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リシル視点。

 氷を融かすため、焔の力を使い続けた。

 そのためか、氷は少しずつ融けていた。あと少しで、全ての氷が融けるだろう。

 しかし、リシルの精神は少しずつ限界に近づいていた。



 多くの能力者は知らないのだろう。

 強い力をもつ能力者たちしか気付かないことだから。

 能力者が持つ力を使うためには、能力者の精神力が必要になる。精神力が能力を使うための鍵であるのだ。

 そのため、力が強ければ強いほど、能力を使う度に心を擦り減らす度合いが大きい。強い力を持つ能力者と比べ、一般的な能力しか持たない者は心を擦り減らすほど力は使わない。だから知らないのだ。能力を限界まで使いきると、心が壊れ、意思の宿らない人形のようになってしまうことを。

 リシルは数少ない強い能力を持っていたためか、早い段階でそのことに気付いた。だからこそ、能力を使わないようにしていたのだが。

 大切な彼が戻ってこないのだと思った時、リシルは全てがどうでもよくなった。

 自分が死のうが、国が滅びようが。生きていくことが、面倒になっていた。

 だからこそ、騎士の齎した命令に飛びついた。これで、自分を終わらせることが出来る。


 最後に騎士が言ってくれた約束は、すごく嬉しかったけれど。

 叶うことのない約束だと思った。


 心が悲鳴をあげているのが分かる。

 モウヤメテ!ソンナニチカラヲツカワナイデ!コワレテシマウ!!


 もう、自分がどうなろうと構わない。

 でも、もし叶うのなら――――。

 どうか、騎士との約束を果たせますように。

 あの騎士とは、なんだか仲良くなれるような気がしたから。

 美味しそうな料理を前に、二人で楽しく過ごしている姿を思い浮かべて。


 少し残っている氷を融かすために更に焔の力を使った。


 糸のように細くなっている精神が何とか持ちますように。

 

 氷の最後の欠片が、すっと融けたのを目にして、リシルは嬉しそうに笑った。


 騎士と仲良くなったら、大切な彼に会いに行けるだろうか。

 貴方を愛してた。そう、話に行けるだろうか。




 これで、一緒に美味しいものを食べに行けますね、騎士さん。




 叶うことのない未来を思い描いて、リシルは自らの意識を手放した。



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