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守護天使監督・ラフィー

 「あ、ゼル様!」


「お疲れ様です」



 天使たちがたむろする場所に到着するなり、隣のゼルに向かって、そんな尊敬の意を込めた挨拶が飛んできた。



 彼らが会釈してきた為、ぼくは反射的にそれを返した。ゼルは慣れているようで、深々と一礼していた。



「いえいえ、僕なんて。そちらこそお疲れ様です」



 見るもの誰もを安心させるその笑顔をしたまま言う。



「ありがとうございます。それでは失礼……」



 いつもの表情を確認した天使たちは元の業務に戻ろうとしたが、鶴の一声と言われるような通る声で引き止めた。


「嗚呼、ちょっと待ってくれるかい?」


「え、あ、はい」


「君たち守護天使の監督さんを探しにきたんだけど、場所わかるかな?」



 ゼルに挨拶をしてきた大勢の天使たちに、恐らくリーダー核であろうひとりの天使が指示を出したようだった。



 次の瞬間には、ひとりを例外に天使たちが自分の仕事に帰っていった。



 残った天使はこう告げ飛んで行った。



「ラフィー様ですね。確か近辺で見かけた気がするので、探してきますね。しばらくお待ちください」



 守護天使たちの仕事場から少し離れた所に、ぼくとゼルのふたりは取り残された。周りが少し落ち着いて、なんとなく深呼吸をしてみた。



 すると、ゼルが話しかけてきた。



「緊張でもしてるのかい?」


「緊張っていうか……回りくどいことをして探してきた相手だからね。やっと手が届くんだって感じ」


「そうか。言葉が詰まらないようにだけはしておこう」


「だね」



 自分自身で語った通り、緊張はしていなかった。ただし、それ以外のなにかの感覚がぼくを支配していたのはわかった。



 1分か5分かもわからないが、とてつもなく長いように感じた時間は、ラフィーとリーダー格の天使を連れてきた。



 ラフィー。ヘブンバックで会ってから、それ以来は関係が薄い。まさかこんなところで、こんな形で会うことになるなんて。



「では、私は失礼します」



 リーダー格の天使はお辞儀をして、業務に戻っていった。



 この場にぼくとゼルとラフィーがいる。全く説明などはなされなかったのか、彼はおどおどとしている。



 気弱そうで優しいように感じ取れるラフィーはそんな空気に耐えることができなかったようだ。話をし出した。



「ふたりとも、どんなご用ですか?」


「いやぁ、実は噂を聞いたんだよ。ラフィー。君が地上の人間の命をどうにかしているって」



 ゼルは躊躇いなくそう言った。



 すると、彼は慌てだした。まるで噂で起きていたことを隠すかのように。



「ボ、ボクは知りませんよ?」



 ハインやグリウたちも探しているのに、なにもないなんてことはないはずだ。



 想像通り口を割らないラフィーとの、問答が始まった。

お読みいただきありがとうございます。

今日は眠気が強くて短くなってしまいました。すみません。しかしいよいよ物語に終わりが近づいてきました。毎話毎話をお楽しみください。

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