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04話.初めての異変


空から見下ろす景色に、懐かしさを思い出す。

ミリーは、景色を楽しむと、自宅周辺から周る事にした。

丁度、空を飛んでいるところで、隣の家のアーサが、歩いているのを見つけた。

今日もまた、昨日と同じ様に行動をするのだろう。

ミリーはアーサから視線をそらし、辺りを見渡す。

すると、仲良く畑で作業をしている老夫婦を見つけた。

2人に見つからない様に、建物の影から地面に足を着ける。

そして、一息呼吸をすると、ゆっくりと老夫婦の元へと歩き出す。

老夫婦は、芋の収穫をしている様だった。

畑に足を踏み入れるのは、悪いと思ったミリーは、畑の手前で老夫婦に話しかける事にした。


「ミリーって言います。

この、ローシャ村の外れに住んで居るんですが、私の事を知っていますか?」


それは、昨日と何ら変わりのない言葉。

そして、ミリーの精一杯の言葉だった。

ミリーの言葉に、作業をしていた手を休めて、ミリーに視線を合わせる老夫婦。


「これはこれは、可愛らしいお客さんだ。」

「そうだねぇ、でも今は収穫で忙しくて、お話する余裕がないんですよ…ごめんなさいねぇ。」


そう言うと、ミリーの返事を待たずに、老夫婦は作業を続けた。

ミリーは老夫婦を見つめて、此方に感心が無い事を確かめると、ぺこりとお辞儀をしてその場を去った。


また、建物の影から、辺りを見回して、人目が無い事を確認してから、ミリーは空中へと舞い上がった。

上空へと進んで行くと、1人の老人が歩いているのが目に飛び込んできた。

歩いて行く地点から近くて、地面に降りるのに見つからなさそうな場所を、辺りを見回して探し出す。

小屋と木で、影になっている所に降りると、そのまま先ほどの老人がいた場所へと歩き出す。

たどり着くと、少し離れた場所に、先ほどの老人がいるのが見えた。

そのまま老人の所まで行って、今までと同じ会話をする。


「ミリーって言います。

この、ローシャ村の外れに住んで居るんですが、私の事を知っていますか?」


景色を見ながら、歩いていた老人が、ゆっくりとミリーに視線を合わせる。

そして、微笑みながら返事を返してきた。


「今日は良い天気だー、ばーさんも一緒に散歩に誘ったんだがなぁ…。

家の掃除があるとかで、断られてしまったよ…勿体無い。」


そう言い終わると、また景色へと視線を戻していた。

返事を返してしまえばもう、ミリーのことはなかった事にされている様だ。

そんな様子を見て、この人もまた、自由にはなっていない事に気がついたミリーは、景色へと視線を戻して、ミリーを見ていない老人に、ぺこりとお辞儀をして、その場を立ち去った。


(家の中にも、人がいるって事が分かったし、1つ情報収集できたかな…。)


前向きに考え様とするミリーだったが、まだこの時点で、大事なことに気づいてはいなかった。

その事で、後になって泣く事になるとは思ってもいなかった。

かと言って、気づいていたとしても、その結果には違いはなかったであろう…。


ミリーはまた、来た道を戻って、小屋と木の陰から空高く舞い上がる。

近くに人がいないか、家がないか。

そうして少し進んだ先にある、畑に1人の老人がいるのが見えた。

段々と慣れてきたミリーは、建物の影から地面に降りると、そのまま先ほどの畑の前まで歩いて行く。

畑の前に立ち止まると、今日最初に会った老夫婦に話かけた様に、畑に入らずに声をかける。


「ミリーって言います。

この、ローシャ村の外れに住んで居るんですが、私の事を知っていますか?」


芋の世話をしていた老人は、ミリーに話しかけられると、一旦手を休めてミリーに視線を合わせる。


「この畑は、私の大事な子供たちなんだよ…。

しっかり育ててあげないとね。」


そう言い終わると、ミリーの事を忘れたのかの様に、また芋の世話へと戻る老人。

この人もまた、自由を奪われたままなのだ…。




ミリーは一旦、休憩をしようと大きな木の前までやって来た。

久しぶりに色々としすぎたのと、頭が追いつかないのとで、今後の為にも一旦休憩を挟む事にしたのだ。

大きな木に背中をピタリとくっつけて、座り込んだ。

持っていたポシェットを、草の上に乗せて、中から水筒と、葉っぱに包んだ干し芋を取り出した。

ハーブティーを飲みながら、ゆっくりと干し芋を食べる。

噛めば噛むほどに、干し芋の甘さと素朴な味わいが広がる。

干し芋に水分を奪われたところに、ハーブティーで一息。

爽やかな香りが吹き抜け、心がゆったりと余裕を取り戻す。

ゆっくりと目を閉じていくと、今までの疲れが押し寄せてきたかの様に、ミリーは眠りに落ちていった。




ミリーが目を覚ますと、辺りは薄暗くなっていた。

眠っていた事に少し後悔したが、また明日頑張ればいいと、自分に言い聞かせて家へと帰ろうと立ち上がった。

そして、軽く地面を蹴り上げて空を飛ぶ。

昼間と違い、体に吹き抜ける風が少し冷たい。

家へ向かって、飛んでいると、1人の歩いている人物を見つけた。

長身で、赤っぽい茶色い短髪の男性だ。

あの赤っぽい茶色い髪には、見覚えがある。

そう、それは昨日話をした、隣の家のアーサだ。

でも、何かがおかしい。

昨日も家に帰る所を見たミリーだか、何故か疑問に思った。


(昨日話をして、今朝も見かけたけど…。

何だろう?何か腑に落ちないな…。)


そう思いながら、フェリーシャの待つ家へと歩いて行くアーサを、空から見ていた。

…確か昨日会ったのは、あたしがフェリーシャに話しかけて、自由になっていなかった事を知り、泣き止んだとき…。

そして、立ち直ったところにアーサがやってきて…。

そうそう、あの赤っぽい茶色い髪が、夕陽に透けて、赤みを帯びていたの!


(そうだ…。)


ミリーは気づいたのです。

昨日アーサに会ったのは、夕陽で空がオレンジ色になっていた時だった事に。

昔なら、皆が自由に行動をしていた時なら、なんら不思議はなかった。

でも、今は違う。

だって、今は毎日が同じだから…。

夕陽で空がオレンジ色になるのも、辺りが薄暗くなるのも…。




毎日を毎日やり直してる。

そんな日常だったのだから…。






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