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花冷え  作者: 天青


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14/18

社会の一員

 雨谷家族と食事を終えてからというもの、俺は会社の一室にこもり、編集をひたすらにやった。雨谷さんのアドバイスに従い、俺は先輩である安藤さんに編集を教えてもらっている。この会社が地上波で出していたドラマの編集を担当していた人だ。この会社は最初はドラマを作り、それが上手くいきだしてから、様々なプロジェクトを始めたそうだ。安藤さんは今は他の編集者のサポートをしていて、俺は偶然にも安藤さんと関りがあったので、お願いすることができた。


 以前――公園でおばあさんを助けたことがある。そのおばあさんの夫が安藤さんだったのだ。おばあさんが救急車で運ばれてから1週間後、そのおばあさんと安藤さんがわざわざ俺の家まで訪ねてきて、お礼の品を渡しに来た。俺が連絡先などを教えていなかったせいで、探すのに苦労したそうだ。


 そこから会社に入社してから1か月後に、たまたま食堂で安藤さんと再開したのだ。そこからはもう、何度も安藤さんにお世話になった。


 今は、1週間ずっと編集をしてようやく全て終わったところだ。あとは雨谷さんに動画を見てもらうだけだ。ただし、その動画がボツになることもある。そうなれば今までの苦労が水の泡だ。


 俺は部屋を出て、階段を登り、雨谷さんのもとへ向かった。足が重い。ずっと座りこんで作業をしていたからだろうか――ひどく疲れていると感じる。頭痛も酷い。でも、俺は達成感に浸っていた。


 雨谷さんは週に2回ほど会社に来る。月曜日と木曜日だ。今日は木曜日、雨谷さんは大体、客室でノートパソコンをカタカタと打っている。どうしてそんなことをしているのか雨谷さんは教えてくれない。

 

 やっぱりいた……


 雨谷さんは俺に気づかない。


「雨谷さん!」


 雨谷さんは横目でチラッと俺を見た。


「おー、奏か……どうした?」


 雨谷さんは俺を見てすぐにパソコンの方に向きなおした。


「動画……できました」


 雨谷さんは再度俺の方を見て、かけていたサングラスを外した。


「おう、そうか……頑張ったな」


 俺は動画を保存したUSBを渡した。


「これか、時間がある時に見ておくよ……それにしてもクマが凄いなぁ。無理すんなよ、体弱いんだろ? 今日はもう家に帰って早く寝ろ。ほら、帰れ帰れ」


 そうして雨谷さんは俺をせかすように部屋から出した。雨谷さんは仕事はちゃんとやるし、優秀なんだよな。


 俺は地味に雨谷さんを尊敬している。さて、家に帰るとするか――


 電車の中で俺はまたしても考え込んでいる。どうしても、どうしてもあの親子が頭から離れない。香夏子さんに連絡を送っているが一向に返ってくる気配がない。あの後、どうなったのだろうか――


 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 1か月が経った――


 あれから俺は雨谷にダメ出しを貰っては改善の繰り返しの日々だった。それと同時に次のインフルエンサーの卵も探していた。そうしてようやく、動画が完成し、放送されることになった。ここまで長かった。たかが20分にどれだけの時間をかけただろうか――


 動画配信サイトの番組『インフルエンサーの卵』は登録者が40万人になっていた。凄まじいスピードだ。当然、知名度もかなり上がった。


 そんな番組に俺が作った動画があげられるなんて、夢のようだ。楽しみと同時に少し不安はある。でも、やれることはやった。もうどうなろうが後悔はない――放送は3日後だ。俺は今日も会社に行き、動画についての話し合いをしていた。今はその帰宅途中で電車に乗っている。


 あの親子のことが頭から離れない。あれからどうなったのだろうか。香夏子さんから連絡が一向に返ってこない。ただ、配信はちょくちょくやっているようだ。だが、以前に比べて配信頻度がかなり落ちている。どうしたのだろうか――心配だ。


 でも、あの親子のことだけを考えるのは良くない。次のインフルエンサーの卵を探さないといけないからだ。俺は電車の中でスマホとにらめっこをして、色々な動画を見漁っていた。


 20分ほど経っただろうか、いつの間にか電車の中の人は減っていた。人の数でおおよその時間や今の場所が分かるようになっていた。こうしてみれば、俺は立派な社会人になっているのかもしれないな。


 それにしても、最近は無理をしすぎた。体が鉛のように重い。それに、頭痛も酷くなっている。ちゃんと寝ないとダメだなこりゃ。


 その後もスマホを見ていると、優斗から連絡が来た。


 明後日、水族館に行かない? もうずっと会ってないし。


 言われてみれば、もう数か月会っていないような気がする。俺は迷わず、いいよと送った。考えてみれば、高校生の時では考えられないようなことばかり起きているな。こんな道もあったんだなぁ――普通に生きていれば絶対に気づけなかっただろう。


 俺は昔の記憶に浸りながら、家へと向かった――


 


 


 


 

 


 

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