。
ついに俺の友人の中にまで、なんかよく分からない謎の教えが及びつつある。
そのことに心胆が寒くなる心地を覚えつつも、俺はやんわりと彼らに言った。
「ええと、まず首都には行くよ。さっき言ってた忙しいってやつの絡みで、25日くらいから二学期が始まるまでは大体向こうにいるね」
「そうなの? 公平くん……お疲れ様です、本当に」
「いやいや……まあ、そんなわけで今くらいしか俺の夏休みは残ってなくてさ、だから自由研究も終わらせたかったんだ。あと魔法少年云々は完全にデタラメだからそこんところよろしくね」
こちらを労ってくれる梨沙さんにほんわかしつつも、一息にこちらの今後、白目剥きそうな夏休み計画についてと魔法少年に関してはデマだよと念を押しておく。
さすがに魔法少年って歳でもない気がするし、そういう意味でもここだけは絶対に譲れない。ただでさえコスプレ感漂ってるからね、イメージを回復できる機会は見逃してはならないのだ!
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