■第二章■
「なぁ、弥羽。」
「うん?なぁに?」
沈む夕日。世界が真っ赤に染まる頃。
俺の少し前を歩いている弥羽は、つま先立ちでブロックの上を危なっかそうに歩いていた。とても、楽しそうに。
「・・・俺、さ。」
「・・・うん。」
「来週からまた入院することになった。昨日の検査で。」
「・・・・・・そっか。」
弥羽は振り向かずに、小さくぼそっと呟いた。
「お見舞い毎日行くからねっ。みかんと、りんごと、なしにぶどう持って行って〜」
「それ、全部秋の果物だぞ。」
「あ、そうだった。じゃ、さくらんぼだねっ」
「それもまだ早い。」
「ぶぅ〜」
二人で空回りする、会話。
刹那、ふわりと風が吹き、桜の花びらが風とともに舞い上がった。
「綺麗・・・」
弥羽の呟きを聞きながら、彼女の視線を追いかける。
しばらく立ち止まって、二人で空を見上げた。
小さい頃から病弱だった俺は、何度も入・退院を繰り返してきた。そのため同級生の男友達と一緒に遊べないし、体育の授業だってまともにでたことがなかった。それが原因でいじめにあったこともあったけど、今となってはいい思い出だ。
そんな俺が今でも休みがちではあるが、学校にちゃんと行けているのは、弥羽のお陰、と言っても過言ではないだろう。そんなこと自分で言えるわけないけれど、彼女には数え切れないほど助けられてきた。
それでも彼女は、俺の入院の知らせを聞くと、毎回悲しむのだった。
まるで自分が入院するかのように。
「だからさ、今週は学校行けるようにするから。」
「本当っ?じゃ、明日迎えに行くね!」
俺がそう言ったら、弥羽は本当に嬉しそうに笑うのだった。
その笑顔は、こんな俺には勿体無さすぎた。
今回はちょっと短めです。