フードファイターの胃袋がアップを始めました
水分も補給したし、あと数分でバスも来るので俺達は一気にバス停へと進んだ。
来た道を戻る行程、東クォーツ高校を横切って行く。来た時同様正門からは先生方の車が見えるから、やはりお仕事中なのだろう。頭が下がる話だよ。
「お、バスが向こうから来たぞ。間に合った、間に合った」
「これでバスに乗り遅れてたら、それこそ山形に担いで行ってもらうのが一番ってことになりかねなかったな」
「シャイニングタクシー山形くんだねー」
「レスキューだったりタクシーだったり忙しないなあ」
「えぇ……?」
怖ぁ……次々にトランスフォームするじゃんシャイニング山形さん。いや別に、この暑さはもはや普通に危険だし担いで連れて行ってくれと言われればしなくもないんだけども。
とにかくバスには間に合ったのでそんな心配ももう、必要ないんだけどね。バス停に辿り着くと同時にちょうどよく停車し、ドアを開けたバスに乗車する。
車内は何人かおじいさんおばあさんがいるに留まり、概ねすっからかんの様相だ。
東クォーツ高校のすぐ近くには医大病院があり、ルート上下りのバスは先にそちらを巡回するためそちらからの帰りだろう。冷房のよく効いている中で心地よさそうに後部座席に座っていらっしゃる。
俺達はまあすぐ降りるというのもあり前のほうの座席に座ることにした。外の暑さから一転、極楽のような涼しさが心地良い。
図書館同様公共の場だ、迷惑にならないように小声で話しつつも俺達は席についた。車に対して横向きのソファシートに片岡くん、俺、松田くんが並び、梨沙さん、木下さん、遠野さんは一人用シートにそれぞれ腰掛けた。
はふぅ……と、人心地つけたみんなが息を吐く。
「天国だぁ〜……涼しー」
「暑くて溶けるかと思ったよ、助かったぁ」
「これであとはひたすら涼しい場所だね。夕方くらいになったら気温も落ち着くかなあ」
案の定、相当な暑さにグロッキー気味だったみんながボソボソと言い合う。ひとまずはこれで暑さからは逃れられるのには違いないから、すっかり気が抜けてるね。
走り出すバス。10分もかけずにショッピングモール前のバス停に止まるだろうから、そこで降りたらすぐに店内に入ることになるだろう。遠野さんが夕方頃には暑さも落ち着いているかと希望的観測を抱いているけど、正直ちょっと微妙なんだよなぁと内心で答える。
最近は大体14時から暑さのピークって感じで、なんなら16時頃が一日で一番気温の高い時間でした、なんて話も聞かなくもない。
それを考えると帰る頃がむしろ一番ヤバいタイミングなのかもだけど……まあその頃にはいろいろ遊んだり食べたりして体力気力も回復してるだろうし。帰路につく分には問題ないだろうねたぶん。
ま、水分補給はしすぎってくらいするように都度促していこうか。この季節、本当に思ってる以上に体の水分は抜けていくからね。熱中症対策はしっかり万全に、だよ。
「ショッピングモールついたらとりあえずメシだな、メシ」
「どこで食べようか。たしか一階は普通に入って食べる店が並んでるし、二階にはフードコートがあるし。みんなで気ままに行くならフードコートかな」
「じゃね? 店内に入るとなんとなく堅苦しいしな」
「いろんなお店の食べ物にも挑戦できるしね。えへへ、お腹空いてきたー」
松田くんと片岡くんが、そろそろ近づいてきたお昼に向けて何をどこで食べるか考えている。お店に入って食べるのか、フードコートで食べるのかだね。
お店に入るのはちょっと堅苦しい、みたいな松田くんの意見は頷けなくもない。なんかこう、ムードに合わせてキッチリしたくなるんだよなあ。
どこであれ公序良俗は弁えて、礼儀正しくマナーよく振る舞うのは当然なんだけど、フードコートに比べても格段に礼儀作法を意識しなきゃいけない気持ちになるってのはたしかだ。そう考えると、ある程度気安さのあるフードコートのほうが学生のノリには合っているかもしれない。
何よりフードコートだと、一店に限らずいろんなお店のいろんな食べ物を買って味わうことができる。食いしん坊盛りの俺達からすればそれは魅力的だ。
魅力的なんだけど……そんな主張をしたのが我らがフードファイター・遠野さんなもんだから、他の女性陣二人はギョッとして彼女をガン見していた。
マジで? みたいな顔をしつつも、より小声で彼女に話しかける。
「真知子あんた、こないだみたく度を越えて食べるつもり?」
「片岡くんの前だけど大丈夫? 全店制覇とかする気なら、さすがに引かれたりしないかなぁ?」
「ウッ……いや、ええとー。お、お腹空いてるからさぁ、ぁはは……」
怖ぁ……するつもりなのかよ、全店制覇。いくつ店があるのか知らんけど、ナチュラルにはしごする気満々じゃないですか。
図星を突かれたように呻き、そっぽを向いて誤魔化し笑いを浮かべる遠野さん。梨沙さんも木下さんも、苦虫を噛み潰したような顔をして彼女をじーっと見つめるばかりだ。
そんな女性陣を不思議そうに見つつも、当の片岡くんはあっけらかんと俺と松田くんに言った。
「大分くたびれて、腹も空いてるしな。なんならいくつかの店をはしごとかできるかも。山形に松田はどうだ?」
「んー? 俺はどうかなあ、なんだかんだ普通に食って普通に満腹になりそう。山形は元から結構食うだろ」
「あーと、まあね。一応普段から身体を動かしてるから、食べなきゃ力付かないし」
遠野さんほどじゃないけど俺達も腹は空いているんだ、全店制覇などという狂気の沙汰には及ばずとも、いくつか店をはしごすることはできるかもしれない。
そんな話を男性陣のほうでもすると、露骨に遠野さんの顔色が明るくなった。
いや、うん……
それはそれとして全店制覇するつもりならそれはすごいと思うよ、いろんな意味で。
ある意味、この昼は彼女の挙動が一番気になるかも知れない。そんなことを思う俺ちゃんだった。
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