オカルトマニアもビックリな大ダンジョン時代の裏側
意外にアグレッシブだった片岡くんや、なんか気を遣ってもらっちゃった? 感のある広瀬さんについてはさておくにして、今は自由研究の資料探しだ。
俺の分はサクッと一冊で片付けられる量なんだけど、片岡くんの場合はそれなりな数の書籍を参考資料としたいらしかった。結局かごにもう一冊本を入れて、こんなもんかと彼がつぶやく。
「町中、山付近、川沿い、湖岸といろんな場所でのダンジョンを撮ったからな。それぞれ入り口の形や周囲の状態から細かく分類できるから、一枚一枚写真を貼り付けてそれを解説していく形になる」
「なるほど。その解説のために資料がたくさん必要なんだね」
「どの分野にも専門家ってのはいるからなあ」
自由席に3人座りつつ、周囲の迷惑にならないよう小声で話す片岡くんに耳を傾ける。
さすがフィールドワークまでしただけのことはあり、かなり気合を入れて自由研究を練り上げるみたいだ。撮影した写真をスマホで見せてもらうと、たしかにいろんな場所にあるダンジョンの画像をいくつも確認できた。
いろんなダンジョンの入口を、その周辺に至るまで細かく様々な角度から撮影できているね。正直かなりマニアックな画像群なんだけど、研究対象とするにはなかなか興味深いと思う。
梨沙さんの二人でスマホを覗き込み、ふえーっと感心する中、片岡くんは肩をすくめて軽く笑った。
「本当ならダンジョンの発生条件とか、地形情報の読み込みだったか? についての詳細とかも調べようと思ってたんだけどな。あのへんについては未だに解明できてない部分が多すぎるみたいで、主に取り扱ってるのがオカルト雑誌ってレベルだから断念したよ」
「あー……」
「そんなに解明されてないんだ。ダンジョン発生のメカニズムとかも。マジでミステリーなんだね」
ダンジョンの発生条件とか、地形情報の読み込み条件ときたか……そりゃ未解明なのも頷ける。
現世において手に入れられる情報だけでは、絶対に正答には辿り着けないだろうものな。
まあ言っちゃうとそのへんの基準は常にシステム領域、つまりはワールドプロセッサやダンジョン生成担当の精霊知能達によるものだ。
発生させる地点の環境や状態などを予め設定して、これこれこういう条件下ならばダンジョンが生成される。なんならさらに追加で条件を満たしたならば、周辺の地形情報の読み取りさえも行うと。
そういう風に運用しているわけだね。
ちなみに生成そのものはスクリプトを構築したオートプログラムによるもので、担当する精霊知能達が日夜、条件付の確認や変更あるいはバグがあるダンジョンの修正などを行ってくれているはずだ。
当然ながらそのへんの事情が現世に明るみになる予定はこれまでもこれからも一切ないから、現世の学者さん達にはある程度のところまで推測はできるけど……そのものズバリな答えには至らないだろうというのが俺の見立てだ。
大体まさか、システム領域なんてものがあるなんて思いも寄らないだろうからね。
一体どこのファンタジー小説ですか? ってなる話だし、事実は小説より奇なりとはよく言うもんだよなあ。
「そんなわけで俺は大人しく、ダンジョンの入口についてだけ詳しく調べていこうと思うよ。山形は?」
「俺? まあ、俺はコレ読んで、めぼしいスキルを見つけてそれについて考察をまとめていく感じ。統合スキルとか進化スキル、あるいは派生スキルについてをね」
「統合? 進化、派生? スキルってそういうのもあるんだ、公平くん」
片岡くんが自分で撮影した写真の解説、という方向性に絞ったところで今度は俺の話だ。
まあ、事典を確認していって確認されているスキルの中から統合、進化、派生したスキルをピックアップして、考察や推測って体で真実を書き連ねていくだけだから楽なもんだよ正直ね。
そこで梨沙さんからも質問が飛んできた。そもそもスキルにそんな、統合だの進化だのあるの? って率直な質問だ。
統合スキルで言えばたとえばサウダーデさんの《格闘術マスタリー》、進化スキルで言うとガムちゃんがいずれ至るだろう《忍術》の進化形《忍法》とか。
派生スキルはそれこそこないだ、アメさんに習得してもらった《武装化顕現》だね。
直接の名指しは避けつつも、まあいろいろあるんだよーってそのへんの話をすれば、梨沙さんと片岡くんは揃ってなるほどとうなずき納得してくれた。
俺は"全世界スキル一覧決定版"を指差して言う。
「見ていけばたぶん、その手のスキルが結構記載されてると思うからさ。それらを抜き出して、俺なりの見解を書こうかなって。あー、たとえばもしも俺ならどういう風に活用するか、とかさ」
「あ、そっか公平くんも探査者だから、仮に自分がそのスキルを得られたらって形で話を広げていけるんだ」
「そういうこと。新米ながら一応専門家と言えなくもないからさ。こういうやり方でもそれなりに、説得力は出てくれるかなって思ったんだ」
システム側としてでなくとも探査者なんだ、俺も。それぞれ気になるスキルに対して、現役の学生探査者の目から見てどう映るかってコメントするのもそれなりに値打ちがあるんじゃないかなって思う。
実際梨沙さんも片岡くんも興味津々だからね。
コマンドプロンプトとしてスキルを俯瞰的に解説しつつ、山形公平として主観的にコメントを付ける。
このやり方で俺は自由研究を取り纏めようと思うのだった。
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