表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/107

第一段階の告白

 「あれ、なんで皆さんこんなに集まってるんですか?」



 遠巻きから見ても渋々来たという感じだったラフィーは、沢山の天使と相棒がいる異様な状況に興味を示していた。



 頭をあちらこちらへ振って、現状を理解しようとしているようだ。だけど、ぼくとゼルがいることに気づいたらしく、目を合わせてきた。



 そして、密かに息を吐いた様だった。



「どうかしたのかい?」


「いいえ。なんの用かなと思っただけです」



 どこか刺々しく感じてしまう、ゼルとラフィーの会話。さっきの問い詰めのせいだろう。



「用件か。さっきの続きと言えばいいかな」


「結構です。これでもボクは忙しいんです。それにヒールだって怒るだろ?」



 自分の相棒を見つめながら、彼はそう言う。でも、覚悟の決まらないラフィーに喝を入れる為に、ヒールを連れてきたのだ。



 彼女自身も、なにかしらの責任を感じているようだ。



「私は別にいいわ。これはラフィーの仕事とは比べ物にならない、大問題だもの……ラフィー、腹くくりなさい」


「は、腹くくるって、何の事だよ……」



 明らかに動揺している。気弱になったラフィーに、ヒールの鋭い眼光が刺さる。睨みつけているのだ。



「白々しいわよーラフィー」


「別に認めてもそうじゃなくても変わんねーだろ? 多分」



 女子陣からの声が飛ぶ。ラフィーはもう、引くに引けないはずだ。



 もう少し押す為にぼくは声を張った。



「ラフィー。本当のことを話して。誰かを死なせずに、生きながらえさせているの?」


「……」



 俯いて服の裾を握っている。彼の全体は強張っている。



 これで話してくれるのかどうか、なんだか不安になってきた。ゼルをちらりと見やり、「大丈夫かな」と目で伝える。



 ゼルは軽く顎に手をやった後、その顎をグリウの方にひっそり向けた。「切り札」を出そうと言うのだろうか。



 その時、不意にラフィーが口を開いた。



「……話す」


「ん?」



 会話の隙をつかれたゼルが反応する。



「話しますよ。ボクが地上でしたこと。それが聞きたいんですよね」


「まあ、そうだね。話してくれるのかい?」


「はい。じゃないと、後ろめたくなるし。ずっとボクが口を開けるまで追いかけるんでしょう?」



 皮肉っぽく言葉を吐いたラフィーに、なにも言えないまま独白を始めさせた。



「知ってる人も多いとは思いますが、ボクは地上に、人間の世界に大いに興味があります。だからゼルさんみたいに、いつでも地上に行って様子を見てみたかった。でもそれなりにボクはすることがあって。だから偶に地上に行くときは、その一回をとても大事にしていたんです。

 そしてある時地上に来て、ボクはひとりの人間に興味を持った。病院で寝たきりになっている子供です。とても周りに愛されている子だったみたいで、ボクは救いたいと強く思ったんです。

 でも……死ぬはずの理に逆らっちゃいけないことはわかってるんです。でも、少しは人間の役に立ちたくて。だからボクは、その子供が一分一秒でも生きていられるくらいの生命力を与えた……治癒をしたんです。

 ボクがしたのは、それだけです。自分の力を操れない訳じゃありませんから、治癒の能力を死から救うほど使った、なんてことはありません。そもそも、子供がアークかもわかりませんし。

 ボクは……理のことを忘れてなんていません。だから理に反してだっていないんです」



「関係ないっていうの?」



 ゼル含めた、その場のほぼ全員が当惑していた。ラフィーがなにも関係ないだなんて。ぼくも頭の中がこんがらがった。



 その時神だけが、余裕を持った真顔をしていた気がする。

お読みいただきありがとうございます。

予想外のラフィーの告白で、場が混乱しました。彼は本当に関連がないのか、次話を楽しみにしてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ