予想外の不安
「神様を信じるならって、どういうこと?」
思った通りリザレイは食いついてきた。そして「神様」という単語にこんなに反応したってことは、やっぱり未だに盲信しているんだな。
わかってたことだけど、なんかがっかりした。でもそれに気づかれないように、ぼくは話を進める。
「ま、最初から話すから、しばらく聴いててよ」
リザレイはやや不服そうに顔を歪めたが、また静かに席に座った。そして一旦落ち着くように、紅茶を数回口にすくった。
「ぼくたちは今……」と説明を始めながら、グリウの方にも視線をやる。ぼくとリザレイの間に入り込んでいいのかと、迷っている様子だったから、それを承諾するような視線を送った。
ぼくらがこれまでしてきたこと。神に用があるわけ。ふたりにものを頼みたい理由。
リザレイもグリウも、どちらも表情こそ変えないものの、ぼくの話に聞き入っているように思えた。
「……最期の方だけ簡潔に言うと、ラフィー説得と対話の為に、ふたりが必要なんだ。どっちも欠けちゃいけないからさ。祭壇に来てくれないかな」
自分で話し終わってから、左右にいる人と天使の顔を見比べた。
実のところ、ぼくが担当した中で、このふたりが一番の関門だと思っていた。グリウはこんな個人の為の活動に難色を示しそうだし、リザレイは神様の扱いに不満を感じて協力してくれなさそう。
そんな不安を心底で抱えてたみたいだけど、話終わってからどっとそれが溢れてきた。
しばらくぼくを含めた3人が、黙ったままでいた。けど、それは長い間続くことはなかった。
「……私は立場的には色々と考えるべきなのかもしれんが。実を言えば、リザレイに合わせようと思う」
「えっ?」
グリウからの予想外の発言に、リザレイはシンプルな反応を示した。
やや遠くから話を聞いていたグリウが、こっちに近づいてきた。
「アークの思惑は、今の話から大方読み取れる。私たちへの頼みが、どんな影響を及ぼすか考えてのことだろう」
「うん」も「いや」も言う前に遮られた。というか、大した反応もできなかった。
思っていたよりもリザレイの決断と判断が素早かったからだ。
「……祭壇に行って神様を説得すればいいのね。わかったわよ。やってあげるわ」
「え、え?」
ぼくは戸惑いのあまり、少しの間言葉が出なかった。その後も少し聞き返したが、ぼくの思考と彼女の思考にズレはないことがわかった。
「じゃあ本当に、祭壇で神様を説得してくれるんだね?」
ぼくもいつまでも一箇所に留まってるわけにはいかないので、家を出る準備をしながらまた聞く。
「するって。この前仲は直したでしょ」
「あれ、本当に納得してるの?」
「まぁまぁね」
「………」
なんとなくいたたまれなくなって、目線の逃げ場にグリウを借りた。
「祭壇の場所はわかるよね?」
「ええ。アークよりは長くここにいるもの」
結局大した確認も取れないまま家を出ることになってしまった。
「頼んだよ」
そう、小さく言い残すしかできなかった。
なんか今さっきのリザレイは、神様を盲信しているようなそうでもないような、丁度中間に属するような態度だった。
今回ばかりは、あのふたりの、リザレイの考えが全く読めなかった。
お読みいただきありがとうございます。
神様の話題をアークから拒絶していたリザレイですが、何故か今回はすんなり彼のお願いを聞き入れました。
どういうことなのか。後にわかるはずです。




