陽でも陰でも青春は青春!……まあそれはそれとして山形、お前はシャイニングになれ
出かけの準備も整ったことだし、となれば早速出発だ。
集合時間は9時半で今は7時半、全然余裕はあるものの、だからって油断してるとあっという間に過ぎてしまう程度の頃合いだからね。
リーベとシャーリヒッタもせっかくだからと同じタイミングで外出するようで、二人ともバッグを持って俺の後ろをとことこついてくる。
俺は駅、リーベ達はその先にある商店街に向かうわけだから途中までは一緒のルートだ。そんなわけで3人揃って、玄関前からリビングに向けて声を投げるのだった。
「よし、じゃあいってきまーす」
「行ってきますねー!」
「えーと、い、行ってきます! だぜ!」
俺とリーベは当たり前だが慣れたもんなんだけど、シャーリヒッタはこういう、いってきますの挨拶一つとっても初めての体験だ。
いかにもおっかなびっくり、これで良いのかな? と俺達を見比べながら真似っ子している。それを優しい気持ちで見守りながらも、俺達は外へ出たのだ。
空は快晴、風は緩やかに吹くもののそれさえ含めてやはり、暑い。
眩い太陽がギラギラと陽射しを大地に向けて、アスファルトは容赦なく焼かれて独特の香りを放っている。見慣れた夏の光景だけど、時折吹く風はどこか乾いた、秋の空気を少しばかり孕んでいるようにも思えるね。
もうじき、季節も変わっていくか。
歩きながら俺は、小さく見つけた移ろいを語る。
「なんだかんだ夏ももうすぐ終わるなあ……暑さはまだまだ続くけど、風が運んでくる匂いは少しずつ、秋らしさを帯びてくると思うよ」
「そういうものなんですねー? なんかこう、9月に入ったら急に涼しくなるイメージですけどー」
「暑さ寒さも彼岸まで、とは言うけどね。実際暦の上では8月上旬にはすでに秋なんだけど、気温そのものはそんな極端なもんじゃなくて緩やかに気温が下がっていくものなんだよ」
毎年のことなんだけど、盆やら夏休みやらを過ぎればはい夏終わり! ってわけでもなく、そこからようやく秋がちょっぴり見えてくるって程度だ。
そこからゆっくりと、10月くらいにまでかけて涼しくなっていってやっとこさ秋が訪れるってわけだね。
季節上、今はすでに残暑と言っていい頃合いではあるものの当然のように酷暑。なんだか不思議な話だよなあ。
シャーリヒッタより半年ほど先輩とはいえリーベも初体験が多いから、そういう話には妹ともども食いついてくる。
「日本の四季ってやつですねー。秋になると読書したくなったりスポーツしたくなったり、芸術に傾倒したり、旅行に行ったり、たくさん食べたくなったりするって聞きますー」
「現世の読み物は面白そうだなァ。受肉したこの肉体の性能テストがてらスポーツってのも悪くないし、ものを食べる感覚が素晴らしいのは言うまでもないぜ」
「夏の暑さが収まって、ヒトの身体も元気を取り戻していくからな。気候も涼しく過ごしやすくなるから、何かをするのに適した季節って意味でそういう言われ方をしてるんだと思うよ」
文化祭とか体育祭、修学旅行があるのも概ね秋だからね。まあ、受験とかの時期を考えると秋くらいにしか催せないからなんだろうけどさ。
思うに、二学期は学校のほうもいろいろ忙しくなりそうだ。ああいうのはリア充によるリア充のリア充のためのイベントなところがあるし、陰キャ山形くんは静かに友人達と過ごすことになるだろう。
派手に動かなくても、仲のいいクラスメイトと楽しめればそれを青春って呼んでもいいんじゃないでしょうか?
なんかこう、ラノベでよくあるドラマチックな展開とかやたら仰々しい催しとか異様に権限のある生徒会とか……ロマンはあるけど、そういうのでなくても一度きりの青春はどんな形でも素晴らしいものだと信じたいよ。
「…………などと言い訳して、盛大にはしゃぐだろう関口くんはじめクラスのトップカーストグループの人達からは距離を置きたい俺なんだけど、うまくいくと思う?」
「いかないと思いますー」
「どうあがいても一回二回はシャイニングすることになると思うぜー」
「えぇ……?」
雑談がてらそんなことをつらつら述べて、なるべく悪目立ちせず青春の美味しい──と俺が個人的に思っている──部分だけを味わえないかなーと尋ねてみたところ、二人からはにべもないお言葉が返ってきた。
リーベはともかくシャーリヒッタまで! シャイニングするってなんだよ、伝道するの亜種かな?
「ぶっちゃけ公平さん、めちゃくちゃ目立つ立ち位置にいますしー。暗闇じゃなくてもよく光るシャイニング山形くんとかたぶん、嫌でも表に引きずり出されると思いますよー」
「父様はいつもいつでもどこでも光り輝いてるぜ! 称号効果で光ればさらなるシャイニングだ! ひゅう、かっけー!!」
「怖ぁ……」
暗いと光る山形くんソフビ人形! とかですらなく暗くなくても光りだすのか……それはもはや単なる迷惑な人なのでは?
シャーリヒッタはシャーリヒッタでそのアバターの視覚大丈夫? って聞きたくなることを言うし。
比喩表現なのは分かるけどこの子、香苗さんや宥さんとは別ベクトルで過剰な物言いをするよなあ。
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