第一段階の告白
「あれ、なんで皆さんこんなに集まってるんですか?」
遠巻きから見ても渋々来たという感じだったラフィーは、沢山の天使と相棒がいる異様な状況に興味を示していた。
頭をあちらこちらへ振って、現状を理解しようとしているようだ。だけど、ぼくとゼルがいることに気づいたらしく、目を合わせてきた。
そして、密かに息を吐いた様だった。
「どうかしたのかい?」
「いいえ。なんの用かなと思っただけです」
どこか刺々しく感じてしまう、ゼルとラフィーの会話。さっきの問い詰めのせいだろう。
「用件か。さっきの続きと言えばいいかな」
「結構です。これでもボクは忙しいんです。それにヒールだって怒るだろ?」
自分の相棒を見つめながら、彼はそう言う。でも、覚悟の決まらないラフィーに喝を入れる為に、ヒールを連れてきたのだ。
彼女自身も、なにかしらの責任を感じているようだ。
「私は別にいいわ。これはラフィーの仕事とは比べ物にならない、大問題だもの……ラフィー、腹くくりなさい」
「は、腹くくるって、何の事だよ……」
明らかに動揺している。気弱になったラフィーに、ヒールの鋭い眼光が刺さる。睨みつけているのだ。
「白々しいわよーラフィー」
「別に認めてもそうじゃなくても変わんねーだろ? 多分」
女子陣からの声が飛ぶ。ラフィーはもう、引くに引けないはずだ。
もう少し押す為にぼくは声を張った。
「ラフィー。本当のことを話して。誰かを死なせずに、生きながらえさせているの?」
「……」
俯いて服の裾を握っている。彼の全体は強張っている。
これで話してくれるのかどうか、なんだか不安になってきた。ゼルをちらりと見やり、「大丈夫かな」と目で伝える。
ゼルは軽く顎に手をやった後、その顎をグリウの方にひっそり向けた。「切り札」を出そうと言うのだろうか。
その時、不意にラフィーが口を開いた。
「……話す」
「ん?」
会話の隙をつかれたゼルが反応する。
「話しますよ。ボクが地上でしたこと。それが聞きたいんですよね」
「まあ、そうだね。話してくれるのかい?」
「はい。じゃないと、後ろめたくなるし。ずっとボクが口を開けるまで追いかけるんでしょう?」
皮肉っぽく言葉を吐いたラフィーに、なにも言えないまま独白を始めさせた。
「知ってる人も多いとは思いますが、ボクは地上に、人間の世界に大いに興味があります。だからゼルさんみたいに、いつでも地上に行って様子を見てみたかった。でもそれなりにボクはすることがあって。だから偶に地上に行くときは、その一回をとても大事にしていたんです。
そしてある時地上に来て、ボクはひとりの人間に興味を持った。病院で寝たきりになっている子供です。とても周りに愛されている子だったみたいで、ボクは救いたいと強く思ったんです。
でも……死ぬはずの理に逆らっちゃいけないことはわかってるんです。でも、少しは人間の役に立ちたくて。だからボクは、その子供が一分一秒でも生きていられるくらいの生命力を与えた……治癒をしたんです。
ボクがしたのは、それだけです。自分の力を操れない訳じゃありませんから、治癒の能力を死から救うほど使った、なんてことはありません。そもそも、子供がアークかもわかりませんし。
ボクは……理のことを忘れてなんていません。だから理に反してだっていないんです」
「関係ないっていうの?」
ゼル含めた、その場のほぼ全員が当惑していた。ラフィーがなにも関係ないだなんて。ぼくも頭の中がこんがらがった。
その時神だけが、余裕を持った真顔をしていた気がする。
お読みいただきありがとうございます。
予想外のラフィーの告白で、場が混乱しました。彼は本当に関連がないのか、次話を楽しみにしてください。




