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優雅なるデスアークエンジェル  作者: 幽幻イナ
天界の相棒お茶会
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純情で馬鹿を見た青年の話

 そうして、ヒールの話は終わった。ゼルは優しく「お疲れ様、ありがとう」と声をかけた。



 ぼくは彼女の過去に圧倒され、しばらく難しい思考を放棄した。



 人の、ましてや天界に止まるような人間の過去は濃いものだろうと予想はできていた。しかしヒールの言った通り、いわゆる重い話という奴で、みんな途中から神妙な面持ちをしていた。



 ぼくはヒールの話に衝撃を受けるとともに、それを乗り越えて今過ごせているのは純粋にすごいなと感じた。けど、彼女が自分自身を押さえ込んでいないか、心配になるところもある。



 そうやって色々思うところはあるけれど、あんまり自分の世界に入り浸っていると、現実世界で取り残されてしまう。



 まだごちゃついている頭を大雑把に整理して、ヒールが語り終えたお茶会のテーブルへきちんと目を向けることにした。



 これまで話をしている時、ヒールは堂々としていてまるで女優のようにも感じられた。しかし口を閉じた瞬間から、椅子に深く座り込み控えめになってしまった。



 ふんふんと深く話を聞いていたルイズの陰に、隠れるようにして紅茶を飲んでいる。



「ええ。次はフォーリでしょ」



 ヒールは口許をカップで隠しながら、フォーリに目線を向けてそう言う。あまり目立ちたくないのかな、とぼくは思っていた。



「あ、はい。そうですね」



 名前を呼ばれたフォーリは、目を若干見開いて少し驚いた様子だった。真面目そうな彼らしく、姿勢を良く集中してヒールの話を聞いていたようだ。返答がやや遅れた。



「それでは早速話そうと思います……と言いたいところなんですが」



 言葉を切ったフォーリは、ヒールやゼルの方をちらちらと見る。



「長いこと話していますが、休憩とか取らなくていいんですか? 座りっぱなしも疲れますし、ゼルさんに至ってはずっと立っているじゃないですか」


「いやいや、僕は大丈夫だよ。天使の体力はまだあるし、たまに浮いてるから負荷はかかってないさ」



 ゼルはよく見る楽しそうな笑顔で言いながら、肩のあたりをとんとんと軽く叩く。ヒールの表情からも、ふたりとも余裕そうなのが伝わってくる。



「私も大丈夫。気を使わないで好きに話しなさい」


「そうですか……じゃあ、始めたいと思います。言葉がまとまってないので詰まるかもしれませんが、聞いてください」



 いよいよお茶会も終盤に近づいてきたかな、とぼくは思った。フォーリが話し終わったら、次はぼくかリザレイだ。



 今度はどんな過去が飛び出すのかという期待感や緊張もありつつ、次は自分の番かもしれないという構える気持ちもあった。



 ただし、そんなことを考えてばかりいたら、さっきのヒールのように怒られてしまうかもしれない。数十分前の教訓を生かし、フォーリの話に耳を傾けることにした。



「さて、どこから話そうか迷いますね。ヒールさんも言ってましたが、考えがまとまってないともっとどうしようもなくなりますね。



 うーん。じゃあまず、地上にいた頃の僕の性格についてからにしましょうか。きっとそれが過去にも関わってきますよ。



 僕はいわゆる“お金持ち”のところに生まれましてね。自分で言うのもあれですが、育ちが良かったんです。両親や兄弟も、優しく厳しく丁寧に育ててくれましたから。



 僕自身、家や家族には誇りを持っていました。両親は学歴も職業もよく、身内みんなが上品な教育をしてくれました。



 そのせい、とは言いたくないのですが。あまり汚いものには触れさせたくなかった両親の意向によって、僕は世間知らずな面もできていきました。



 だから学校などでは、たまに常識はずれとして扱われることも度々でした。陰口を聞いても平静を装っていましたが、やはり辛かったですね。



 僕が間違っているのなら教えてくれればいいのに……なんてことも考えてしまいました、その時は。でも変わるべきは自分だと思って、しばらくは黙っていました。



 もちろん家族には言えません。ここまで育ててくれた人たちに、心の中でだとしても不満を言うつもりもありませんし。



 ……そんな僕が、もっと邪魔というか嫌いになったのでしょうか。陰口は発展して、男子たちが直接僕に言ってきたんです。



「おいお前! いっつも思ってたけど、本当空気読めねぇな。なに考えてんだよ」



 日課の読書を机で楽しんでいたら、苛立ちに顔を歪めながら彼らがそう悪態をついてきました。



 突如大声を出され、驚きつつもショックを受けた僕は返事がしどろもどろになってしまいました。



「え……な、なんですか? 僕になにか、えっと悪いところが?」


「ありまくりだよ! しかもその敬語、イラつくんだよ。お前意味わかんねぇな」



 その日は、男子たちはそれだけ言ってどこかに行ってしまった。



 僕は色んな意味を込めてショックでした。悪口を直接言われたこともそうですが、ついに直接言ってきたかという、現実ですが認めたくない感情と言いますか。



 しばらく放心状態で、授業もまともに受けられませんでした。



 そして、その日から。その男子たちに限った話ですが、僕はいじめを受けるようになりました。

お読みいただきありがとうございます。

フォーリ編突入です。

小説内でもアークが言っていますが、このお茶会も終わりに着々と近づいています。

みなさんも最後まで付き合っていただけると嬉しいです。

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