始まりのきっかけは須臾に終わる
プロローグ的な文です。
短いですが、これで雰囲気を感じていただいて、次話にご期待いただきたいです。
「なあ、地獄とか天国とか、あると思うか?」
幼馴染は、そう訊く。
「えー……絶対ないとは言えないな。その存在が、少なくとも認知されてるわけだし」
安直な質問に、ぼくはなんとなく答えたつもりだったのだが。
「へー! そんな真面目に考えるなんて、さすがだな!」
「あ、そう?」
ぼくと幼馴染には温度差があった。けど、異世界の存在について興味を持っていたのは、ぼくらとも同じだ。
「オレ、そういうチテキな奴に、憧れるんだよなぁ」
「ぼくは、君のエネルギッシュなところに、憧れるなあ」
「へへ、そりゃどうもな」
楽しい会話に、夢中だった。だから、活発な彼は気づかなかったし、ぼくも気づかなかった。
タイヤの摩擦する音が、遠くから響いていた。
「っ!? あぶないっ!」
「へっ?」
ここは、車道だった。
ぼくは、当然に幼馴染の前に飛びだした。
「あ、お前っ!」
叫び声に構わず、非力な体で屈強な体を、突き飛ばす。
「〜〜〜〜!」
彼はなにか叫んでいる。が、脳内はそれどころではなかったらしい。
――ぼくは、幼馴染の声を、もっと聴きたかったのに――
ガン! …………
鈍い音。それ以外、もう聞こえなかった。
天国があるといいなと、ぼくらしくなく考えた。
お読みいただきありがとうございます。
少年の未来がどうなるのか、ぜひお待ちください。