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新たな方針

 「アーク!」


「えっ?」



 調子づいてきて、いつまでたっても口を閉ざす気配のないアークに、僕はストップをかけた。



 彼が楽しいのはいいことだけれど、現状を変えなければいけないことも事実だ。



「ちょっとこれは真剣に聞くけど、いいかな」


「あ、うん」



 アークはきょとんとしている。真面目ごとは彼の得意分野のはずだけど、立場が逆転したような気分だ。



「リザレイともまあ、生活には支障がないようにはなったしさ。これから先どうしていくか、なにをするか決めていこうよ」



 僕は気張らず、極めて自然な口調で言った。アークの元から円らだった瞳が、さらに丸くなっていった。そして手を口許に当て考え出した。



 「う〜ん」と唸っているところからすると、そこらについてはなにも案が無かったのだろう。



 やはりと思っていたけど、無計画さに少しだけ心中ため息を吐いた。最後あんな立派に語っていたのに。まあそれはいいとして、僕はそんなアークの代わりに、大まかな案を教えてやることにした。



「アーク。僕の話を参考にしてくれるかい?」


「う、うん。よろしく」



 アーク自身も思考の抜けを自覚していたらしく、お互い謙虚な姿勢で話し合うことになった。



 僕がアークに教えたのは、まず原点回帰しようということだ。お茶会を挟んだからか目的が曖昧になっているから、それをひとまず確認した。



「……で、覚えてるかい?」


「ぼくの魂は寝たきりの体に戻らなくて。そのぼくの魂が体に戻る方法を探していく、だよね?」


「合ってるよ。語尾を不安げにするんじゃない」


「なんか馬鹿にされそう……」



 きちんと覚えていたから、次のステップ。



 アークの魂を体に戻す方法。それを見つけるにはどうしたらいいのか。何事も調査と、そこから導き出される推理が重要。というのが自論だ。



 なにか他に手があれば別だけど、今の場合は手がかりもなにもない状況だ。まさに0からの探索。



「現状そんな感じだけど、なにを調べたい?」


「魂を体に戻すんでしょ……魂を調べようにも、もう器に入っちゃって形もないし。魂について深く描かれた書籍とかがあるとは思えないな」


「あっても、僕らが知ってるのと同じ知識量だろうね」


「じゃあ、体の方かな。……地上にある僕の体について調べて、少しでも手がかりを掴むとかどうだろう」


「体の方か。なるほど、良いんじゃないかな」



 人間が使っているような検査器具とかが使えるわけでもないから、そういう身体的なことは正直言ってわからないだろう。



 でも、人間じゃないからこそわかることもあるかもしれないし、今はとにかく動くことが大切だ。と思う。



 その後アークと少し議論して、具体的にまずどう動くかを決めた。



「本来は魂はすぐに体に入るはずなんでしょ? それならさ」


「うん、恐らく君の体は、他の人の体とは違うんだと思う」


「手っ取り早いのは比較することだよね」



 そんな感じな会話をして、体をアークのものと別人のものと比べることにした。



 一応、息のある人と眠り続けている人で比べることにした。アークに聞いたが、リカという勉強でも比較による調査は行うらしく、様々なパターンを試すらしい。それに則ってみる。



「生きてる人は地上からなんとなく選ぶとして、そうじゃない人の方は誰にするの?」



 アークからの率直な疑問が出てきた。



 確かに、どうしようか。ヘブンバックには沢山あるが、意味もなくそれの結界を解いてはいけない。保存状態が悪化するし誰かに叱られそうだ。



 それに、器の詳細なデータを閲覧できる資料もあると聞いたことがある。そのデータは機密に近いから、指名をする必要がある。



「……なんだけど、自分のことをあけっぴろげに教えてくれる人なんていないからなぁ」


「相棒の彼らも、流石にそこまでの心持ちはしていないだろうね」



 久しぶりに考えが止まった。知り合いや友人は数いれど、結構デリケートな問題なのだ。



 天界に来たばかりのアークにあてがあるわけもないし。そう悩んでいた時、何故かふと、ある人物の顔が浮かんできた。



「アーク、ちょっとついてきてくれるかな。教えてくれるかもしれない人、見つけたんだ」



 僕はちょっと衝動的になっていた。彼の手をひくわけでもなく、しかし彼の為に、僕は家を飛び出した。



「え、あ、ちょっと待って! そんな人いるの!?」



 問いかけに雑に答えながら向かったのは、Gホール。



 アークは、当然だけれど訳がわからず、何度も僕に問いかけたり服を引っ張ったりしていた。



 僕の方も当然のように対応せず、ただ一心不乱に一目散に、Gホールの受付に飛んでいった。それだけでアークは勘付いてくれたようで、問うのをやめた。



「ゼル? もしかしてその教えてくれる人って……」


「そうだよ」



 受付には、いつもお世話になっている彼女の姿がある。そして目が合った。



「こんにちは。さっきぶりですね、実は相談したいことがありまして」


「そうなんですか? もう、私に頼りっきりじゃないんですか?」

お読みいただきありがとうございます。

新しい展開になってきました。

ここからはダラダラしない予定ですが。

正直わかりません......気長に付き合っていただけると嬉しいです。

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