花冷えの終わり
急いで来たけど、もう遅かった。
奏のお母さんが声を上げて泣いている。やせ細った手を握りながら――
どうして独りでいってしまったの? どうして私を置いて行ったの?
私はこれからどうすればいいの――
考えるよりも先に感情が出てきてしまう。こんなに辛いなんて思わなかった。奏の顔を見ると、余計に苦しくなる。でも、どうしてだろうか? 奏の顔は眠っているような、安らかな表情だった。
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奏の葬式の日。私は制服を着て行った。未だに私は奏の死を受け入れられない。あんなにも頑張っていた奏がどうしてこんな目に遭わないといけないのだろうか。私は彼女として何もできなかった。そんなことばかりが頭によぎる。葬式には意外にも多くの人が来ていた。野球部の人たちや奏が勤めていた会社の人たち。他にも私が知らない人たちが沢山いた。
私が思っている以上に奏はいろんな人に慕われていて、いろんな人の心の中にいるんだと思った。奏はいつも爪痕を残すって言ってたけど、それが実現していたことを私は知った。
葬式が終わったその日の夜、私はなかなか寝付けずにいた。不安や後悔が私を取り巻く。奏を独りで行かせてしまったことを悔いている。
「美月……美月」
奏の声が聞こえる。横を見ると奏が立っていた。それも以前のような元気な姿で。
「奏! 生きてたんだね。もう……びっくりさせないでよ。本当に死んだと思ったんだからね」
奏は静かにほほ笑む。
「ごめん、美月。驚かせようとしたけど、また泣かせてしまったね」
「ほんとだよ!」
「俺は美月に幸せになってほしい。俺に囚われる必要なんてない。俺の願いは美月が生きたいように生きる。ただそれだけだ」
「奏、待って!」
「じゃあな、美月。俺のことはもう……忘れろ」
奏がゆっくりと消えていく。行かないで欲しいと思う私の願いは届かなかった――
目を覚ますといつの間にか朝になっていた。何か夢を見ていたような気がする。
「やばい! 遅刻しちゃう」
私は急いで準備をして、学校へと向かった。
外には満開の桜が咲いていて、綺麗だと思った。
「あれ……どうして」
私は美しい桜を見ながら、涙を流していた。どうしてだろうか? 自分でもよくわからなかった――




