ヒールの任務
「あー。やっと見つけた」
頭の中で思い描きながら探していた、後ろ姿を見つけて僕は安堵した。思わずため息が出る。
「えっ?」
「探してたんだよ、ヒール」
僕の声に反応したヒールが、すっと後ろを向いた。ルイズと分かれ1人で道を歩いていた彼女は、鋭い視線と引き締まった表情を見せた。
「ゼル……色々と動いてるのよね?」
「うん。アークと手分けしてね。僕はあらかた終わったと思うから、最後にヒールに会おうかなと」
「そう。なんかラフィーが迷惑かけちゃって、本当ごめんなさいね」
いやいや、と僕は手を振る。そんなことはありきたりだ。
こういうことを知ってお礼を言ったり謝ったりするのって、アークの仕事じゃないのかと思いながら。
「ああそう、ラフィーと言えばね」
脱線しかけた本題に入る為、僕は声を張りながら言う。
「ラフィーを吐かせるのに必要な人材は揃ったんだ。だから、後はそれらみんなが動いてくれれば。僕たちの理想が叶う……はず」
語尾が柔くなってしまったが、なるべく力強いように言った。彼を、ラフィーを真実の元に晒すことを意識しながら。
「私で最後って訳ね」
「うん」
その通りだ。様々な天使たちに様々な仕事を振り分け、そのトドメに神様から心を貫くような一言をもらう。そんな、最後の最後の役をヒールの背負ってもらっているし。
ヒールは得意げに微笑んだ。任せといて、と。
「彼が落ち込んでいたら慰めてあげればいいんでしょ? 長い間いた私だから、扱いはわかってるわ」
「うん。ラフィーのメンタルってそんなに強くない。頼んだよ。相棒さん」
僕がカッコつけたように言うと、ニカっと笑って、「任せなさいっ」と勢いよく言った。
ヒールの出番は本当に、文字通りの最後の最後なので多くはない。でも、恐らく傷ついてしまうであろうラフィーの心の傷を、若干でも緩和させる。
「で、出番の少ない私はどこに行けばいいのかしら?」
皮肉か、別にどうでもいいような口調で言う。
「そうだね……とりあえずアークと合流するかな」
RPGの仲間のように着いてくるようになったヒールを僕は連れる。彼女自身にそんなこと言ったら、とんでもない目で見られそうではあるが。
「僕についてきてくれるかな?」
「ええ。あの馬鹿の目を覚まさせてやりましょう」
「彼のこととなると勢いづくね」
「元は怠けるラフィーを改善する為送られたんだもの」
そっか、とか相槌を打つ。最初にアークと別れた、守護天使達の働き場へ僕は向かおうと考えた。
お読みいただきありがとうございます。
ヒールは計画に誘った内でも、協力的な方でしたね。全員の天使・相棒たちに誘いを終了させた今、どう動くのかお楽しみに。




