37話 悪戯! 白兎!
ユキユキが塔で暮らすようになってから早一週間が過ぎた。
最初こそ紆余曲折あったが今ではすっかり馴染んで
「ちょっとユキユキ! あんたまたあたしのぱんつ盗ったでしょ!」
「ウサー!? 透け透けおぱんつのシィナが来たウサー!!」
「あああああああぁぁぁぁ!!!!!?? 絶対仕留めるわ! 今日の夕飯は兎肉よ!!!」
馴染んで……
「ユキユキさん! わたしが楽しみにしていたプリン食べましたね!! せっかくホシミさんが作ってくれたのに……許しません、 さぁ吐きなさい今すぐに!!」
「いつまでも食べないココノハが悪いウサ! いったい何日冷蔵庫に置いておくつもりウサ!?」
馴染ん……
「ホシミ様……折り入って御相談がありますの。その、最近ユキユキちゃんが会うたびにわたくしの胸を揉んできまして……。わたくしの身体はホシミ様の物ですので、毎回揉まれるのはちょっと困りますの……」
「……そうか、困っているなら注意はしておくが、あまり期待しないでくれ」
「はいですの。お手数おかけ致しますわ。お詫びにわたくしの胸でマッサージして差し上げますわね」
そう言って抱きついて胸を押し当ててくるリア。柔らかいリアの胸の感触を味わい、癒されながらただ思った。
「(悪戯し過ぎだろうあの兎)」
最初の一日こそ大人しかったが今では日に一つは何かしら問題を起こす。問題と言っても些細なもので、ちょっとした子どもの悪戯程度のものだ。
シィナは一番悪戯の被害を受けているだろう。中でもよく下着を盗られているようだ。お洒落好きなシィナは一番多くの種類の衣服を持っている。下着にもそれは表れているようで、わざと見せる為のものから大事な部分が全く隠れていない下着としての用を成していないものまで多岐に渡る。
ユキユキには新鮮なのだろう。服にあまり頓着しない性分だった彼女は感銘を受けたようで、自身を着飾り魅せて意中の人を落とす服……要するに下着にお熱なのだ。
ただ、下着に興味は湧いたものの衣服自体にはあまり興味はないらしく、匂いが気に入ったからという理由で用意した服ではなく私の上着だけを着ていることが多い。
ココノハはあまり被害は無いようだが、甘いものが好きな彼女は食べるのを最後の最後まで取っておく癖があった。取っておきすぎて傷む手前まで行ってしまうことも多々ある。
ユキユキはそんなココノハの感覚が理解出来ないのだろう、食べないのなら悪くなる前に食べてあげようと思ったのである。
……これに関してはココノハも悪いと思う。言ってくれればいつでも作るのだから遠慮せずに食べてくれると良いのだが───癖が治るまで時間が掛かりそうだ。
リアは……。うーむ、悪戯にしては可愛いレベルだと思うのだが。ユキユキとは同性であるから胸を揉まれるのは問題は無いだろうが、リアが困ると言うのなら止めるか控えるよう注意をしておかないといけないだろう。
私に関しては被害はほぼ無い。……朝起きたら上に乗って眠っていたり、胸に頬擦りされてたりするくらいか。最近は少し物足りなくなってきたのか服の中に頭を突っ込みはじめた。そのせいで寝間着の上着が変に伸び始めている。
総じてユキユキの行為を見てみると、人に構ってもらいたいという欲求があるようだった。人との触れ合いを求めながらも、やり方が分からずつい悪戯をしてしまう……。
私にはユキユキは寂しがりやでただの不器用な娘に見えた。
「シィナ怖いウサ! 助けてウサー!!」
どうやらこちらへ逃げてきたようだ。目の前がリアで包まれているからまったく見えないが、足音が聞こえる。追っているのは二人分の足音……シィナとココノハか。
「待ちなさいユキユキ! ココノハ、そっち頼んだわ!」
「了解です! ふっふっふ、さっさと観念するんですね!」
「ちょっと待つウサ! その縄はどこから出したウサ!?」
「問答無用!!」
「兎、確保ーー!!!!!」
「ウサぁぁぁぁああああああああ!!!!??」
リビングをどたどた走り回る三人だったが、長い攻防の末にようやくユキユキが捕らえられたのだった。
という訳で現在、目の前にはユキユキが縄に縛られて正座している。
シィナとココノハはその左右に立ち、逃げ出さないように監視していた。
「ホシミさん、今日の夕飯は兎肉を使いましょう。この生意気な乳肉をふんだんに使ったリゾットが食べたいです」
「ウサ!? 私は食べられないウサよ!!?」
「じゃああたしはこの尻肉を使ったシチューが良いわね。弾力あるし、じっくり煮込んだら美味しくなりそうだわ」
「食材は嫌ウサぁぁぁああ!!!! 御主人様助けてウサ!!」
不気味な笑みを浮かべているシィナとココノハの圧力に気圧されたユキユキは涙ながらに私に助けを求めてくる。
「はあ……。私に人肉を食べる趣味は無いぞ」
取り敢えず助けてやるか。食材になるのは流石に無念だろうし。
「まずはココノハ。あれはお前も悪い。いつでも作ってやると言っただろう、毎度傷む直前まで取っておかれると作っている方としては不安になる」
「う……」
ココノハは言葉に詰まって目を泳がせる。
「シィナは、まあ……一番被害に遭ってるしな。食材にする以外でお仕置きするで良いんじゃないか」
「……あんたがそう言うならそれで良いけど」
シィナは不承不承と言った感じではあったが、やり過ぎたとも思ったのだろう納得してくれた。
「ありがとうウサ〜! 御主人様が居なかったら私はここで食べられてたウサ〜!」
最後は半泣きのユキユキだ。
「これに懲りたら悪戯は控えるのだな。何度も助けてやれないぞ」
「ううっ……」
手足を縛られた状態でなんとか身を捩りながら私の胸に顔を埋めるようにもたれ掛かってくる。少しだけ乱暴に頭を撫でてやりながら、クルルのところへ相談に行こうかなと思うのだった。
なお。
お仕置きはお尻ペンペンだった。
百叩きくらいはしたのではなかろうか。
その夜、お尻が痛くて眠れないと半泣きでやって来たユキユキの尻を夜通しさする羽目になるのだが……。そのまま流れで交わることになったのはご愛嬌である。




