■第十一章■
「さて、検査の結果がでたよ、翼くん。」
「あ、はい。」
俺の担当医の城山先生が、レントゲンの写真やら、血液検査の結果やら、すぐに結果が出るもののデータが印刷された紙をぺらぺらとめくりながら、俺を見た。
先生の顔は、ものすごく深刻な顔をしていた。
思わず身構える。
「前に、病状に関しては、なんでも秘密にせずに話してほしい、と私に言ったよね。」
「・・・はい。」
「覚悟はあるかい?・・・先に、ご両親にお伝えしようかとも思ったんだけど」
「教えてください。はぐらかすのはやめてください。」
俺は、自分で受け止めてやる。
自分の人生、自分の運命は、自分で。
自分で知らなくちゃいけない。
時には知らぬが仏と言うように、知らないほうが良いことはたくさんあるかもしれない。
しかし、俺は自分のことはちゃんと理解しなくちゃいけない。そう信じている。
たとえそれが、絶望的であったとしても。
「じゃあ、教えるよ・・・」
「お願いします。」
もう一度背筋を伸ばす。診察室内の空気が、ピンと張った。
「残念だけど・・・もしかしたら、夏までもう持たないかもしれないんだ。」
「・・・え」
今、何て。
先生は、目を伏せたまま、ただ首を振っていた。
「そ、そんな。」
思わず、ステンレスの回転イスから飛び跳ねる。
ガシャンとやけにうるさい金属音が、機械的な部屋に響いた。
音に驚いた看護師さんたちが駆けてくる。
俺は、そのまま診察室を飛び出していた。
ただひたすらに、走った。
ただ、一人になりたかった。
そんなありえない絶望的な状況を、
理解するだけの時間が欲しかった。
さっきの少年の言葉が頭の中に響いていた。
俺の病気は、いつ治るんだろう。
もう、治らないのだろうか。
本当に俺はこのまま、
しぬのか。