魔王、人との最後の戦い
魔物と人の長い闘いの中、人の王の城に魔王が現れた。
魔物の持ち物なら魔物を倒して奪っても良い。聖者の防御結界には魔物を暴徒化させる作用がある。
聖協会が現れるまで、そのようなものを張らず、人は魔物と平和に共存していたが、
少しずつ数の増えた人が魔物を蔑み、魔物の持つ土地を欲した人間が攻め込み、魔物も反撃し、聖者が結界を張り、その精神魔法に魔物たちが暴徒化し、争いが戦争になった。長い戦いが続き、人は王の下まとまり、魔物にも王が現れた。
そして魔物の王が王城に現れた。
魔王は人の王に人の横暴を伝えた。人の王は魔物の言う言葉などにまことがある筈がないと一笑にふし、魔王を捕らえようと聖職者に結界を張らせた。魔王はその結界を反転し、人は魔物のように知性無く暴れまわる姿となり、互いに戦い、宝飾品や王冠を奪い合い、持ち物を奪いあい、まるで互いが魔物に見えているかのような状態になった。後先考えず、欲しいものを奪う。
聖者の結界の仕組みを理解した魔王は、全ての戦いの黒幕にも気がついた。瞳に深い悲しみを宿し、世界を魔力で覆った。あらゆる精神魔法を無効とする己れの魔力で、全てが闇に包まれた。
人々も魔物も己れを取り戻し、狂気と暴力に呑まれていた自分自身と向き合わざるを得なかった。
全ての争いが止まった。
己れの魔力で世界を包み、魔王は人の形を失った。上も下もない闇のなか、静かな声が響いた。
『光りあれ』
世界に光と闇が生まれ、昼と夜が分かたれた。人々は目を覚まし、自分達が何をしていたのか全て忘れ去っていた。
いったい何と闘っていたのか。何が失われたのかも知らず、人は地上の王のように振る舞った。
魔王は魔物と魔法を全て持ち去って、人との決別を決めた。穏やかな暮らしを守るために。
人の持つ向上心という名の留まることのない衝動は、魔物を自然を破壊し尽くすしかない結末を知ったがゆえに。
親より子が発展させてきた今までとは違い、限りの見えてきた中でいかに希望を見つけるか。
争いではなく、ただ己れの中にある奇跡を見つめ、静かに祈るが如く。これで十分。後は手に入れていない仲間たちに配る時。その為に、少し自分を後戻りさせても良い。そんな時なのかもしれない。魔王は声なき声で人々に語りかけた。
それを聴く人間が現れるまで。
かるーく読んでやってください。ご一読ありがとうございました。




