もう、わけわからんよね?
「じゃ、じゃあ、ゲーム、して、くれるの?」
「そう言ってるじゃねえか。」
あ、ども。やっと話を聞かせることに成功した神楽だ。疲れた。マジで疲れた。
「それにしても、同業だったなんて……。なるほど、わかると『怠惰』のに見えるね。ねえねえ、羽とかどうなってるの!!!僕も見せるからさ!!!」
え、あの敏感なとこ見せんのか?嫌だよ。絶対こいつ、触ってくんじゃん。男の「ひゃん」なんて聞きたくねえだろうに…。
「は?弱点見せろとか…嫌に決まってるじゃないか。」
ウリュリュ
うわ、泣きそう。めんどくさ。泣き止ますの面倒なのに…。
「はいはい、分かりましたよ。見せりゃいいんだろーが…。ほら。」
バサッ!!!
「わわ!!!そうなってるんだ!!!エルフと悪魔かな?僕はね、僕はね、じゃん!!!」
へえ~、なるほどね。こうなってるんだ…。なかなか見る機会ないしな。
「僕は、獣人とフェアリーなんだ!!!ほら、羽!!!トンボみたいでしょ!!!黒色で、透明感のある、自慢の翼だよ!!!」
…………自慢の翼か…、嫌な設定思い出しちまった…。
「へえ~、自慢の翼ね…。むしっていいかい?」
「なんで!?ダメに決まってるでしょ!!!」
「わかってるよ。冗談さ。冗談!!!で?ゲームとやらは何をするんだい?」
さっさと終わらせてさっさと帰ろう。もう、疲れた。寝たい。
「ふふん、僕のスキルで決めるんだ!!!『神さまの言うとおり』!!!」
ほう、そんなギャンブルなスキルもあるのか。
「まあ、僕は全ての遊びを極めたからね。勝ちは決まったものだよ。あ、『ボードゲーム3回勝負』になったみたいだ。」
ボードゲーム…?なんだそれ?
「え!?ボードゲーム知らないの!?チェスとか!!!オセロとか!!!」
「ああ、そういうことか。ボードゲームというゲームかと思った。ん~、どちらかというとビリヤードの方が得意なんだがな…。まあ、チェスも出来るが…。」
「……え?お坊ちゃん?」
なんかその呼ばれ方はムズムズするな。こう、背中を虫に這われているような…。うう、考えるだけでゾクッと来るからやめておこう。
「まあ、いいとこのぼんぼんだろうな。金持ちだし…。」
「ふへ~。まあ、いいや。あ、具体的には【戦争ごっこ】と、【現実なんてクソゲーだ】と、【アイラブパンダ】だよ!!!」
…………………。
「なあ、そのふざけた題名?名前?をつけたのは一体全体、誰だ?ネーミングセンスの欠片もないな。」
「……うえっ、グスッ、欠片もない……ううううう、グスッ。ひうひう、エグエグ。」
いや、お前なのかよ…。欠片もないは言い過ぎたか?
「あ~、ちょっと言い過ぎたな…。欠片もないんじゃなくて……えっと…、このくらいならあるんじゃないか?」
「うううう、やっぱりそんだけしかないんじゃないかあああああああ!!!うわあああああああああああああああああああん!!!どうせ僕なんて、僕なんてえええええ!!!うわああああああああん!!!」
な、なんで泣くんだよ…。親指と人差し指で1㎝くらいを作ってやったのに…。なんで泣くんだ?
「ふっ、うっ、うえっ、この人、もしかして無自覚なの!?余計の太刀悪いじゃないか!!!……え?もしかして素であれだけだと思ったの!?………うわあああああああああああああん!!!もう、やだあああああああああああああああ!!!」
え、えっと、俺が悪いのか…?わかんねえ、ホントにわかんねえ…。欠片もないんじゃないんだから、いいんじゃないのか?ダメなのか?え?え?ほんと、なんで?
「……わりい?」
「疑問形じゃないかあああああ!!!絶対、分かってないよね!?もう、なんなのこの人おおおおおおおおおおおおお!!!僕よりわけわかんない!!!」
あ、自分がわけわからんという自覚はあったのか、こいつ。
「あ~、まあ、なんだ、さっさとゲームしようぜ?」
「ううううううううう、納得いかないけど……はあ、じゃあ先ずはチェスからね!!!」
「あ、ちょっと待った。これって時間制限とかあるのか?」
そこらへんはしっかり聞いておかないと…、時間切れで負けなんてかっこ悪すぎる。
「ん?ないよ。」
「ふむ、じゃあのゲームでゲームが始まる前にそのゲームの説明をしてくれ。隠れ機能みたいなものも。」
そうすれば、情報面ではまあまあ、いけるようになるだろう。情報は命の次に大切なものだからな。
って、誰かが言ってたような気がするって、誰かに聞いたような気がするようなしないような…。
「え~!?隠れ機能は自分で探すから、面白いんだよ!!!あ、でも、他の説明ならいいよ!!!隠れ機能だけは自分でちゃんと見つけてね。」
………まあ、情報がもらえるだけましか…。そう考えたら、別にいいかもな。どうしてもってわけでもないし。
「えっと、僕たちがキングね。駒を動かすんじゃなくて、駒に命令をして動かすんだ。駒には意思がある。本当の戦争と一緒さ。どんな手を使ってもいいと思うよ。王様を打ち取れば勝ち。見た目は駒というより、人間に近いよ。ちゃんと血も流れるし、死にもする。治療すれば治るし、放っとけば最悪の場合悪化する。まあ、王様を打ち取ることを頭に置いておいて。王様を打ち取れば、残っているのが王様だけでも勝ちだから。」
ふう~ん、チェスというより戦争のミニバージョンってわけか…。
「あ、チェスの動かし方は知ってるよね。基本はそれだから。」
………ん?戦争なのに決まったマスしか進まないのか?戦争じゃねえだろ、それ…。
あ、いや、戦争じゃなくてチェスか。じゃあ、それでいいのか…?
まあ、始まったら決まったマスしか進めないのかどうか確かめてみよう。
「白と黒どっちにする?」
「黒。」
「じゃあ、僕が白ね!!!」
あれ?でも、どこでやるんだ?そんなの。ここに無いぞ?
「こうやるんだよ。」パチン
……あれ、指鳴らしたの、絶対にかっこいいと思ったからだ。にしても………
でっけー盤上だな。はは、ご丁寧に兵士まで準備されてら~。
「なあ、お前、絶対チェスが一番好きだろ?」
「うん。なんで分かったの?」
「いや、十中八九『チェックメイト』って言葉がカッコイイから、好きになったんだろうなって思って…。図星?」
あ、耳まで赤くなってる。……やっぱり図星なんだ…。
「うう。それが何だってんだよ…。何か悪いのかよぉ!!!そーだよ!!!『チェックメイト』って響きがカッコイイから好きになったんだよ!!!何か問題でも!?」
おお、こわこわ。別になんも言ってねえのに…。
「いや、べつに?ただ、俺のいとこの友達の、兄弟の友達の親戚の子供のいとこの友達の母親の、嫌いな人の近所に住んでいるおにいさんの友達の、彼女の父方の祖父の飼っているミニチュアダックスの生まれた子供を引き取ったおじさんの、友達の奥さんの妹の息子の友達のはとこの近所のあるコンビニで働いているおねえさんの、友達の弟も同じ理由で好きだったな~。って思っただけだから。」
「それってもう、知人どころか他人だよね!?だいたい、誰だよそれ!?」
「知らねえ。あれ?そもそも俺、いとこいたっけ?」
いなかったような気もするんだよな…。じゃあ、いとこじゃないなら、誰だ?
「そこからかよ!?」
「ごめん。もしかしたらはとこだったかもしれん。いや、父様のはとこの娘だっけ?」
「そんなんどうでもいいわあああああ!!!」
うん、よくあるよね。又聞きって。で、そのほとんどが、あったこともない他人の話だよね?




