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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
第二部後日談編

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逃げ上手?なヴァールちゃん

 先程の葵さんやヴァールの例を見るに、宴もたけなわとはまさにこのことだろう。つまりは盛り上がりもピークってことだ。

 時計を見れば20時前、かれこれすっかり3時間近くこの店で飲み食いしていることになる。コース料理も粗方出尽くしたし、進行的にはもうクライマックスも終えての後の祭りって雰囲気が漂うね。

 

「締めのアイスクリームまで出ましたからね。実際のところ、お開きにするにはちょうどいい頃合いでしょう」

「一部の酒呑みさんはまだ呑んでいますけど、勢いも落ち着いてますもんね」

 

 香苗さんと二人、周囲の状況を見ながら話し合う。全体的にもう、終了って感じの気怠さを孕んだ空気が流れているのは事実だ。

 俺ももう腹一杯だし、香苗さんも割と早い段階でお酒からソフトドリンクに切り替えている。1時間くらい前に飲みすぎて介抱されることとなった葵さんはエリスさんの膝枕で気持ちよくうたた寝してるし、同じく絡み酒モードに入っていたヴァールに至っては──

 

「おうヴァール、笑顔だ笑顔、ほら写真映り考えろって!」

「何顔を隠してるんですかー? "ワタシは絡み酒です"って言ってみてくださいよー!」

「止めろ、黙れ、ワタシを見るな……!!」

「あんな面白いモン披露しといて見ないわけにもいかねーだろ! ほら記念だ記念、水呑んで素面に戻って自分の痴態に気づいて誰にも合わせる顔がない妹よ、いいから笑顔でダブルピースしなァ!!」

「怖ぁ……」

 

 ──とまあ、水を呑んだことで正気を取り戻してからというもの、すっかり恥ずかしさからか机に突っ伏してしまっている。

 なんならその周りを姉二人がつきまとい、スマホのカメラで記念写真を取ろうと絡んでいる始末だ。むごい。

 

 俺としてはちょっと絡まれたくらいだし別に全然構わないし、リーベにしろシャーリヒッタにしろからかいメインで本気の揶揄をする感じでもないんだけど、いかんせん本人がめちゃくちゃ気にしちゃっている。

 酒の力で普段の固さが緩んだ結果、いろいろ表にしたくなかったものが出ちゃったんだろうか。なんとなく気持ちは分かるだけに、姉二人にもほどほどで止めといたげてよぉ! って言いたくなるよね。

 

「違う、違うのだ……! アレは、その、酒の勢いでつい……!!」

「いやまあ、さっきのは冗談にしてもよ、別にあれくらい良いんじゃねえの? 普段が自分を抑えつけ過ぎてんだから、そんな気にするこっちゃねえって。なあリーベ」

「そうですそうです、むしろ安心しましたってー。ヴァールもちゃんと、ストレス発散の方法自体は持ってるんだなーって! 公平さんオンリーに絡みに行ったのも、個人的にグッドですよー? 内心がなんだか垣間見えるようでー」

「うっ……そ、それは、その」


 あまりにも狼狽するヴァールに苦笑いして、シャーリヒッタとリーベがフォローを入れる。

 この子達的にも、妹分の普段のお固さというか、なんとなくだけどストレスを溜め込みやすそうな性質を把握して心配していたみたいだな。


 今回俺に絡んだってのも、なんとなくだがヴァールなりに理由があったみたいだし。

 リーベ曰くの内心……なんだろ? コマンドプロンプトたる俺なら愚痴れるとかそういう感じだろうか? 言われた途端、彼女の身体が一瞬震えたのは図星を突かれたっぽいからなんだろうけど。


 少しの沈黙。ややしてから、ヴァールは思いもかけぬことを口走った。


「うう、う……そ、ソフィア。後は任せた……!!」

「え?」

「は? おいヴァール?」

「────────あら? あれ、え? ここ、ええと、あらぁ?」

「えぇ…………?」

 

 逃げたぞあいつ! 表層人格をソフィアさんに入れ替えてこの場から逃げちゃった!

 これにはリーベやシャーリヒッタはおろか、見ていた俺や香苗さんも絶句している。エリスさんもドン引きしつつ成り行きを見てるね、葵さんの頭を撫でながら。


 ちなみに酒呑み師弟は相変わらず雑談しながら飲み食いしている。

 もうこっちは腹一杯なのに、まるで問題なく未だにあれこれ注文しつつ酒を飲んでるんだからこっちはこっちでヤバイよね。


 さておき今は突然、終わりがけの飲み会に放り込まれた哀れなソフィアさんだ。

 ヴァールとは肉体を共有しているものの、表層に出てない間は意識がないから状況なんてまるで把握してないんだろう。しきりに周囲を見回して、軽く首を傾げて戸惑いながらつぶやいている。

 

「飲食……居酒屋? ええと、今回の宴はヴァールに愉しんでもらおうと思っていて、出番はないかなと思っていたのですが……?」

「あいつマジかよ……いや、こっちがやりすぎたか。後で謝らねぇと」

「いやでもこの逃げ方はないと思いますよー? ……えーとソフィア、かくかくしかじかさけはのんでものまれるな────みたいな感じでして」


 やりすぎたと反省するシャーリヒッタに、それはそれとしてヴァールもヴァールだと呆れつつリーベがソフィアさんへと軽く状況を説明した。

 要するに自分の酒癖の悪さで居た堪れなくなった末にバトンタッチしたわけなんだが、それを把握するとソフィアさんってば、盛大にため息を吐きつつ苦笑いを浮かべるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、これはヴァールちゃんwヴァールでもなくヴァールさんでもなくヴァールちゃんww
[一言] ソフィアさんはお腹いっぱいで自分は飲み食いできないのにこの中に放り込まれたんか…(´・ω・`)
[一言] いたたまれなくなると精神的に戦略的撤退ができるヴァールはずるいと思いますぅ
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