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優雅なるデスアークエンジェル  作者: 幽幻イナ
天界の相棒お茶会
59/107

閑話・特別と憧れ

 「なあ、ゼル」


「ん? なんだい?」



 部屋の淵に寄りかかって、Gホールのどこかを見つめているゼル。それの服の裾を引っ張りながら声をかけた。



「なに見てんだ?」



 ゼルは答える代わりに、ニヤッと薄く笑って問い返してきた。気味悪いな……。



「ルイズこそ、なにを見ていたんだい」


「え、ああ、こっち? リザ姉とアークが話し込んでたところだけど」


「ふぅん……」



 ゼルに聞かれた通り、私はなにかを話しているようだったリザ姉とアークを観察していた。



 ただ喋ってるだけならまあまあって感じだけど、さっき私を忙しく振り切ってまでリザ姉の元に行った目的が気になる。なんだかふたりとも、様子が違った風だったし。



 だから思わず長く見ていたんだけど、聞き返してるゼルはなんなんだ?



「ふぅん、じゃない。そっちの目にはなにを映してたんだ?」


「ルイズと一緒さ。あのふたりのことが気がかりでね」


「気がかり? なんかあったのか?」



 「んー」と、ゼルは答えるのを渋っている。



 ふたりは、特にリザ姉は話をしているだけではないような激しい身振り手振りをしていた。



 リザ姉とアークの間に、私の知らない事情が発生しているのだろうか。そう思うと、途端にかなり気になってきた。ゼルが「気がかりで」って言うってことは、ひとつくらい情報があるはず。



「なあ。教えろって」


「アークたちのこと? うーん、教えていいのかわかんないんだよね」


「秘密な事情なのか?」


「まあそうだね。他人のプライベートみたいなことさ」



 初めに声をかけた以降、ゼルは目を合わせずどこかを見ている。今となってはアークもホールを出て行って、通行する人や天使しか見物できない。



 こいつ、こう見えても口が固かったりする。実質2回聞いたけど、頑なに口を開く気配はない。



 でもそっちの意思が固いように、私も「知りたい」という探究心とかがある。比較したらちっぽけかもしれないけど、馬鹿にもできないものだと思う。



「ゼル! ルイズは知りたいんだよ。繊細なことかも知んないけど、なんかわからないと嫌なんだ。靄が残るんだよ」



 その言葉はもちろん本心だ。



 過去のことから捻くれてしまった私を、暖かく受け入れてくれたリザ姉。私とは真反対の性格で、新しい感情とかを発見させてくれたアーク。



 基本ヒールとかの相棒たちは大事だ。同じようにふたりとも、私にとって大切で特別な存在だ。



 なにも知らないでいるなんて、我慢ならなかった。私の中のプライドがその気持ちを生み出して、表情に表していた。



「……そこまで聞きたいのかい?」


「そうだ。ルイズをただの阿呆の子だと思わないでほしいな。リザ姉のことだろうがアークのことだろうが、ルイズは約束は守るよ。ここの奴らは皆良い奴だしな」


「そうか。なら、少し話そうかな」



 ようやく口を割った!



 私は達成感で、隠しきれてない嬉しさと一緒にガッツポーズをキメた。そしてすぐに落ち着いて、聴覚を澄ました。



「前、アークが寝る用のベッドをリザレイに縫ってもらったんだ。それを持って帰ろうとしてる時かな、アークがリザレイを怒らせちゃったらしい。想像よりも怒ってたみたいで、アークは思わずそのまま帰っちゃって、それ以来顔も合わせてなくて気まずかったんだ」


「だから今回?」


「ああ。利用したみたいになっちゃったのかな。悪かったね。仲を直せたかどうかはまだわかんないんだけどね」


「いいよ。吐き出せてスッキリしたしヒールとまた仲良くなれた。それよりも、なんでリザ姉は怒ったんだ?」


「それは……まあ今回言ったからいいか。彼女は神様を崇拝しているとはわかったよね。その神様を、アークが侮辱したらしい」


「え……でも、あいつはそんなことしないか」


「正直にはっきり言いすぎたんだろうけど、リザレイの方も信じるものが偏ってるよね」


「偏ってる……」


「あの2人の間にあったのは、こんなところだと思うよ。多分さっき仲を直したと思うんだけど。……彼女が完璧たる所以は、偏ってでも信じ続けられるものがあるからかもね」



 ゼルは画面の中の役者のようなセリフを吐いた。でも、それもそうだと納得するところもあった。



「あ、そうだ。悪いけどルイズ。僕はアークの様子を見てくるから、ここでお別れだね」


「そうか。教えてくれてありがとな」



 そうして、いつもの憎たらしいほどの笑顔でホールを出て行った。



 アークとリザ姉の間にあった事情は知れたはずなのに、私はまだ依然としてもやもやしていた。その正体はわかっていた。リザ姉の本性についてのことだ。



 リザ姉は異常なほどに神とかいう存在に縋っている。逆に私は信じてないというか、全然頼りにしていなかった。



 私にとって彼女は憧れの存在だけど、そこだけはどうも引っかかりというか違和感みたいなものを覚える。



「そういうの、ルイズが受け入れに行った方がいいのかなぁ」

お読みいただきありがとうございます。

今回は実際のところ本編に関係ないかもしれませんが、久しぶり(?)のルイズ目線です。お楽しみください。

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