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優雅なるデスアークエンジェル  作者: 幽幻イナ
天界の相棒お茶会
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友情の再確認

 曖昧な劣等感みたいなものを感じたその日から、ぼくは勇樹との関わり方が変わってしまったんだ。



 明るくて、皆の太陽と言ってもいい勇樹。迷惑をかける訳にはいかないから一見は笑っていたけど、心に隙間ができた感じだった。



 ぼくよりもずっと前に、勇樹と仲が良かった人たちがとても羨ましかった。同時に後悔もして、自分がこんな性格じゃなかったら早くに友達になれてただろうなって。



 そんな感情誰に教えたって意味もないし、教えたくないから、少し我慢して学校生活を送っていた。



 そんな折、小学一年生にとっての一大行事とも言える、遠足があったんだ。



 都内かどこかしらの動物園に行って、その後クラスごとに芋掘りに向かう。そして友情を深め合って嬉しさや達成感を得て……とかそう言う感じ。



 初めての制限ある集団生活に慣れていなかったぼくたちにとって、遠足っていうのはそんな縛りから解放されるイベント。まだ緩い方だけどね。それに勇樹が食いつかないわけがなかった。



「遠足、もう来週じゃん! 超楽しみだな」


「だなー。動物園なに見る?」


「やっぱりパンダじゃね?」



 そんな会話は、ぼくから若干離れたところで行われていた。それを羨ましそうに見るわけじゃないけれど、心はなんとなく閉ざした。



「なあ、お前はどう思う?」



 そうしている内に、勇樹が声をかけてきた。



 それを聞いた時嬉しさが胸の奥からこみ上げてきた。自分から輪に入りに行けばいいのに、話しかけられるのを待って、それで喜んでるんだ。



 「かまってほしい」なんて我がままで身勝手な自分に嫌気がさしながら、それでも変わらずぼくは答えた。



「え、なに?」


「動物園でみたい動物。俺は断然ライオンなんだけどな」


「うーん……ぼくもライオンかな。かっこいいし、たてがみも見てみたいしさ」


「だよな! よし、一緒にライオン見るぞ!」



 勇樹は相変わらず、自分のペースに持っていくのが上手かった。ぼくの肩に手を置き同調を求めるように、強く揺さぶる。



 いつものノリだ。ぼくはそれに応えるように、歯を見せて笑って頷く。



 ただ友達でいたいのに、自分の中だけで迷いとか確執が生まれていって。



 他の誰がいようと、ぼくと勇樹の関係は変わらないのに、まだまだ子供だったから気づけなかったんだ。できることなら周りの全員を引き剝がしたかったくらいだけど、現実でそんなことやるわけにもいかない。



 別に対したことをしなくても、わだかまりがあるだけで毒みたいな実害もない。



「心の問題なんてぼくの勝手だし、このままでいいのかも……」



 そう思うようにもなってきた。無理やり気持ちに踏ん切りをつけて、ぼくは遠足の日を迎えた。



 大人もぼくたちも予想していた通り、大混雑の動物園を訪れた。多分なるべく混雑しない時間帯とか期間を選らんだろうけど、それでも大盛況だったよ。



「お友達としっかり手を繋ぐこと! 迷子にならないようにしてね!」


「はい!」



 本格的な入園の前に、先生がそんな注意喚起をした。ぼくたちは男女二列で並んで、隣の異性と手を繋ぐ。



 本来なら、これではぐれないはずなんだけど……わかってるかな。うん、ぼく迷子になっちゃったんだよね。



 注意はしてたつもりなんだけど。ホワイトタイガーを見に行くところだったんだ。そこは階段で高低差があった。歩調がずれるとあっという間に人の波にさらわれちゃうんだけど、それが起きちゃったんだよ。



 誰かぶつかったのかなにかの弾みで、手を繋いでた女の子と離れてしまった。



「あっ、しまった……」



 一回はぐれたら最後、150センチにも満たない子供の背丈の空間なんて誰も見ないから、我先にという人波に揉まれてくんだ。



 女の子のか細い声がしたような気がしたんだけど、なにを言ってるのかはやっぱり聞こえなかったよ。



 せめて人力ベルトコンベアからは出ようと思って、石畳の横の脇道になんとか外れた。



 右と左に空間があって、とりあえず肩を回して体をほぐす。そうやって一旦冷静になって物を見る。



「ここ、どこなんだろうなぁ」



 人に隠れて、動物以外の景色はほぼ見えていなかった。まだ頭も悪くてマッピング能力とかもないしね。



 サービスセンターとか、今考えたらそういう選択肢があるけど。まだそういうものの存在も知らなかったんだ。さっきから言い訳みたいになっちゃってるけどね。



「……どうしよう。家、帰れるのかなあ」



 とりあえずなにか喋っておいて、不安を紛らわす。さっき冷静にとか言ってたけど、実際そんなこと全然なかったんだ。



 何回も深いため息をついて、しっかりと深呼吸をした。何分経ったのかもわからないけど、ひとりでいるぼくに誰も気づかなかったのは事実なんだ。



 強がってたけど、その時はすごく寂しかった。心細かった。知らない人でもいいから、殺さないなら誘拐犯でもいいから、孤独が嫌だった。



 多分前のぼくなら、「ああいつもの感じだな」って少しは落ち着けたと思うんだけど。



 きっとこれも勇樹のせいなんだなって察した。



 心が混沌としてきて、勇樹と出会ったことがまず正しかったのか? なんて愚問まで考えの選択肢に入ってしまった。



 静かなパニックに陥ってたんだ。やけになったぼくは、人混みの中じゃ聞こえないけれども普段より大きな声で叫んだ。



「勇樹! 友達なら……仲良くなったんなら、助けてよ!」



 別にこなくてもいいけど。なんて心の中で一筆箋を添えたんだけど。



 ぼくの無謀な願いは叶っちゃった。無造作に投げ出された手が、暖かく握られた。そして声が聞こえる。



「おう! 来たぜ!」

お読みいただきありがとうございます。

相棒たちは色々と考えすぎなところが多い気がしますが、アークの場合はちゃんと救ってくれる人がいましたね。

最後のシーンかっこいいですよね。次話にご期待ください。

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