■第三章■
「はぁ・・・暇だ。」
改めて自分で呟いてみると、悲惨さが増す気がしてくる。なんという螺旋状況だろう。まったく、自分自身に空回ししてばかりいる。情けない。
病状が少しずつ悪化してきていると検査でわかったため、俺は今入院している。
周りは総てしろ、まっしろ。
病院を表現するとしたら、昔から俺はしろ、と表現してきた。何もかも殺していく、しろ。悪いものも、善いものも、必要なものも、大切なものも。
俺が入院する前日、母親がどこかに電話をかけているのが目に入った。普段より格段に小さな声で話していたため、俺には聞こえなかった。でも、なんとなく弥羽の家に電話をかけているのだと気づいた。そしてその電話の内容も、容易に想像できた。
俺はなんとなく、自分で気づいていた。気づいてしまっていた。
もう、自分の命は長くは持たない、ということ。
きっと、そのことを両親だけに知らされていて、そしてそれを母親は弥羽の家に電話で話していたのだ。
別にもう、覚悟はしていた。だから、俺に直接言ってくれてもよかったのに。
それでも、やっぱり直接聞かせると怖い、そんな気持ちも自分の中にはあって。
その二つの物事が俺の脳内でぐるぐる回って螺旋状に迷宮を作り上げていた。
「暇、暇。・・・もう、慣れたけど暇。」
そう、入院には慣れた。
一人でいることにも慣れた。
暇になるのも慣れた。
―――寂しくなるのも、慣れた。慣れてしまった。
そんな俺の心は、春だというのに、とっても寒かった。
俺の中にある俺の心は、吹雪の中、一人でうずくまっていた。
眉毛と睫毛が雪によって凍っても、うつむいたまま。
俺は、今までそうやって生きてきた。
そう、思っていた。
その考えがなんて幼稚が、その時はわからなかった。気づかなかった。
自分は、幼すぎた。
一人で閉じこもりはじめた時期が、早すぎた。そして長すぎた。
「あぁ、暇だよ。」
自分の声とは思えないほど、自分の声はかすれていた。思わずつばをごくんと飲み込んだ。
ここは、本当にしろだ。まっしろ。
まっしろな世界には、何があるというのだろう。
何を探せばいいのだろう。
誰に探してもらえばいいのだろう。
そもそも、まっしろな世界に俺以外誰かいるのだろうか。
しろ、まっしろ。
ぐるぐると回る螺旋に、春の陽気がプラスされ、俺はだんだんとうとうとしはじめた。
丁度良い、暇なら、寝るとしよう。
悪夢は、見ない。
なぜなら、
まっしろな世界には、天使しかいないのだから。
執筆が遅くなってすみません・・・!
やっぱり、メルマガとの両立って難しいですねぇ・・・(遠い目
春のほうがメインなので、夏のほうはもっと更新速度が遅くなりそうです><