肉体的には姉だろうが三姉妹的には妹なんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ
お刺身を醤油とわさびでいただく。鮮度も良く、脂の乗ったプリプリの鰤だ。おいしい!
ジュースばかりだと口の中がどうしても甘々になっちゃうからと合間合間に頼んでいるお茶がこの際、タイミングよく刺身の風味とマッチしてくれる。喉を潤しがてら口内をさっぱりさせたところ、脳内のアルマさんが次に食べたいものを指示してきた。
『次は串食べてよ、焼き鳥串。ねぎまとか良いね、塩もタレも両方いきなよ? 味のバリエーションがあるなら食べ比べるのが楽しいからね』
はいはい、と内心にて応えつつねぎまの塩とタレを一本ずつ手元に持ってくる。ねぎまは俺も好きだしね、喜んで食べちゃうよ。
まずは一口。こんがり焼けた鳥の香ばしさと柔らかさ、ネギの食感と甘辛さが実にマッチしている。塩はさっぱり目の味付けだし、タレはこってりした後味が良くていずれも美味しい。
焼き鳥串って地味に食べる機会が少ないけど、だからこそこういう珍しい機会でいただくと嬉しさもあって余計に美味しく感じるよね。
気に入って次々頬張っていると、隣の香苗さんが笑顔とともに俺に話しかけてきた。
「ふふっ……どうです公平くん? おそらくはこういった、酒の肴をメインに提供するタイプの飲食店は初めてかと思いますが」
「んぐんぐ……いやー、最高です! なんていうか、全体的に味が濃い目な感じが俺には合いますね」
「本来お酒と併せて食べることを想定しているものばかりですからね。あと5年して成人した時には、また違った味わいを楽しめるかと思いますよ」
「へー……楽しみです、なんだか」
『へー……楽しみだね、それは』
アルマともども声を揃えて反応する。なるほど、そりゃたしかにここは居酒屋、基本的にはお酒を飲みに来る人達向けの飲食店だ。
となれば食べ物のラインナップから味付けに至るまで、お酒に合わせたものになるのは当然至極。つまりは、これらの料理は酒と一緒に楽しむことでより、その味わいを引き出されるように設計されているってわけか。
実際、今この場にいる酒呑み連中は食べては呑んで食べては呑んでを繰り返している。どうもお酒を味わう合間に料理を食べて、それをもってさらに酒を呑んでいるみたいだしね。
まるで飲食の無限ループである。隣のシャーリヒッタが、お刺身をよく噛んで呑み込みながらも言った。
「酒かぁ……ぶっちゃけジュースだけでも全然美味いんだけど、そう聞くとなんだか興味湧いてきますね、父様!」
「今はまだ飲めない年齢だから、余計になあ。シャーリヒッタも社会的には未成年なんだろ? リーベ同様に」
「はい! 一応肉体的には16歳です! 父様より一歳年上ですね!」
「…………そ、そう」
『自分で何言ってんのか分かってないのかね、このド変態……』
にこやかにとんでもないことを言う自称娘に、俺はおろかアルマまでもがドン引き気味だ。こいつドン引きさせるって大分、よっぽどだよ?
父親より一歳年上の娘……うごごごご意味が分からん。いや事情的にはわかるんだけど客観的に見て特殊な趣味をお持ちの女の子なんですねとしかならないよ。
というか16歳設定なんだな、この子。リーベがたしか優子ちゃんと同じく14歳くらいの設定で受肉しているから、一応長女認定しているはずの子が年下になるのか。
ではヴァールは? とふと考える。受肉した精霊知能は年を取らないけど、元々設定している基礎年齢みたいなものがあるはずだ。
女性に年齢を尋ねるのもどうかと思うので聞けやしないけど、リーベ、シャーリヒッタと来たらヴァールも気になるのが人情ってもんだよなあ。
「…………ううむ」
「……山形公平。視線と耳に入ってきたやり取りから察するにワタシの肉体年齢を気にしているのか?」
「あ、ヴァール」
つい、ソフィアさんの生前、というか死亡年齢とヴァールが受肉した経緯を踏まえて考え込んでいると当の本人がこっちに来ていた。
手にはグラス、さっきウイスキーのロックを注文していたからそれだろうドリンクを手にしている。
シャーリヒッタを少し横にずらして合間に座り込んでくる。その都合、俺と密着する形になるのを──彼女はしかし、ゆるく笑ってもたれかかってきた。
近いよ!?
「お、おいヴァール? 大丈夫か、飲みすぎたか?」
「こんな程度ではほろ酔いが精々だ。だが、だからこそ高揚した、開放的な心地にもなれる……たまには良いだろう? ワタシとて、後釜やシャーリヒッタのように振る舞いたいこともある」
「そ、そうか? まあ、したいっていうならどうぞ、だけど……」
「ふふ……」
うわあ、いつもより甘えた感出してきていてかわいい!
ヴァール、お酒の力を借りて普段はできない甘え方をしてきている、のかな? この子もいろいろ抱えているんだし、上司にあたる俺やワールドプロセッサに本当は、もっと寄りかかりたい時とかもあるのかもなあ。
それでも軽く密着する程度なのが控えめというか、慎ましやかではあるんだけれど。
シャーリヒッタやリーベもどこか、優しい笑みを浮かべて彼女を見ている。
精霊知能三姉妹……って括っちゃって良いのかな? の中でも末っ子感漂うヴァールのたまの甘えを、二人の姉はねぎらいも込めて見守るばかりであった。
「…………ちなみにワタシの肉体年齢は20歳だ。ソフィアの意向によるもので、なんでも"23歳で死んだからそれより若い姿で生きていきたい。花盛りって良いわよね、ヴァール"とのことだ」
「えっ。あっ、そ、そうなんだ……」
「つまりワタシが一番年上なんだ。姉なんだ」
「そ、そう」
怖ぁ……いつも以上に姉アピールするじゃん。
そういう頑固なところもなんか、末っ子感漂うって言ったら怒られちゃいそうだ。黙っておこーっと。
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