アークの謎、解明!
「ふぅ……やっと休める」
やっと腰を落ち着けられたぼくは、心中の思いを吐息交じりに吐いた。ゼルはぼくとは対照的に、にこにこと微笑みながら言った。
「そういえば、お茶会が終わってからちゃんと休んでなかったかな?」
「ぼくは一回帰ってきたけど、そのすぐ後にゼルが帰ってきたから。確かに休めてないね」
ぼくは椅子に定位置を決めていて、背もたれも存分に活用している。その姿を彼はしばらくじっと見ていた。
「……なに?」
「もう仲は直ったんだろう。あのベッド、使ってあげないとベッドに対しても彼女に対しても、可哀想だよ」
「そうなんだけど」
その言葉に肯定はできなかった。傷口を弄るような苦い顔をして、やんわりと否定した。
「どうも納得いかないんだよ。彼女の、リザレイのことはさ。前もちょっと言ったけど、妥協してる感じがあってさ」
「そっか。でも今回ほどの計画は立てられないからなぁ」
「うん、大丈夫だよ。まだこのベッドを使う機会はないかな」
ゼルも椅子に腰掛ける。そんな彼を見る前に、虚しく浮いているフロートベッドをちらっと瞳に写して、そして目を外した。
人間のものを好むゼルらしい、木製の机と椅子にぼくたちふたりは座って向かい合っている。
「まあ、少し休めてきた頃だけど。頭の方だけちょっと動かしてみないかい?」
「それって、ぼくの体について……」
ゼルはこくっと頷いた。
これから推理のような、そうでもないようなことを始めるとわかって、「うーん」とぼくは唸ってしまった。当然、「どうしたんだい」と聞かれる。
「どこから考えたらいいかとか、よくわかんないからさ。うまく結論にたどり着けるかなって心配でさ」
「なるほど。大丈夫さ、考えるときは、基本から順序立てて当たり前のことを提示していけば、それは結果になるよ」
簡単にいうけどね、と心の中でぼやく。まあこんな真剣に考える機会なんてそうそうないから、頑張ってみよう。
「基本から順序立てて、か……謎なのは、魂がないはずのぼくの体が生きている、ということだね」
「だね。当たり前のことを示していく。生きているということは、息をしていたり血が流れたりしているってこと」
「確かに。じゃあ息をしてたり血流があったりするってことは……」
ぼくはそこで答えが出なくなってしまった。成人だったらすぐさま答えが出るのだろうか。
ただしぼくにはひとつ案があった。
「ゼル。脳って、人の体に指示を出してるんだよね?」
「あー、確かそんな感じだったと思うよ」
「じゃあ、脳も生きてるよね。ぼくの体はまだ脳が機能してるんだ」
思いついたことをすらすら発していく。しかし、ゼルは引っ掛かりを覚えたらしい。
「脳が生きてる? 魂がないのにそんなこと」
「魂の有無でそんなに変わる?」
「ああ。脳は魂の為に働くからね。魂がないのにまだ血を送り続けてるって、意味がわからないね」
「まあ、ありえないってことだよね。じゃあどんなシチュエーションなら納得できるの?」
「どんなと言われてもね……魂がないから今は脳が動いていないはず。でも動いている。体になにか憑いてるわけでもないだろうから、外から脳を弄られてるみたいだね。弄るというか回復というか」
「弄る? そんな真似ができる人間がいるの?」
「別にそんなことをするのは、人間に限らないよ。非現実的な話だけど、ここにはたくさんいるじゃない。そんな超常現象的な力を持つ。天界の天使、という存在がさ」
「その口ぶりだと、天使の中に犯人がいるみたいだけど」
「それはわからないな。ただ、治癒の役割を持つ天使っていうのはいるよ」
治癒の天使? どこかで聞いたような気がする。
「それってゼルじゃ? まさかゼルが犯人とか」
「そんなわけないだろ。もうひとり思い当たる節があるんだ」
「そうなの?」
誰? とぼくは問い詰める。でもこの質問は流されてしまった。
「そのある天使について噂が流れててね。地上のある人間の命を長引かせてるというもの。そのある天使というのは……」
微かにきいたことのある名だった。
「それはきっと、ラフィーだ」
お読みいただきありがとうございます。
執筆遅れてすみません。
うとうとしながら書いてたので、変な文あったら申し訳ないですが......兎にも角にも噂や謎の真相が明かされました。
これから先どうしていくのか、お楽しみに。




