夏休み中、一番進展したのは間違いなく救世の光の勢力拡大ですね(白目)
商業施設内に入って少し歩いたところにある、エスカレーターを登って上階に移動して。そこからさらに少し歩くと、フードコートが見えてくる。
夏休み、それも昼時とあって結構な賑わいだ……とはいえ席に座ることさえままならないってほどでもない。いくつかソファ席が空いてるのを確認したので、俺達は一旦そこに向かった。
「ふぃー! やっと落ち着くぜぇ!」
「図書館でも涼しい中で座ってたけど、なんか緊張感はあったからねえ」
「そもそも夏休みの宿題のための時間だったしな。それに比べてやっぱり、今こうしてるほうが解放感ってのはあるよな」
3人ずつ向かい合って座るタイプのソファ席。松田くんに俺、片岡くんの男子トリオが横並んで座る。そして向かいは木下さんに梨沙さん、遠野さんだ。
ソファに軽く背をもたれかけ、息を吐く。さすがにちょっと、ホッとする感じはあるなあと俺は背筋を伸ばしてリラックスした。
なんていうか一段落ついた心地だ。今日やるべきことの大半を終えたわけだし、後はご飯食べて遊んで、それから家に帰って自由研究の総仕上げをしたらおしまいだもの。
少なくともあと数時間はみんなと遊べる。今月25日に首都圏で行われるS級探査者認定式が行われ、そこからまーた変な連中の相手をしなければならない関係上、俺の夏休みは下手すると実質的にあと5日とか6日とかそんなもんだ。8月19日だからね、今。
そう考えるとなんかこう、やるせなさがちょっぴり込み上げてきた。フードコートの窓から見える外、未だ夏真っ盛りの風景を見る。
まだまだ夏なのはもちろんだけど盆だってもう終わった。朝方なんかはふとした拍子に秋を感じる──風に交じる匂いとか、ちょっとした気温の変化とか──ことも増えてきた。
つまりは夏の終わりもなんだかんだ、見えてきている気がするわけで。
知覚すると何やらしんみりするものがあり、俺はついついつぶやいてしまうのだ。
「あぁ、夏が終わってく……いやまだ全然暑いし9月になってもしばらく暑いけど、夏休みが終わる……」
「おい急にどうしたよ……止めろよ、俺らの夏はあと10日くらいあるはずだろ、山形……」
「それがいろいろあって俺、25日からは実質的にお仕事漬けなのでして。そろそろ8月も下旬で、どことなく秋の予感も見えてきたからそのへんも併せてなんか、切なさがね」
「マジ? 山形くん、探査者ってそんな忙しいもんなの? 仕事漬けって」
急にアンニュイさを醸してきた俺に、ドン引きしながら松田くんや遠野さんが反応してくる。
もちろん詳細は話さないまでも、別に隠すことでもないので俺の夏休みはみんなより一足二足早く終わりそうなのーと説明すると、みんな揃って唖然として俺を凝視してきた。
いくらなんでもハードスケジュールすぎん? みたいな感じで遠野さんからの質問も飛ぶけど、これについては正直俺もいやちょっと待てやと思わなくもないから苦笑いするしかない。
なにしろ実質、俺の夏休みは7月いっぱいで終わってたようなもんだからねコレ。
邪悪なる思念を倒して大ダンジョン時代も終わって、これでなんの憂いもないなーってスッキリした気持ちで遊んでいられたのは7月最終日あたりの夏祭りまでだ。
あの日、青樹さんに半ば誘き出される形で接触して勃発した倶楽部騒動、第八次モンスターハザード。アレの解決に半月かけて今に至り、しかしてそこから10日後くらいには首都圏でサークルだの過激派だのを相手にしなくちゃいけない。
学生としてはともかく探査者としてはなかなかハードな日程と言わざるを得ないのは間違いないよ。
「なんかね、お仕事のほうからやってくるというか……夏くらい勘弁してくれって思いはあるけど、まあ仕方ないしね。というわけで25日までくらいしかオフの日はなさそうなんだ」
「忙しいんだな……お疲れさん。ていうかそうだよな、こないだも全国デビューしてたもんなあ」
「ネットでもウワサになってるよ。チェーホワ統括理事さんとかフランソワ特別理事さんが、シャイニング山形の関係者を何十人も集めて集会を開いたとかって」
「……えっ?」
あんまり詳しい話にならず、そして愚痴っぽくならないようにふわふわした話でお茶を濁しつつ、割と本気で渋い顔を浮かべると、木下さんが何やら気になる噂を教えてくれた。
ソフィアさんとマリーさんが、俺の関係者を何十人も集めてどこかで集会を開いた、という話──心当たりがある。というか十中八九アレしかない。
そう、偽りの神の器を倒すために大勢の探査者を一箇所に集めて協力していただいた、アレだね。さすがに50人くらい空地に集結したわけだし、人の口に戸は立てられぬってことにはなるよなあ。
青樹さんや火野戦での全国デビューといい、シャイニング山形の怪しげな集会といい、妙に変な目立ち方をしちゃったもんだよ。
「ネットで見かける意見の中には、また救世の光の仕業かぁ……とか、御堂さんってチェーホワさんとかフランソワさんとも付き合いあるし伝道かなあとか、いろいろ言われてるね」
「えぇ……?」
怖ぁ……ある意味、香苗さんへの信頼が厚い。
またとか言われてる時点で救世の光か、はたまた伝道かの二択しかないの地味にとんでもないな。
そもそもクラスメイトの口から伝道という単語を聞く日が来るなんて思ってもなかったところさえあるから、なんだかこう、反応に困るところはあるよ。
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