2020/09/19(土) 雨のちくもり
休日初日、お昼過ぎ。
さてそろそろ何か食べようかと冷蔵庫を開けたところ、中はさみしく、食べられるものがない。いや厳密に言えばある。
先月母からもらった生米が、虫対策のため冷蔵庫の下段半分を占領している。
とは言え炊くのは面倒。そもそも洗い物が億劫で、皿とともに炊飯釜はシンクに放置したまま。
どうしたものか、観念して洗い物を片付けるか。そろそろなんだか臭ってきた気もするしと考えていたところ、昨晩からザァザァと降っていた雨がやんでいることに気がつく。
これは運がいい。洗い物など夜の自分か明日の自分にでも任せてしまおう。
成人になった今でも先延ばし癖が一向に治らない私は、徒歩5分ほどのコンビニに向かうべくズボンを履き替える程度の軽い身支度を済ます。
さて行くか、その前にトイレ。何を買おう、気になってたまぜそばにしようか、そろそろジャンクなものが食べたいなぁと好物に思いを馳せてながら用を足し終えると、目の端で何かが動いた。
嘘だ、まさか。
床に直置きした予備のトイレットペーパー、その後ろ。
長い触覚を持ち、ツヤツヤと黒光りする6本足の『ソレ』がいた。約3センチ。
叫び出しそうになるが、騒音等でのご近所トラブルにならないようグッと声を呑み込んだ。それくらいの正気は保てた。
何度見ても慣れない存在に涙目になりながらも、呼吸を整え静かに下着とズボンを引き上げる。
息を殺し、扉のノブに手を掛けるが決して奴から目は離さない。見ていたいものではないが、絶対に離してはいけない。逃がしてしまえば地獄の同居生活のスタートだ。
しかし『奴』に対抗できる殺虫剤は玄関にある。あぁ何故私はトイレにも置いておかなかったのかと後悔しながら扉のノブをカチャリと回し、ゆっくりゆっくりと扉を開けうぇえあああ奴が動いた動き早い来るな来るな来るな足元来た無理無理無理む
くちょり。
したくもないのに、全神経が足の裏に集中した。
私は今日も死にたくなった。