07話.火種との遭遇
そのうちイラストを追加予定です!
それと、やっと更新出来ました。
ローラとミリーは、夜更けまで楽しく話をしていた。
朝日が辺りを照らしてくる。
その光に暫しの沈黙が流れ、ミリーはあくびをした。
「まだ話をしていたいけど…。
流石にそろそろ寝なくちゃ。」
そうミリーがローラに告げると、ローラは一旦住処に帰ると言って、湖の中へと潜って行った。
それを手を振り見送るミリー。
「お友達が出来ちゃった!」
嬉しそうに両手を挙げて笑うミリー。
そうして、明るくなってきた空を見上げると、辺りを見回した。
ミリーは手頃な木を見つけると、その木に寄り添って、深い眠りへと落ちていった。
念の為に、結界をオートモードにして。
ミリーが深い眠りに付いていると、突如として、頭の中で警戒音が鳴り響く。
重たい頭を動かせて、空間に意識を集中させると、ミリーの半径10m以内に2人の人間の反応があった。
太陽の位置を確認すると、丁度お昼ぐらいの様だった。
(何でこの森に人間が…?)
そう、魔物が現れてから人間は、不用意に村や町等の集落から出る事はなかったのだ。
ましてや、この森の湖には、先ほどミリーが友達になったローラがおり、人間どころか他の魔物すら下手に踏み込む事はなかったのだ。
ローラが生気を得る為に、わざわざ村から人間を招く事もあったが、それは人間の様に毎日必要な訳でも、得なければ死ぬといった事も無いのだ。
仮にローラが呼んでいるとしても、そんなに毎日毎日呼んでいれば、それは周りの人間達も不審に思って、その村人を隔離したりしているだろう。
それが無いということは、昨日生気を得ていたローラが、今日も人間を招くとはとてもじゃないが思うことが出来なかった。
まして、ローラも今は湖の底で眠っているはずだ。
ミリーは首を傾げると、透明化して様子を見ることにした。
暫くすると、1人の男性が湖までやって来た。
その姿は昨日ローラが抱き合っていた、男性に似ていた。
男性は湖に着くと、キョロキョロと辺りを見回した。
どうしたんだろう?と、首を傾げるミリー。
(あれ?
そう言えば、2人の反応があったけど、もう1人はどこなんだろ?)
ミリーは疑問に思い、再度辺りの空間に意識を集中させた。
すると、男性が来た方の木の陰に、1人の人間の反応があった。
とりあえず様子を伺うべく、ミリーは透明化したまま木の陰にいる人間のところまで飛んでいった。
木の陰の側まで着いたミリーは、そこにいる人物に視線を向ける。
そこには、男性に真剣な眼差しを送る、素朴な女性がいた。
ミリーがその女性をまじまじと観察していると、湖に居た男性が、大声を出した。
「何処におられるのですか、僕の愛しい人!」
いきなりの叫び声にびっくりするミリー。
それを聞いていた女性は、隠れ蓑にしていた木の皮をむしりそうな勢いで、両手で木に爪を立てていた。
そうして、何かを決心したのかいきなり湖まで駆けていく。
その顔はけたたましく怒りに満ちていた。
ミリーはその光景をボーゼンと見守っていたが、女性に負けじと湖まで音を立てずに素早く向かう。
湖のそばまでたどり着いた女性は、けたたましく男性に怒鳴り立て始めた。
「一体全体、僕の愛しい人って何のことなの!?
何をこそこそと、村の外どころかこんな森の中までやってきて!
おかしいと思っていたわ!
たまに黙って消えたかと思ったら、心ここにあらずなんですもの!!
貴方は私の旦那なのに、こんな所で浮気をしていたっていうの!?
相手は何処の誰よ!!」
そんな女性の怒鳴り声に、引きつった顔の男性がしどろもどろとしている。
はっきりしない男性を見て、女性は男性の腕を掴むと、引っ張り出していた。
「さぁ、早く帰って詳しい話を聞かせて頂戴!
私って人がありながら…っ。
浮気をするだなんて、信じられないわ!
隣に住んでる両親にも、一緒に話を聞いてもらいますからね!!」
また吠え出す女性にうんざりとした男性が、少し引きずられていたかと思うと、ピタリと止まる。
女性はこれでもかと引っ張るが、力が叶わぬ様だ。
そうして、男性が唾を吐いて女性を睨む。
「もう本当に止めてくれないか?
君のことは、元から愛してなんかいなかった。
あの村には、僕と君以外に若者なんていなかったしね。
仕方ないだろ?
周りが勝手に結婚を決めて式まで…。
僕が今までどれだけ苦しんだと思う?
でも、今やっと、僕には美しい女神が現れたんだ!
君なんかと違ってとっても美しい、愛しい女神がね!」
男性は言葉の最後の方には、睨んでいた瞳が輝きに満ちていた。
それとは裏腹に、女性は顔を真っ赤にして、瞳を涙でいっぱいにした。
それでも、何かにすがる様な瞳で、男性を見つめる。
すると、辺りの空気がざわつき、静かだった湖の水面が揺らぎ出した。
そうして、ゆっくりと綺麗な金髪が湖の中から出てきたと思うと、美しい顔を少し歪めたローラが顔を出してきた。
口元に手をおくと、軽くあくびをして、声が軽く漏れる。
「妾の眠りを邪魔するとは…。」
ピリピリと空気がざわつくのが肌に感じ取れる。
そうして、寝起きで不機嫌そうなローラが、目の前にいる男女へと目を向けた。