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悪魔のささやき


「外堀から埋めてゆくことにした。何、元々さしたる障害はない。フラウはいつも通り私の側で赤くなってればいいよ。」


帰りの道中、ぐらんぐらんと揺れる馬の上でしっかりと腰を抱かれた私は、ラファウ様の言葉にやはり顔を赤くさせていた。


赤くなっていればいいだなんて、他人事みたいに!


色素が薄い肌はそうでなくても他人に比べて赤みが目立つ。別に好きで赤くなっているわけではない。ラファウ様のせいで赤くなるのだ。ああ、恥ずかしい。

ちょっとした非難を込めてフードの隙間からラファウ様の顔を見上げると、前を向いていたラファウ様は私の視線に気づいてふっと笑う。その笑顔がとても甘くて優しくて。私はう、と声を詰まらせて、やはり顔を赤くしてしまうのだった。


「フラウには悪いが、これから頻繁に被災地の視察に同行してもらう。被災者にフラウのことを印象付けたい。名実ともに復興のシンボルとなればもらいものだ。」


「あ・・・それでミレー伯爵にあんなことを?」


「それもなくはないが・・・あの狸は内堀用だ。」


よくわからず首をかしげる私に、そのうちわかる、と笑うラファウ様。

にしても、純粋に被災者に心を痛めて視察しているだけかと思いきや、ちゃんと他の思惑もあって、さすが王太子というかなんというか。

でも、どんな思惑であれ、ラファウ様と一緒に居られる時間が増えるのは朗報だ。被災者に会いに行くというのに、下心満載の私も大概だなと、思わなくもないけれど。


せめて、お役に立たないと。

ラファウ様にも、そして民にも。


そんなことを考えていたら、あっという間に城門前に着いてしまった。

城と被災地との距離が近いので仕方がないことだが、もう少しラファウ様とこうしていたかった。いや、私の痛むお尻的には、早く馬から降りたいけれど。

何かを得ようとすると何かを失わねばならないのねと、眉をしかめながら、最後の足掻きとばかりにラファウ様にきゅっとしがみつく。

城門をくぐるために外套のフードを背中に流して夜空色の髪を露わにしたラファウ様は、私の足掻きに気づいて腰をぎゅっと抱きしめてくれる。

ああ、私はなんて幸せ者なのだろう。

油断するとにやけそうになる顔をラファウ様の胸に押し付けて隠しながら、悶絶する。

そんな、門をくぐり立ち止まった私達の側を、一頭の馬が横切る気配がした。


「邪魔」


顔は見なくても声でわかる。ヘリオス様だ。

私は慌ててラファウ様の胸から顔を上げて、腕をつっぱりラファウ様と距離をとる。ヘリオス様はすでに私達の先で馬を降り、出迎えに来ていたローバンと話をするところだった。


「あ、の、すいません」


ラファウ様に向かって謝れば、きょとんとした顔のラファウ様が、小首を傾げる。けれど特に気にしないことにしたのか、優しく笑うと、胸についた私の手を馬の背に移動させて、自分はひょいと軽い身のこなしで地面に着地する。ついで、私に手を伸ばし、脇を掴んで地面に下ろしてくれた。

まるで子供のような扱いに少し恥ずかしさを覚えるが、馬に乗れない私が悪い。

近くにいた兵に手綱を預けると、さっと自分の外套を脱ぎ、そしてさも当たり前のように私の外套に手をかける。

それに慌てた私は思わず外套の襟ぐりを手で掴んで、ラファウ様に抗った。

さっきは突然のことで対応できなかったけれど、今回は違う。侍女にならまだしも、大人の男の人に、ましてや王太子様に外套を脱がせてもらうなんて、ちょっとどころじゃなく恐れ多くて勘弁願いたい。

ラファウ様を見上げて焦ったようにふるふると首を横に振れば、ラファウ様は一瞬眉をしかめながらも、すぐに外套から手を離してくれた。その隙にさっと外套を脱ぐ。

満足気に、何気なくラファウ様を見上げると、心なしかその目が餌をもらえなかった犬のように見えて、何故だか罪悪感が湧き起こったのだが。


いえ、私は何も悪いことはしてない、はずよ!


自分に言い聞かせてヘリオス様達の方へ足を向けた。そこには、心底嫌そうに眉をしかめたヘリオス様と、軽く目を瞠ったローバンがいて、何だかバツが悪くなったのだけど。


「これは・・・驚いたな。」


「視察の間中これを見せられた俺を憐れんでくれ」


「・・・何もそこまで。いつも夜会で見慣れてるだろう。」


私の隣に並んだラファウ様が、眉を寄せて言う。

ちなみに、夜会で見慣れているのはラファウ様と私のやりとりではなく、ラファウ様と彼を取り囲むご令嬢との、という意味だ。なんせ私、夜会では専ら壁の花で、ラファウ様との接触は自ら避けていたのだから。それが短期間で視察限定とはいえ公にいちゃつける仲になって、プロポーズまでされてしまうなんて、なんて急展開。


「寝ぼけたこと言ってないで、早く起きろ。そして、自分の顔を鏡で見てみろ。」


ヘリオス様に睨まれたラファウ様は、片手で自分の顔を触りながら、小首を傾げる。

その様子にさらに眉間の皺を濃くしたヘリオス様は、付き合ってられるか、とローバンの横を通って城内に足を向けた。

が、すぐにぴたりと止まる。

不審に思い、ヘリオス様を釘付けにする視線の先を辿る前に、ローバンから彼に似つかわしくない焦りを伴った声が呟かれた。


「ナディア」


その名に、思わず体を硬くさせてしまう私。

急いで目を凝らせば、開け放たれた城内へと続く扉の側に、ポツンと佇むナディア様がいた。その姿は、いつものように自信に満ち溢れてはいなかった。どこか儚気で、倒れてしまいそうな弱々しさで、その目には・・・


・・・涙?


瞳に溜まった涙が溢れて頬を伝う。その感覚に驚いたように、はっと息を飲んだナディア様は、慌てて片手で口元を隠し、逃げるように体を翻して扉の陰へ隠れてしまった。

突然の光景に驚き固まっていることしかできない私と違って、すぐに体を翻したローバンは、誰にも言葉を発する隙を与えない身のこなしでナディア様の後を追いかける。その姿はあっという間に扉の影に隠れて見えなくなってしまった。


残された私達の間には、何とも言えない重い空気が立ち込める。

私は気付かれない様にちらりとラファウ様を横目で見た。体の横に下ろされている手は、何かに耐えるようにぎゅっと握られていた。


ラファウ様は、ナディア様のことをどう思っているのかしら。


私にプロポーズしたラファウ様。でも、ナディア様との婚約は未だ解消されていないはず。かといって、ラファウ様が私とナディア様の二人の令嬢との婚約状態を続けられるほど薄情な方ではないと、信じている。


でも、幼い頃から仲が良い婚約者だもの、全く気持ちがないといえば、嘘になるのではないかしら・・・


ここへきて、またもや不安が胸をもたげる。いい加減、プロポーズされておいてこんなネガティブな考えがよぎる私にもうんざりするのだけれど。

けれどそんな私の心配をよそに、最初に沈黙を破ったのはラファウ様だった。


「ナディアのことは、ローバンに任せよう」


それはヘリオス様に向けた言葉か、はたまた自分自身に言い聞かせたのかはわからない。

けれど、気を取り直したように私の手にあった外套をさりげなく受け取ったラファウ様とその言葉に、幾分気を良くした私は、心にもないことを口にする。


「・・・よろしいのですか?」


けれど言ってから、すぐに後悔した。

こんなの、偽善者だ。

ここでラファウ様が、よくない、と答えてナディア様の後を追えば、私はきっとナディア様に嫉妬する。なのにこんなあたかも私は大人です、みたいな態度。

私は慌てて首を横に振って、今の言葉を訂正した。ラファウ様の前で、嫌いな自分にはなりたくないのだ。


「いいえ、今のは、なし、です」


見た目も、性格も。何の取り柄もない私。

だからせめて人となりだけは、誠実で、そして発する言葉は正直でありたい。


エレオノーレがやってきてから、彼女の容姿と聡明さに自分を比べて落ち込んだ。

ナディア様と出会ってからは、自信に溢れた彼女の内面の美しさと、誰もが認めるであろう女王としての気質に、勝てるはずがないと一時はラファウ様を諦めることを考えた。


だけど、諦められなかった私。

そして、そんな私を選んでくれたラファウ様。

そんな私ができることといえば、ありのままの私に胸を張ることだけ。


「ナディア様を追ってしまわれたら、私はきっと、嫉妬します。」


そう恥を忍んでぽつりと呟けば、ラファウ様が優しく肩に手を回してくれる。


「いや、私が悪い。君もナディアも、傷つけまいとした私の弱さが、君を傷つけている。」


そう、ラファウ様にとっては、幼馴染であるナディア様も大切な存在なのだ。だから、仕方がない・・・


そう、割り切らなくてはと、決意を胸に、けれどそれは難しいだろうなと複雑な表情をする私に、ぼそっと呟いたヘリオス様の声が届いた。


「そこは絶対に、俺にはお前だけだ、だろ」


ヘリオス様の男前・・・!







さて、その後幾日か過ぎた。

ラファウ様の視察についていくことが決まってから、何度か同行する機会があった。

さすがにヘリオス様にも伝えられていたようで、ようやくそれなりの準備をもって視察に迎えられることとなった。

ただ、問題があるとすれば、男性としてヘリオス様に一目置きだした私に、ラファウ様が不機嫌を露わにすることだろうか。別に、ヘリオス様のことを恋愛対象として見出したわけでは決してないのに。ただ、女心をわかっているなと、あ、いえ、ラファウ様が女心がわからないと言っているわけでは。・・・いえ、嘘はいけませんね。

でも、そんなところも含めて好きなので、全く問題ありません。


あら、何の話だったかしら。


ああ、そうだ。

エレオノーレともちゃんと話をした。

曰く、イズルードには気をつけろ、と。


いや、おかしいでしょう。

イズルードを連れてきたのは貴女だからね。

我が妹ながら、考えていることがさっぱりわからない。なかなか聡明だと思っていたけれど、違うのかしら?それとも、私には想像つかないほど先の展開まで読んで行動してるのかしら。

何はともあれ、怖いわ。


イズルードには、勿論言われなくても気をつけている。

婚約の件についてきっちり話をしないといけないのはわかっているのだが、どうにも顔をあわせると距離を詰められるのが頂けなくて、それ以来ひたすら避けることにした。

私の何がそんなに良いのか、はたまた過去女性に事欠かなかった彼のプライドが許さないのか、理由はわからないが、とんでもない執着心だ。しつこい男は嫌われると習わなかったのか。

それに、下手に相手をして端から見たら仲の良いところをラファウ様に目撃されたくない。あと、ナディア様を始めとする、ライバル方にも。


と、いう訳だったのに。

不覚にも最悪の状況に陥っている現在の私。

確かに、先日図書館に歴史書を返しに行く際にばったりと出くわして、まずいな、とは思っていたのだ。その時は何とかあしらって逃げたけれど、やはりばれていたか、私が図書館に通いつめていることを。


ここは最悪だ。人気が少なく、薄暗い。あと、ナディア様との遭遇率も低くない。とっとと用事を済ませて逃げるに限る。


私は横から掛けられた声に振り向くこともせず、目の前の歴史書の背表紙に指を漂わせ、お目当の年代を探すことに集中した。

今日は特に用事がなかったし、明日はかねてより招待されていたマルバラフ王国王妃の没後20年の追悼パーティの日。明日は忙しくなるだろうから、今日は部屋にこもって1日読書に費やす気で、髪も梳かしただけで結いもせずに背中に流してある。

誰にも会う気はなかった。勿論、イズルードなんて以ての外だ。


「最近随分冷たいなぁ。僕とフラウの仲じゃないか。」


目の前の段にさっと目を走らせるものの、この辺りに置いてある時代の本は既に読んでしまっているか、もっと掘り下げて書かれたもののようだ。

とりあえず歴史の概要を知りたい私は、次の時代を、と思い、隣の棚の上段に目を向ける。


「・・・。」


「欲しいのは、これかい?」


ちょうどイズルードの頭の近くにあった本に視線を向ければ、彼は目ざとく気づいて私が何を言うよりも早く軽々と歴史書を棚から抜き取り差し出してくる。


「・・・ありがとう」


私はそれをしぶしぶ受け取る。

が、差し出された本は、私の手に乗る直前でひょい、と遠ざかってしまう。


「な、イズルード!?」


びっくりして見上げると、おかしそうにケラケラ笑うイズルードの顔。

私は思わず顔を真っ赤にして、けれど図書館ということで、声は最大限に落として抗議した。


「何子供っぽいことしてるのよ!早く貸して!」


「嫌だ・・・って言ったら?」


「・・・帰る」


今日はせっかく部屋にこもって読む気満々だったのに。このまま何も借りずに図書館を後にするのは結構辛い。

けれど、イズルードとこれ以上一緒にいるのはもっとまずいから仕方がない・・・


そう仏頂面でイズルードの隣をすり抜けようとすると、彼は慌てて本を差し出してくる。


「ごめんごめん!子供っぽいことして悪かったよ!君には・・・」


本を受け取ろうとした私の腕は、あっという間にイズルードに捕まって本棚に押し付けられた。


「こういう大人の対応じゃないと、意識してもらえないんだった。」


僕としたことが、うっかりだね、と冗談交じりに笑うその瞳は、ちっとも笑っていなかった。

胸が、ぞくり、とざわめく。

この状況は、非常にまずい。

けれど幸い、イズルードに掴まれていない方の腕は自由で、一方彼の手には分厚い歴史書が握られている。いざとなったら、なんとかして逃げられるはずだ。多分。

私は胸のざわつきを抑えて、努めて冷静にイズルードを見返した。


「何の御用かしら、イズルード。」


そんな私を見て、イズルードはくすりと笑う。


「ようやく話をする気になってくれたみたいで嬉しいよ。」


「初めは話をする気だったのに、貴方がこうして余計な接触をしてくるから、話す気が無くなってしまったのよ。」


「でも、こうして捕まえていないとフラウはすぐに逃げてしまうだろう?二年前のように」


そう言われて、思わず言葉に詰まってしまう。

二年前、マルバラフへの留学を理由にイズルードとの婚約破棄を願い出たのは、父の独断であった。けれど、私はそれに反対しなかった。イズルードとは幼馴染で仲は良かったけれど、お互い特別な感情を抱いていたわけではなかったし、女性から人気のあるイズルードならすぐに、私よりも素敵な婚約者が見つかると思っていたのだ。

なのにイズルードは、この二年の間に結婚しなかったようだ。そして今更、私の婚約者だと言ってメシアにやってきた。


「貴方、エレオノーレと組んで何を企んでいるの?」


「別に、エレオノーレとは利害が一致しただけで、組んではいないさ。」


「じゃあ、何を企んでいるの?」


「・・・教えて欲しいかい?」


イズルードの瞳がにいっと細められて、私は思わず眉をしかめた。

昔から、この顔をするときのイズルードはひどく意地悪なのだ。


「いらないわ」


私が間髪入れずに答えると、イズルードが、あれ、何でばれちゃったかな?と笑う。


別に、悪い人ではないのだ。勿論、イズルードのことが嫌いなわけでもない。

ただ、好きでもない人に恋人のような距離感で接せられるのが抵抗があるだけで。

これがラファウ様なら、胸がドキドキと高揚して、もっと近づきたいと思うだろうに。


思わず、はぁ、とため息をつくと、イズルードがじっと私の目を覗き込んだ後、笑いを引っ込めて真剣に語りかけてくる。


「そんなにあいつがいいか?」


あいつ、と言われて、一瞬きょとんとするけれど、すぐにそれがラファウ様の事だと気づいてぽっと顔を赤らめる。

それを肯定と捉えたのか、イズルードは深々とため息をついた。


「あれのどこがいいんだか」


「なっ!ラファウ様は素晴らしい方だわ!王太子としても、人としても!」


ラファウ様がどれほど心優しく責任感のある方か、語ってあげたほうがいいかもしれない。そうすれば、決して、あれ、だなんて呼べなくなるだろう。


そう息巻いていた私に、イズルードの瞳が怜悧な光を帯びる。


「二股かけられてるのに?」


その言葉は、興奮して心の鎧を外しかけていた私に見事にぐさりと刺さった。

思わずイズルードの瞳から目をそらす。


「・・・いえ、いえ、それは違うわ。ナディア様とは、確かにご婚約なさっているけれど、いつか解消してくださるはずよ。」


言いながらも、自分の言葉に疑問を感じる。

その疑問を、聞きたくないその言葉を、イズルードは私の心を覗いたかのようにずばり言い当ててくる。


「へえ?それはいつのことだい?あいつがそう言ったのか?僕にはどうしても不倫中の男女の戯言にしか聞こえないけどなぁ。ほら、よくあるだろう?奥さんと別れてよ、ああ、もうすぐ離婚する予定だよ、ってね。でも大抵男には離婚する気なんてないらしいけどね。」


「や、めて」


そんなの、聞きたくない。

私は、ラファウ様を信じている。

プロポーズまでされたのだ。そもそも、結婚する気がないのなら、今までのように公にせず、ただ隠れて付き合っているだけの状態の方が好都合なはずではないか。

そうだ、その通りだ!


光を取り戻した私の目を、けれどイズルードは、冷え切ったアイスブルーの瞳で斜め上から見下ろしてくる。いつの間にか私の自由だった片手は、分厚い本を持っているはずのイズルードの、唯一自由な2本の指のみで本棚に拘束されていた。


「明日のパーティーで」


抵抗を見せた私の動きを、イズルードが言葉で封じる。


「結婚発表が行われるって噂だね。相手はナディア・オルブライト・・・」


その噂なら、私も何度か耳にしている。長い間婚約状態だったラファウ様とナディア様が、ついにご結婚される日が発表されるのだとか。

けれど、噂なんて大抵が当てにならないし、そんなことあるはずがないと、気にもしていなかった、はずだった。


突然、頭の中に過去の光景が湧き上がる。

私を挑戦的に見つめるナディア様。

私に対して、本気になるとおっしゃった。

そして、もうすぐラファウ様と結婚する予定だとも。

執務室から聞こえてきたのは、ナディア様の声。

動き出した歯車は止められない。誰もが不幸になるとしても。

不幸になるって、なんのこと。

誰が、不幸になるの?

視察から帰ってきた時、涙を流したナディア様。

あの涙は、何を思って流されたのか。

そして、それを見て自分の感情を必死に抑えるように手を握りしめたラファウ様の、本当のお気持ちは?


イズルードの瞳がにいっと細められる。

だめ、これ以上、彼の言葉を聞いてはいけない。

心は警鐘を鳴らしているけれど、私は彼を拒めずにいる。


「本命は、彼女だったってわけだ。フラウ、君ではなく、ね。」

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