「おかえり!!」
サクッと空間転移で隣県からうちの県、懐かしいってわけでもない我が家の庭先への帰還。
俺、香苗さん、リーベ、シャーリヒッタ。マリーさんにエリスさんに葵さん、そしてソフィアさんの8人があっという間にそれぞれの拠点のすぐ近くまで戻ってきた形になる。すごい時短だね、毎度のことながら。
「ハッハッハー、公平さん絡みの話はいろいろすごいと常々思ってるけど、とりわけこの空間転移ってのはマジで破格だね。私も欲しいよこういうスキル、いつでもどこでも一瞬で移動なんてチートだよチート」
「山形くんの場合は戦闘衣装についてる機能みたいですけど、かわいいかわいいリーべちゃんはしっかりとステータスにも表示されてるスキルなんですよね? いいなー、ほしいなー」
「いやあ、ははは……」
エリスさんと葵さんがものすごく羨ましそうに俺とリーベを見ているけれど、気持ちは分かるだけに曖昧に笑うしかない。
空間転移系スキルがチートなのは間違いないからね。現役の能力者犯罪捜査官であるお二人としては、喉から手が出る程にほしいスキルなのは間違いない。
ただまあ、システム領域的にはこの手のスキルは基本、現世のオペレータに与えることはないってのが規則になっておりますので……
アドミニストレータじゃないけど管理者権限に近いタイプの、それこそシステム側の権能みたいなものだから諦めていただきたい。バグでも起こせば別かもだけど、今回倶楽部の件があった以上もうバグスキルは配布されることはなくなるだろうし、ね。
そう言うものの、やはり目の前で行われたインチキスキルの魅力は強いようで、特に葵さんはしきりに良いな良いなーとつぶやいている。
そんな折、苦笑いとともにマリーさんが師弟コンビへと話しかけるのだった。
「まあまあ、先輩に葵ちゃん。過ぎた力は身を滅ぼすってね、翠川みたいに悪用しないとも限らんわけだし、便利すぎる力を求めるのも考えものさね」
「ん……たしかにね? 倶楽部の連中がバグスキルを悪用したから話がややこしくなったりしたわけだし、そう考えると二の足は踏むべきだね、私達人間は」
「残念ですけど仕方ないですね……はっはっはー! じゃあ気分も切り替えて一歩一歩、大地を踏みしめて帰ることにしましょうか!」
今回、倶楽部の三幹部がバグスキルを用いて暴走したことをも踏まえての教訓めいた話。
さすがにマリーさんのお言葉には重みがあるなあ。これが長年探査者界隈のトップ層を走ってこられた長老の風格ってやつなのかもしれない。エリスさんも葵さんも理解を示して頷いてくださったしね。
そう、空間転移みたいな便利技でも、頼り切ったり悪用したらそれは身の破滅を招く。バランスよく、自分の足で歩くことも大切なんだ。
気を取り直してにこやかに笑う葵さんに頷いて、俺達は庭から出て家の正門前にまで出た。
俺とリーベとシャーリヒッタはここで家に戻り、香苗さんにエリスさん葵さん、マリーさんとソフィアさんはそれぞれのホームへと帰る。
楽しい宴も終わった、余韻もそこそこに俺はみなさんへと頭を下げた。
「それじゃあ、俺達は家に戻ります。夜も更けてますからみなさん、どうか気をつけて帰ってくださいね。今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました公平くん。そのうち青樹さんとの面会、一緒に行きましょうね」
「ええ、もちろん。あの人とは一度、ゆっくりと話してみたいですし」
香苗さんとお互い、顔を見合わせて頷く。
倶楽部幹部としての青樹さんの話は今日、ある程度聞かせてもらったけれど香苗さんの師匠としての青樹さんとはまだ話せてないからね。
本格的に彼女が起訴され裁判にかけられる前に、一度くらいは互いの想いを分かち合いたいとは思っているんだ。
その先にあるものがさらなる和解であれ、はたまた見解の相違であれ……きっと、何かしらの区切りにはなってくれると思う。お互いにね。
「私達のほうもありがとうね、公平さん! 今度会うのはもしかしたら首都圏に行く時かもだ。その時はまたよろしくね」
「はっはっはー! 向こうでもサークルだの過激派だのを千切っては投げ千切っては投げしてやりましょう! 今日はありがとうございました!」
「公平ちゃん、リーベちゃん、それにシャーリヒッタちゃんもゆっくり休みなよ? お疲れさん、ファファファ!」
「今日は表に出るつもりはなかったので、予想外の展開ですが……うふふ。こういうのもたまには良いですね。お疲れ様でした山形様、また後日ヴァールからも連絡を差し上げますのでよろしくお願いいたします」
残る仲間の皆さんも、それぞれに言葉を残しつつ去っていく。エリスさんの言う通り、もしかしたら次、このメンバーで再会するのは首都圏でのこととなるかもしれない。
つまりは一週間後くらいか。その間にやらなきゃいけないことが結構あるから、すぐに経ちそうだな。ああ、夏が終わる……と哀愁をそこはかとなく抱きつつも、俺は遠ざかっていく背中に大きく手を振った。
「お疲れ様でした! 皆さんお気をつけてー!」
「バイバイでーす!」
「またなみんな! 今日は楽しかったぜー!」
リーベにシャーリヒッタも手を振り別れを告げる。さあ、俺達は俺達で帰ろう。
家族にはもう、シャーリヒッタを連れて帰ることは連絡済みだ。さすがにドッキリめいたことにはならないだろうけど、何しろ家族が増えるんだから大騒ぎするだろうなあ。
今から父ちゃん母ちゃん優子ちゃんのドタバタが目に浮かぶよ。
「……あー、シャーリヒッタ。たぶんお前を見たらうちの家族、騒ぐと思うけど驚かずにな。間違いなく受け入れてくれてるから」
「ノリが楽しいお家ですから、楽しみにしててくださいよーシャーリヒッタ。あなたならきっとすぐに仲良く慣れますからー」
「おう! 俺も楽しみでしょうがねえぜ、現世での父様の生家……受肉したオレは、これから娘として山形家の一員になるんだ! 不束者ですがよろしくお願いいたします!」
「よ、よろしく……」
怖ぁ……完全に俺の娘として山形家に入ろうとしているよこの子。
姉だろうリーベが一応俺の幼馴染、もしくは妹その2くらいの立ち位置に収まってることを考えるとうちの家の相関図が大分ゴチャッとなってきてる気がする。
ま、我が家の人間はみんなシャーリヒッタを喜んで受入れるだろうから、直に慣れるだろうさ。
そう確信めいた期待とともに、俺はリーベとシャーリヒッタを伴い、我が家のドアを開けるのだった。
「ただいま!」
次話から新エピソードですー。久々に佐山(達)のターン!
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