■第六章■
「おはようございます。」
「あ、おはようございます。」
読書をしてると、看護師さんが部屋に入ってきた。朝の検温だ。
腕に血圧計を巻かれながら、俺は本にしおりを挟んで閉じた。
「何の本を読んでるんですか?」
「あ、えっと・・・これです。」
本が汚れるのが嫌で付けているブックカバーをはずして、看護師さんに表紙を見せた。
「へぇ、意外ですね。」
「え?」
「あ、そうじゃなくて、翼くんも恋愛小説読むんだなぁって。」
「はぁ。」
そんなに意外だろうか。別に男でも読めるような小説なんだけど、女子の好きなケータイ小説とかと違って。
「弥羽ちゃんとは上手くやってるんですか?」
「何ですかそれ。」
看護師さんの言葉に怪訝な顔になってしまう。
「いえ、大した意味はないのよ。ごめんなさいね。」
看護師さんがそう言うと、丁度俺の脇に挟んであった体温計がピピピと鳴った。
「37.5、微熱だけどだいぶ落ち着きましたね。」
続いて血圧も数値が出る。
「うん、大丈夫みたい。無理しないでくださいね、翼くん。」
「はい、いつもありがとうございます。」
「いえいえ、仕事ですもの。」
そこでフフフと笑って、看護師さんは部屋を出て行った。
うーん恋愛小説以外も読むんだけどなぁ、そんなに意外だったか?
もう一度首を捻ってから、小説の主人公の行方が気になって、俺は再度本を開いた。
鉄格子が嵌った窓から差し込む朝日が、気持ちよかった。
・・・俺は、飛べるんだろうか。
ふと、そう思った。
弥羽は飛べるかもしれない。けれど、
ちゃんとした翼があるはずなのに俺は、
たぶん、飛べないんじゃないか。
・・・そう、思った。
天使のような姿の弥羽はイメージしやすいのに、俺には翼は似合わない。
弥羽が飛んだとしても、俺は、あいつを追えるんだろうか。
それとも、最初に俺が飛ぼうとして、堕ちるのだろうか。
それとも―――
弥羽が、飛ぼうとして堕ちるのだろうか。
あーもう
こんなに早く入院させるんじゃなかった\(>0<)/ (←