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優雅なるデスアークエンジェル  作者: 幽幻イナ
天界の相棒お茶会
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ちょっと歪な人生観

 それじゃあ私の周辺環境から、簡単に説明しましょうか。



 最初は家庭かしら。取り立てて珍しい家柄というわけでもないわ。少しの優しさを含んだ亭主関白な父と、温かで穴も隙もない衣で包んでくれる母。そして同じ話題で盛り上がり、それ故一番ストレートに叱ってくれる姉。



 幼い頃から友人にも恵まれてきた私は、多くの人たちに成長させてもらったの。



 もしかしたら幼稚園児くらいの時の私は、とても我がままなおてんば娘だったかもしれない。それでも周りの人たちが間違いを正して私を矯正してくれたから、伸びよく育てたの。



 そうだ、一応言っておくけど。友人に恵まれてきたっていうのは、優しい友人ばかりだったというわけじゃないわ。手を焼くような男の子とも出会ってきた。



 けれどその度に対策法を考えて、それを勇気を持って実行する。そうして男の子や女の子と和解することで、様々な視点から物事を考えたり強い精神や実行力を持ったりすることができるようになったの。



 ……ふふ、ドラマみたいだって思う? そうね、絵に描いたような成長劇ね。でも本当に、人情というものと共に私は生きてきた感じね。



 だから、それを小さな頃からひしひしと感じていた私の性格が、人の為にと影響されていくのは必須だったわ。



 困っている人は助ける。床やテーブルの汚れはひっそり拭く。挨拶、特に()()()()()はしっかりと。でも代わりに、わからないことはちゃんと聞く。助けてばかりじゃなくて、たまには弱みも見せるようにしていた。



 小学校や中学校は、進級・進学していく度に大人に褒められていったわ。ちょっと自慢になっちゃうけど、話すわ。聞きたくなかったら耳を塞いでもいいからね。



 学校での出来事といえば例えば、授業の態度が良かったらしいわ。物覚えが良く学校生活でも好印象だったそうで、テストはほぼ100点だった。問いは間違えてもその理由を追求し続けて、それも高得点に繋がったらしいわ。



 あんまり話すのも恥ずかしいけど、つまり文武両道って言われてたの。さっきも言ったけどね。……ええ、運動の成績も一応良かったわ。



 それと、通知表に稀に書かれてたのは、「友人との関係が非常に良好。教師たちの印象も良く、穏やかに学校生活を送っているよう」って感じのこと。



 私は人との距離の取り方や関わり方が上手くて、トラブルとか問題は一切起こしたことがないわ。



 計算してるずる賢い女って思う? そうよね、わかってる。でもこれって無意識の内なの。それに迷惑をかけない限り別にかまわない気がしない?



 私、時々物思いにふける時があって。例えば浮気とか不倫とか、一線を超えないならいいと思ってるの。人には雑なタイプもいれば神経質なタイプもいる。でも恋愛が絡むと、途端に過敏すぎやしないかしらって。要は程々にしておけば、知られなきゃいいってこと。



 人によって態度を変えたって、それがその人にとっては気持ちいいんだから。それに自分は偽ってないわ。礼儀の加減を変えてるだけなのよ。



 ……ああ、論点がずれちゃったわね。まあ私はそんな風な考えを持っていたんだけれど、一部の女の子たちはそれを嫌味に思っていたらしいわ。



「あいつは人によって態度を変える小悪魔だ」


「人を手玉に取ってるとでも思ってんのかなぁ」


「あんな奴、本当にいるんだ」



 そんな噂話というか陰口というか、小学6年生とか中学生になった頃からよく聞くようになったわ。



 強い精神を手に入れたといっても、悪口を言われるのは初めてだった。案外それより前から嫌がられていた可能性だってあるけど、耳に届かないだけマシだったの。



 勿論変わらず接してくれていた友達だっていた。一瞬、気の迷いでその子たちも陰口を働いてるんじゃないかと思ってしまったけど、そんな馬鹿な考えはすぐ消えたわ。



 だってそれまで一緒に育ってきた仲間だから、疑うなんて能無しも甚だしいわよ。それにね、もうひとついつだって私を守り支えてくれた存在があったの。



 予想はつくかしら。そう、神様よ。



 私が神様と出会ったのは、小学校の低学年くらいの時。気まぐれなところもあった母は、気分のいい時は本を買ってきてくれたの。昔から語り継がれてきた童話とか、子供用に作られた「生活の中の謎を解く」教育本とか。



 易しく訳した聖書も、そのひとつだったわ。神様が世界を創造し、アダムとイブを創り人を発展させていった。



 これまで読んできた絵本とは、どこか雰囲気が違ったの。時にはきれいで時には酷い、目まぐるしく変わりゆく文章と挿絵、そして神の子たちの運命に私は強く惹かれたわ。



「ねえ。母さん、父さん」


「あら、どうしたの?」


「前母さんが買ってきた、聖書があるでしょ?」


「お前が休日によく読み込んでいた奴か」


「うん。あれのちゃんとしたものが欲しいの。もっと読みたくなって」



 だから私はそうやって、両親に本家の聖書をねだったの。



 母が買ってきた方の聖書の後書きとか勘から、本物の聖書は文字だらけとはわかっていたわ。まだ小説もまともに読んだことのない年だったけれど、どうしても聖書だけは読んでみたかったの。



「わかったわ。母さんと父さんが見つけておいてあげるわ」


「少しの間待ってろよ」


「やった、ありがとう!」



 両親にもそれはわかってもらったし、持ち前の優しさで快く了承してもらったわ。



 そして約1日が経ち、早速聖書を手に入れた私は、僅かでも時間が空いたなら隅々まで文字を読み込んだ。



 学校にも持って行ってね。読書の時間に恐ろしいほどのスピードで読んでいた、って友達が言ってたわ。



 やっぱり聖書を読む子供なんて少数派で、休み時間に読書をする私の周りに人が群がってくるなんてこともあった。当然うるさくなってしまったけど、集中したかった私はその時だけは友達の顔も見なかった。



 長くなったかもしれないけど、そこまでして聖書に熱中していたわ。一回読み終えたらまた読み返して、幾度も頭に叩き込んだ。



 そのおかげでね、神様への信仰も、神様と天使とその子たちが創り上げてきた歴史も、色んな知識とかが深まってきたの。新しい考えも吸収して、一回り周囲を出し抜いて成長した気がしてた。



 それだから、女の子たちの陰口にも心を揺らされなかった。



 落ち込むこともムキになることもなくて、無情に聞き流せるようになっていた。それに、彼女たちの意識をどうやって改めさせようかと、思案することもできた。



 聖書に、神様に出会ってから私の人生観は変わったわ。これまで幸せだったのが、さらに充実が増したの。



 でもしばらく毎日を過ごしている内に、動いたりとか変わるべきなのは、彼女たちの方ではないと気づいた。というか、そんな風に私が思った。



 地上にいた私は、天にいる神様や天使に憧れていたの。

お読みいただきありがとうございます。

リザレイは彼女なりの生き方を見つけているつもりですが、少しずれた考えを持っているように感じませんか。

彼女がどのようにして天界にきてしまうのか、お待ちください。

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