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優雅なるデスアークエンジェル  作者: 幽幻イナ
天界の相棒お茶会
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自分を塗り替えて

 ……母にとっては辛すぎることだったでしょうけどね。父と別れたくないのに離れてしまって、その理由となった私を間違いとはいえ亡くしてしまった。



 私は最後に母の愛を感じられたし、母の生活の足枷にならなくて嬉しかったわ。でもそれは一方的で、母の方にはメリットも嬉しさも微塵もないわよね。



 父と離れるきっかけを作ったのは、私がわがままを言って生活を不安定にさせたから。母が私を刺して全てを失ってしまったのは、私が周りをよく見ていなかったから。



 あの痛くて辛かった日々もなにもかもが、自分の甘えのせいってことに、死んでから気づいたわ。



 魂となって天界に行くまでの時間にそれに気づいて、今更のように絶望してたのを覚えてる。



 だから私はその時に、転生して新しく生まれ変わったら、わがままでいないで迷惑かけないように生きようって思ったの。



 いや、生まれ変わる前に、天界に到着して天使と話す時から相手に手をかけないように意識したわ。でもその時話した天使、すなわちハインさんから言われた言葉で、それは少しの間吹っ飛んだわ。



「君、天使の相棒になる気はないか?」


「は……はい? 天使の?」



 別の案内役の天使に、これから冥界に行って転生を待つと説明されていたところを割り込まれたから、無い頭じゃ追いつかなかった。努力したけどね。



「ああ、天使には相棒という存在が、必ずしもではないが必要なのだ。そしてその枠は、神が見定めた人間だ。それを君に頼みたい」


「相棒というのは……秘書みたいなものですか?」


「まあそんな認識で構わない。実際は対等な立場ということだけは、覚えておいてくれ。それで、ある天使の相棒を君に任せたいのだ」


「は、はい……」


「記憶を調べた限り、辛いことがあったようだな。そんな時に悪いとは思うが、今のその心構えが相棒としてぴったりと思ったのだ」



 私は考え込んでしまった。今相棒となってここで過ごせば、今すぐにでも変わった自分を作っていける。



 でも天界での暮らしに不安もあった。これは夢かもしれないなんてことも考えたし、これまでしてきた人間の暮らしは一切通用しないだろうと。実際不安が強かったわ。



 でもしばらくきちんと考えてみて、不安を越えればメリットしかないことに気づいた。これから始まる生活も面白そうに思えてきた。



 私は思案する為に俯けていた頭を上げて、ハインさんに目を見て言った。



「決めました、相棒になります!」



 ハインさんは笑いはしなかったけれど、安心したのか頰を若干緩めた気がしたわ。



「それは良かった。こんな時に悪いな、感謝する」


「いえ。その私を相棒にする天使というのは、どんな方なんですか?」


「うむ……話すと長くなる奴だ。相棒の認証は神が執り行ってくださるが、まずは対面しないとならない。向かう途中で説明もしてやろう。まあ今は体の器を見つけ、休むといい」



 そうハインさんに言われ、どことなく気に入った気のする器に入り、Gホールの一室を借りて心身ともに休んだ。



 ここの辺りはきっと、アークと一緒ね。その後今の相棒であるラフィーと会って、しばらく2人で会話して……と段々に天界に慣れていったの。



 神に相棒として認められる直前くらいかしら。ある時私はハインさんに呼ばれた。話したいことがあるって言われて。



「なんのご用ですか?」


「うむ、そろそろラフィーと打ち解けてきた頃だと思うが、だいたいどんな奴かわかっただろう?」


「はい、四大天使のひとりなのに頼りないというか……失礼ですけど」


「構わない。そこでこちらから頼みたいのだが、前にある決心をしていただろう」


「わがままをせず他人に手をかけないように生きる。そんなことを決めましたけど」


「それを今こそ実行する時だ。ラフィーの正式な相棒となったら、些細な間違いやミスも指摘も問いただし、どんどん厳しくして育ててやってほしい。少し厳しいくらいがあいつには適している」


「……はい、私の心情にもあってます。喜んで引き受けますよ」


「無理はしないように。これは命令として受け取っておけ」


「分かってます。これからバリバリ頑張っていきますからね」


「ふん、頼んだぞ」



 この時から、私は自分を大きく変えた。自分にも他人にも厳しくし、態度は前の緩い感じじゃなくて、緊張感をラフィーに持たせる為に冷た目に。とにかく全てを見直したわ。



 それが今の私。神の認証も、普通の相棒と比べて優秀なものとして認められたそうよ。



 今は甘えることなんて一切ない。ほとんどのことは自分一人でこなせるようにまでなれたの。アーク、あなたもまだ天界に完全には慣れてないでしょうけど、これから心地よくなると思うわ。頑張って。



 さて、こんなところで私の話は簡潔かしら。終盤が長くなってもつまらないわね、これで終わりにさせていただくわ。



 ここまで聞いてくれてありがとう。これが私のお話しよ。

お読みいただきありがとうございます。

これにてヒール編終了です。

次はフォーリになると思います。

ぜひ待っていてください。

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