百科事典ってなんだかんだワクワクするよね!
大ダンジョン時代科学、という大きな枠組みの中にあるいくつかの分野。その一つがスキル学だ。
言うに及ばずスキルについてのあらゆるものごとを研究、学問するその分野はさらに細かく分かれていくものの、今回の場合はそこまで突き詰めなくてもいい。
というのも早い話、スキル一覧を見ていけば俺の自由研究のテーマであるところの"統合、進化、あるいは成長した形跡のあるスキル"についてはあらかた分かるからね。
そもそも資料を閲覧すること自体、世に出回っているスキルがどれだけあり、予め持っている知識をどこまで引き出して書くべきか、の確認をするためのものでさえある。
こう言うと鼻持ちならない感じがして自分でも嫌なんだけど、コマンドプロンプトである以上システム関係についてはほぼすべて網羅してるからね、さすがに。
スキルのみならず称号とか、ステータスの仕様とかレベルシステムの仕組みとか経験値テーブルについてとか。
あるいはそれらさえ関係ないこの世界そのものの仕組みに至るまで、知ってないとおかしい立場なわけなのだ、今の俺は。
で。そのへん全部知ってしまっている以上、洗い浚い書くのは当然ながら論外なわけでして。
現世の学問の到達地点をある程度知りつつ、その範疇で子供の考察という体でさらりと答え合わせめいたものを記しておこうかなーと。そんなことを考えているわけである。
「いろいろあるね、本。どういうのが必要なのかな、公平くん」
「んー、まあざっくりとスキルの一覧、みたいなのがあれば。それもなるべく最新の資料に近いほうが良いかも」
「ってことは……このへんかな? スキル学の総論とか、そういう。魔導系? とか習熟系? とか、1ジャンルに限ってないんだよね?」
「そうだね。ざっくりまとめてスキルって括りでまとめてあるのが助かるよ」
梨沙さんと二人、このへんかな? こっちかな? と小声でやり取りしながら棚を見ていく。
スキル学の中にもスキルの種類、分類によって分野が分かれていて、それら一つ一つに膨大な数の本があるから求める分野を探すのも一手間だ。
《剣術》や《槍術》など戦闘技術の熟達に特化した分野とか。
《気配感知》とか《ステルス》、《光学迷彩》など隠蔽、サバイバルに特化した分野とか。
あるいは魔導系、魔法系においてもそれぞれ分野があり、ほぼそれぞれの本だけで棚が半分以上埋まるっていうんだ。
大ダンジョン時代以降の書物がいかに多く刊行されたかが分かるよ。
とはいえ今回求めているのはざっくりとした総論、概論に近い。言うなれば百科事典みたいなのがあればそれで良いのだ。
というわけでいくつか棚を見ていくと割とすぐ、それらしい本が纏まって並んであるところを見つけた。スキル学総合、と名札が仕込まれた棚だね。
第1発見者の梨沙さんが、俺の袖をくいと引っ張ってそこを指差す。
「あ、公平くん。あそことかそれっぽくないかな」
「ん……ああ、たしかに。スキル事典とかあるしビンゴっぽいね。さすが梨沙さん」
「えへへ。やった!」
俺の賞賛に頬を染め、嬉しそうに笑う彼女がとても可愛い。
うん……今気づいたけどこの状況、なんていうかアレね。あの伝説の図書館デートに近いよね。一応二人だし。
あらやだ照れくさい、なんか顔が熱くなってきた。
俺のフォローをしてくれた梨沙さんに、内心の照れとか噛み締めたくなる喜びを表に出さず、けれど笑いかける。
彼女がちょっぴり、いや結構距離を詰めてくるのをかなーりドギマギしながらも、俺は慌てることなく落ち着いて件の棚から本を見繕う。
事典系……スキル一覧とか、スキル大全とかそれらしいのがたくさん置いてある。ええと、中でも俺が欲しいのは、と。
「お、これとか良いな、新しめの百科事典」
「うわ、分厚い……それ今日中に読み込めそう? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。確認したいところはそう多くないから」
探しているとすぐにドンピシャでいい感じの事典を見つけたので、俺はそれを棚から引き抜いた。
"全世界スキル一覧決定版"というタイトルで、ロゴの上にはデカデカとWSO全面監修! とか書いてあるね。第一版発売日は3年前。まあまあ最近だな。
軽く中身を見てみると1ページに2つのスキルを紹介してあって、概要とざっくりした使用感、あと保持者のコメント等が記載されている。
事典というには砕けたノリで、しかして結構凝ったつくりだ。率直にカジュアルで読みやすい。
これ、良いな。WSO監修ってのが特に良い。国連最大規模の組織がどこまで噛んでるのかは知らんけど、この文言だけでも信憑性がある程度保たれてる気はするし。
これを読んでいって、現世に出回ってるスキルを確認していって、そして統合や進化などに絡んでるものを抜粋していってそれに対してコメントしていけばいいだろう。
よし、道筋見えてきた! これなら頑張れば今日中に目処が立つぞ!
勝利を確信して、俺は梨沙さんへと話しかけた。
「俺はこの一冊があれば十分だよ。片岡くんの手伝いに行こうか」
「うん、分かった。あっちはあっちで大変そうだしね、本を探すだけでも」
「3人でかかればあっという間だよ。梨沙さんも、いや梨沙先生もいてくれるしね。さすが図書館に詳しくて、すごく頼りになるよ」
「え、そう? えっへへ、それなら良かった!」
俺の分の資料はこれ一冊でも十分賄えるだろう。となると、次は片岡くんだ。こちらが予想以上に早く終わったから、まだ向こうは本を探してるかもだしね。
梨沙さんへの感謝と尊敬を口にして、はにかむ姿を尊さとともに拝みながらも……俺達は連れ立って片岡くんのいるだろう、ダンジョン学のコーナーへと向かった。
いよいよ明日、コミック1巻発売!
書き下ろしSSでは伝道師爆誕秘話なんかも描き下ろしちゃったりしてますので、ぜひともお求めいただいた際にはそちらもご覧いただければと思いますー
ブックマークと評価のほう、よろしくお願いしますー
【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ一巻の発売日が決定しましたー!
11月2日発売となりますー!
予約のほう開始されておりますので、ぜひともみなさまよろしくお願いしますー!
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