■第十三章■
俺たちは、俺と弥羽は、一人では生きていけない人間だった。
いつも、ずっと二人だった。
笑い合ったときも、泣いたときも、喧嘩をしたときも、怒られるときも。
離れてもいつかはきっとまた一緒にいられると信じていた。
そう、願っていた。
そうじゃないと、生きていくことは、無理だったから。
元気いっぱいの弥羽と、正反対の俺。
お互いに足りないものを補い合いながら、
そうやって今まで二人で歩んできた。
・・・それが、今更片方だけいなくなってたまるか。
そんな、そんな簡単に俺は、
死んでたまるか。
もしも本当に俺の死が近いというのなら、
後わずかの時間を、思いっきり楽しんでやろうじゃないか。
サッカーをしてみたい。
鬼ごっこをしてみたい。
プールで泳いでみたい。
みんなと一緒に走り回ってみたい。
一日丸々薬を飲むのをやめてみたい。
・・・普通の生活を、してみたい。
まだまだ俺はしてないことがたくさんあるんだ。
それなのに、
それなのに、こんなんで死んでたまるか。
それに――――
俺が一人勝手に死ぬなんてそんなの、
―――弥羽が寂しいだけだろう?
残される者の悲しみを、孤独の寂しさを、人一倍理解しているのは俺だ。
あいつを、一人にするもんか。
俺は、誰もいない真っ白い病室で、一人あることを決意した。
窓の外では、春の終わりを告げるかのような嵐の中、雷がゴロゴロと唸っていた。