この世の中の理と君
ただの思いつきですが
頭の中にある物語はとても
深くいい感じのストーリーに仕上がってます
ちょくちょく上げていくので
ご愛好のほどよろしくお願いします
彼女が死んでから何年経っただろうか
もし…もしあの時に戻れたなら俺はきっと…
これはそんな1人の男の後悔と懺悔の物語
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今は20XX年
テクノロジーが発達してきて
少しずつ日常にロボットが顔を出し始めている
そんな時代の東京
日本のどこよりも進んだ都市
俺はその中でもロボット化の進んだ地域に
もう長く住んでいる
そんな場所に住んでいた俺の1日は
決まってアナログな音に起こされる所から始まる
ジリリリリリリ…という音
もう消えかけている電池を使って鳴らす音
この音は俺をアナログな世界から
唯一引き戻してくれる
リビングに出ると美味しそうな匂いがする
一昔前ならこういう場面を聞けば
「奥さんがいて羨ましいなぁ」
と言われたのだろう
しかし俺は残念ながら独身だ
この時代では簡単な料理もロボットが作る
「いただきます」
普通にうまくて普通に健康的だ
けれども…
「やっぱり、なんかなぁ…」
そう呟いてしまうほどには何かが足りなく感じる
「ごちそうさまでした」
応えてくれる人はいない
部屋を掃除するロボットの音だけが部屋に響く
顔を洗い、歯を磨き、服を着替える
自分までもロボットになったかのように
毎日毎日機械的に繰り返す
「行ってきます」
そうして、やはり応えはない
無意味なような言葉を告げて今日も家を出る
いつも通りの景色、この街の他とは違った景色
働いている姿の大半はもうロボットだ
タクシー運転手、ウェイトレス、
モニターに映るアナウンサー…
きっと建物の中ではプロが料理を作り
プロが読み上げる文を考えているのだろう
万能なロボットでも出来ない事はある
プロの行う仕事の代わりはきっと来ない
俺の仕事もその中の1つだろう
外科医としての俺は自分の代わりを
ロボットが出来るとは思っていない
だが俺の働くこの街の病院は
それを覆したいらしい
人の代わりにロボットが手術や治療をする
それがうちの病院だった
難易度の低いオペはほぼ全てロボットが執刀し
診察や難易度の高いオペを人が行なっている
いまだに医療ミスの類は無く
順風満帆な運営状況だ
ここで俺はロボットに出来ない手術をしている
ただロボットが手術可能な範囲が
日に日に広がっていき俺の仕事は減っていた
今日はそんな数少ない俺の患者の診察をする日だ
「おはよう久栗さん、気分はどうですか」
俺は出来るだけ優しく話しかける
「あ、先生!今日も快調ですよ」
そう笑顔を浮かべて返してくれるのは
久栗美沙さん…心臓に腫瘍を持つ
本当に難しいオペが必要な患者だ
彼女は半年前に入院が決まった
オペは約1ヶ月後
俺が執刀するのが決まっている
この半年間俺は毎日彼女と話をしている
初めは事務的な話をするだけだった
次第に雑談がその大半を占めるようになっていた
俺はこの時間を心地いいと感じている
これはロボットにはない感情
こうした行為が俺を人間にしてくれている
「今日は何を話しましょうか」
そう話す彼女は楽しそうで
まるで病気のことを知らないかのようで
けどそれは限りある時間を
ただ噛み締めているように見える
「そうですね…じゃあ今日は…」
それを分かっていながら
俺は目を逸らすように今日も話を始める
第一話いかがだったでしょうか
面白いと思っていただけたなら幸いです
拡散などしてもらえると作者が飛び跳ねて喜びます
ではまた失踪してなければ
第二話でお会いしましょう