一緒に歩いてきた道
ぼくと勇樹の仲が確実に深まったのは、その一件からだと思う。
登下校中とか休み時間とか。もっと心をありのままにして話すようになった。他の友達が来ても勇樹のフォローもあって、気軽に関われたな。
そういう時にすごいなって思って、「ありがとう」とか言ってた。勇樹のほうも「あいつらとも良く話すようになったよなぁ」って褒めてくれて、自分が変わったって実感できたな。
さっきも言った気がするけど、幼稚園の時は本当に人間関係とか苦手だったんだ。でも一線を通り越したら、友達と会う為に学校に来ているみたいになっていった。誇張表現かもしれないけど、依存してる感じでもあるかな。
家でも、両親は共働きだからあまり顔を合わせなかったんだけど、一回言われたことがあるんだ。
「なんか嬉しそうね?」
って。教室で盛り上がった話題を思い出していたところだったんだけど、楽しさが顔に滲み出ていたみたいだった。思い出し笑いって奴かな。
ただ学校のことはあんまり話してなかった。忙しいのに無理に声をかけても迷惑かなって思ってたから。だから理由を言うのが恥ずかしくて、雑に誤魔化してしまった。
「何でもないよ」
「そう? 前の勇樹くんのことかなって思ったんだけど」
「まあ、そんなところ」
「学校が楽しいなら良かった。じゃあご飯作っちゃうね」
「うん」
実際家庭内でも明るくなってた。自分が食べたい料理も言えるようになったし、欲しいものとか行きたいところとか。あれがやりたいとかこれがやりたいとか、意見を言えるようになっていったんだ。
後は、通知表の評価もちょっと変わったのかな。一学期とかの通知表は、「もっと積極性を」とか「挙手を頑張りましょう」とかだったけど、遠足の後は真逆のなって褒められていた。
担任の先生からも、迷子からの発見直後は酷く叱られたけど、学年の終わりには「一年で立派に成長しましたね」とか言われたよ。
そして、学年が終わって何回か進級を繰り返した。それでも仲が崩れることはやっぱりなくて、クラスはもちろん変わって離れたけど、昇降口でお互いに待って途中まで一緒に帰っていた。
アスファルトの道路で、半日溜め込んだ話題とか感情をぶつけ合って笑い合う。そんな体裁は代わり映えしない、でも毎回新鮮な気分になれる日々に、ぼくは完全に満足していた。
程よいストレスとか不条理もあって。どこにでもいるような、学校とか社会に反抗心を持ちながら何だかんだ従ってる小学生になっていったんだ。
まあでも、今ぼくがここにいるってことは、それだけじゃ物語は終わらないってことなんだよね。
結果から言うと、ぼくは車に轢かれて死んだんだ。ルイズとかにはちょっと言ったっけ。皆は事情があって天界に来たけど、ぼくは誰が見ても事故っていう状況で来ることになった。実際事故だった。
平日の夕方くらい。いつも通りの、まるで日課みたいになった勇樹とのお喋りをしていたんだ。
内容は、因みにって感じだけど、死の先ってなんなのかなぁ……っていう風な話。細かい会話は覚えてないけど、
「天国とか地獄とかあると思うか?」
って聞かれて、
「無いと断言はしきれない」
っていう感じで答えたっけ。毎回面白そうな話題を持ってくる勇樹に、いつも感心していて、別れ際まで討論しあってたんだ。
でもその日は、途中で終わっちゃった。自分たちの中でもとりあえずの答えも出せないでさ。
……喋るのとその内容を考えているのとで、集中が分散してた勇樹は、確認しないまま車道に出ちゃったんだ。案の定車が来ていて、ぼくは思わず衝動的に庇った。車の方もスピードを緩めようとはしてたけど、結局無駄だったよ。
死ぬとか痛いとか、特に考えてなかったんだ。車は瞬時に危険物質になって、勇樹はろくに動けない守護対象になった。
誰よりも何よりも大切で、どんな場面でも人気者の彼が死ぬわけにはいかないしね。
ぼくが車の前に立ちはだかった時、既に声は特段あげなかった。痛かったとしても勇樹を守れていたならって思えてたから。でも彼の方はもちろん、苦しかったんだろうなって今も思うんだ。
轢かれる前に聞こえた気がしたんだ。
「〜〜!」
なにを言ったのかは轟音でわからなかったけど、多分ぼくのことだと思う。ぼくたちはとっくの前から親友だったから。だから守ったんだけど、同時に悲しむのも当然だよね。
今は……後悔してるかも。彼の手を強くても引けば良かったのになって。もう一回会いたいなって思うけど遅いよね。
ぼくは死にたくて死んだんじゃないんだ。喧嘩売ったりしてるわけじゃないけど。だからこそ地上に帰れる方法を探してる。
ここまでに至った経緯はゼルとか、所々は皆知ってると思う。だから省くね。
……とは言っても、これで終わりかな。ぼくの人生は。
幼稚園から、小学校からの幼馴染別れてしまった。だけど、っていうかだからぼくは帰りたい。今でこそ天使とかの仲間がいるけど、やっぱり生きた人間には同じ生きた人間が合うと思うんだ。
これからまだ少し世話になるだろうけど、ぼくは彼とまた駄弁れるようにするんだ。
まあ、改めてよろしくね。
お読みいただきありがとうございます。
これでアーク編終了です。
リザレイは他の相棒たちと毛色が違いましたが、こちらもある意味相違点がありました。
この後の展開にもご期待ください。




