表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/107

リザレイとグリウの攻略

 「ふたり、揃ってるかな」



 リザレイとグリウを祭壇に呼ぶ為、ふたりもしくはどちらかが居そうな場所を、ぼくは探し飛び回っていた。



 とは言っても、ひとつ目星はつけてあった。少し考えた後に、ぼくはそこに一直線に行った。



「リザレイ。本当に納得してる感じじゃないんだよな」



 ふたりが居住地としている家のドアの前に、ぼくは静かに立った。そして心中で呟き心残しをほっといたまま、無鉄砲にノックを3回した。



 長くも短くもない間が空いた。ドアが開きそうな気配がしたので身を一歩引くと、目の前の直方体は予想通りの動きをした。



 ただし、直方体を動かした張本人は、頭の片隅で予想していた人物とは違った。



「どちら様……アーク?」


「あれ、資料室にいたんじゃ」



 出だしは丁寧にしていたグリウだけれど、相手がぼくだとわかった途端冷めた様子だった。熱烈に歓迎されても困るけれど。



 そしてぼくの発言により、彼の冷めた態度に拍車がかかる。



「永劫資料室にいることはないだろう。そういうことだ」


「そっか。ちょっと用があって訪ねたんだけど、リザレイもいるかな?」



 グリウの表情は眉ひとつ変わらなかったが、リザレイのことを口に出すと若干戸惑った。冷めた顔に少しの人間味が滲み出たようだ。



「……」



 彼はなにも答えず、僅かな時間背を見せた。室内の奥の奥に、顔を覗き込ませているようだ。



 そして再び正面を向いたグリウは、微妙に口角を変化させた後言った。



「ちょっと、中に入れ」


「う、うん」



 彼の顔のシワが僅かに動いたのはわかったのだが、それがなにを意味するものなのかはわからなかった。



「お邪魔します」



 無意識に緊張して、他人行儀な言葉遣いになる。誰にとってもそんな外面は重要視すべきことじゃないんだろうけど。



 緊張する要因のひとつに、背後に強張った風なグリウがいる、ということがある。圧をかけられているように感じてしまう。



 それに沿う訳じゃないけど、肩を固めて拳を握るだけじゃなく、奥に進んでみようと思った。そうしないと、グリウがぼくを家に入れようとした意味がわからない。



「あ……」



 勇気を出して奥へ一歩踏み出してみる。その先にあった景色は、求めていたんだけど尻込みしてしまう、そんなものだった。



「……本当に来たんだ。アーク」


「うん。来た。用があるから」



 目は合わせないで、気怠けにしたリザレイがそこにいた。話そうかどうか。話せるかどうか。迷うけれど、ここまで来てもう下がれない。



 後ろでドアの開閉音が鳴りかけた。だからグリウを言葉で制止して、ふたりともに聞かせるように言った。



「ぼくは2人に用があってきたんだ。ふたりとも、祭壇に来てくれないか」



 先に反応したのはグリウだ。質問をしてきた。



「それは、私が神のご意向を伝える役目と知ってのことか?」


「うん。ぼくらは、神様と対話がしたいと思ってる」


「対話?」



 物珍しい、まるで絶滅危惧種を見物するような眼差しで彼はこちらを見た。そんな馬鹿なこと、とんでもない! とでも言いたげな訴えの視線も投げかけてくる。



 特にぼくやリザレイが気にするようなことじゃない。体の向きが彼女向きになってしまうのは、仕方ないことだった。



「神を説得してほしいことがある。だからグリウが神を呼んでぼくやリザレイと会話できるようにして、リザレイがそこを説得する」


「……それ、私にどんなメリットがあるっていうの」



 冷静に突っ込まれた。それはその通りなのだ。こっちによっては得でしかないんだけど、あっちにとっちゃ訳がわからない。



 ……だからぼくは考えて、リザレイの心を上手く誘導することにした。



「リザレイ。神様を信じてるなら、大切に思ってるならできるはずなんだよ」


「……え?」



 彼女の心が揺らいだのがわかった。



 これは根気強く行けば押せる。わからないように、ぼくはひっそりと口角を上げた。

お読みいただきありがとうございます。

久しぶりの投稿だったので、やや短めかもです。今回はアークサイドで、次回リザレイを説得できるかどうかお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ