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「これが採取ポイントね」
と、妹はありがちにキラキラした茂みを指した。
「流石に見れば分かるもん、てかこれって手で取っていいの?」
「鎌とかあるんだけど、採取の違いで出来が変わるほどまだみんなゲーム進めてないし大丈夫だよ。それにここら辺で取れるのって大したやつじゃないし」
そういうものか、と思いつつ摘むような動作をすれば、現実でその辺に生えてそうな緑の長い草の束が2つと斑の入った葉っぱがドロップした。
メニューからアイテム欄を開くと、コモンストローとコモンハーブと書かれていた。
妹に画面を見せれば、コモンストローが家畜の餌で、ハーブはポーションの元だそうだ。
「ねーねー、こんだけintあるんだし倒せるんじゃないの?ゴブリン」
と、メニューを開いた時に目に入った頭の可笑しいステ振りを見て言う。
「ゴブって群れてるから中々難しいと思うよ、ムイは一撃でもあたったら即死亡だし。」
「あーそれは危ない。じゃあ今日は奥まで行かないんだね」
「うん。ある程度お金が貯まったら街戻るよ」
「はーい」
などと喋っていたのがフラグだったのか。
3匹で行動するゴブリンに出会ってしまったのはその数時間後だった。
「お姉ちゃん、とにかくハイド!んで私はアトラクト!」
「あ、うん、ハイド!」
動作登録をしたのに口に出してしまう程度には慌てたが、ヘイトが妹に向いたのを確認して深呼吸する。
ここまでの数時間でお互いスキルレベルが上がったため、同時に掛けた今ちょっとやそっとではこちらに矛先は向かないはずだ。
アースバインドの動作として登録した、杖で地面を叩く動作をすれば、ゴブリンの足元がぐらつき、彼らはたたらを踏んだ。
その隙に妹が剣で切り掛かる。
思えばずっと1匹になっているモンスターだけを狙っていたので、妹が剣を抜くのは初めてかもしれない。
妹がしたいプレイングの為に協力しているとはいえ、少し申し訳ない。
別の個体に向かってファイアボールを打てば、すぐに倒れてくれた。
やはり数の暴力は偉大だ。
流石に一人やられたことでこちらに一瞬注意が向くが、単身飛び込んだ妹の攻撃に対処せざるをえなくなる。
私はもう一度ファイアボールを打ち、妹もほぼ同時に最後の個体を倒した。
「びっくりした!!」
妹はくるっと振り返ると、ぎゅっと私に抱きついた。
「ねー。でも倒せてよかったー」
「ホントにね、切りが良いし、お金も大分溜まったし一回帰ろうか。まだ強制ログアウトまで時間あるけどさ。」
私はそれに頷いた。
「うーん縄張り変わったのかな、ごめんね。」
「ううん、こっちこそ剣全然使ってないよね、ごめんね?」
「えっそれは全然気にしてないよ!私ムイがやらない時に一人であげられるし!大体私がステ振り指示してキャラ育ててもらってるんだし、ホント気にしないで!」
言われてみれば妹はかなりゲーム好きだし、私が他のことに時間を使ってる間に一人でログインくらいはするだろう。青天の霹靂とばかりに慌てて否定しだした妹を分かった分かったと宥めながら、私達は帰路についた。