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48 レッツ・シューティング

星加さん「最初なので、どこのエリアにパラシュートで降りるかは私が決めますね~。皆さん、私についてきて下さい!」

栞「嫌よ」

僕「星加さんの方が僕らより詳しいんだから、素直に従ってくれよ! 話が進まないだろ!」

栞「あたしは話を進めないことで定評のある女なの」

僕「そんな不名誉な定評はいらない!」


 何だかんだ言いつつも、栞も星加さんの後に続いた。他のプレイヤーが見当たらず、武骨なデザインの建物がいくつか並んでいるだけの場所に降り立つ。


星加さん「この辺は落ちているアイテムの数がさほど多くないので、他のチームと取り合いになりづらいです~。ささ、今のうちに初期装備を固めちゃって下さい!」

立花先生「よーし、集めるぞっ!」


 そそくさと四方へ散り、各々が銃や防弾ベストを拾っていく。遠距離の敵を狙う際に必要となるスコープ類も、ばっちり入手できた。これで一安心。

 けれども、星加さんの言った通りアイテムの総数が少ないエリアなので、数分もすると集め終わってしまった。これ以上収集するには、他のチームと鉢合わせるのを覚悟の上で他のエリアへ移動するしかない。

 何か通知が来た。画面の端に表示されているゲームエリアのマップに、大きな円が描かれている。



桜井先生「あれは何だ?」

星加さん「安全地帯ですねえ。制限時間が経過した後にあの円の外側にいると、体力が徐々に削られてしまうんです」

桜井先生「なるほど。プレイヤーの人数が徐々に減るのに合わせ、有効なゲームエリアの面積を狭めて、チーム同士が遭遇する確率があまり下がらないようにしているのだな。ゲーム性を損なわないように配慮した、良いシステムだ」


 初見でそこまでFPSの本質を見抜くとは、なかなかの観察眼である。


桜井先生「ということは、私たちもそろそろ移動した方が良いのではないか?」

星加さん「ですね~。移動用の車を探してきますので、少々お待ちを!」


 てってってーと駆けて行った星加さんのアバターは、やがて一台の自動車に乗って戻ってきた。


立花先生「この車、どこにあったんですかっ⁉」

星加さん「その辺の道に停めてあったよ~」

桜井先生「む? ちょっと待て。つまり貴様は、路上駐車されている車の鍵をこじ開け、勝手に運転してきたわけか? 貴様は犯罪者だ!」

僕「そういうゲームなんですよ。細かい設定は考えるだけ時間の無駄です!」

桜井先生「しかし教職を志す者として、こんなモラルが崩壊した、犯罪行為を推奨するような世界観のゲームを見過ごすわけにはいかんな。生徒に悪影響が出るかもしれん」

星加さん「皆、いいから早く乗って~! 遠くに敵チームの車が一瞬見えたから、こっちに来る可能性ありなんだよお!」



 その辺で拾った車に乗ろうとしてひと悶着起こしているうちに、敵が迫ってきた。星加さんに急かされるまま、僕たちは車へ乗り込もうとしたのだけれど。


立花先生「……あれっ? この車、4人しか乗れないみたい。一人余っちゃわないかな?」

星加さん「あ」


 刹那、沈黙。星加さんは車の運転席から降りて、おずおずと皆を見回した。


星加さん「えーと、ど、どうしようかなあ~。ここは公平にじゃんけんして、負けた人が他の乗り物を探すというのはどうでしょう」


 そうこうしているうちに、敵チームの車のエンジン音が近づいてきた。マップ上に、危険を示すアイコンが点滅する。


栞「もう時間がないわ。とりあえずあたしが運転してみるから、乗れるだけ乗って!」


 優柔不断なリーダーに代わって、栞が運転席に乗り込んだ。ここで乗り遅れるわけにはいかない。僕も立花先生も桜井先生も、我先にと車へ駆け込む。

 結局、乗り遅れたのは星加さんだった。


栞「ごめんね、星加先輩! あんたのことは忘れないわ!」

星加さん「そ、そんなあ~⁉」


 悲鳴を上げるリーダーを置き去りに、スポーツカーで爆走する栞。

 後方では、近づいていたエンジン音がふと止まった。おそらく、逃げ遅れた星加さんに気づいたのだろう。

 遠くで「ズダダダ!」と微かに銃声がして、画面の隅にメッセージが表示される。


『スタープラスさんは、車に轢かれて死亡しました』


 スタープラスとは、星加さんのアバター名。名字を英語にしただけだから安易なネーミングだ。まあ、チェリーブロッサム以下略とか言っている僕が言えたことではないんだけれど。



栞「……で、どこ行く?」

僕「決めてなかったのかよ⁉」

栞「適当に、真っ直ぐ走ってるだけよ。要するにこのゲーム、安全地帯内で居続ければ生き残れるんでしょ? 安全地帯の真ん中辺りにいれば大丈夫なんじゃない?」

僕「いやまあそうだけど、どこに行くと敵と遭遇しそうかとか、普通は色々考えながらプレイするものだろ。単に真ん中に行けば良いってものじゃない」


 一番このゲームに詳しい人物が真っ先にリタイアしたことで、僕たちの生存確率は大幅に下がった気がした。

 ていうか、星加さんはゲーム実況配信を兼ねていると言っていたけれど、実況者が最初に死亡したら実況としては全然面白くないよな……。あとは動画編集の腕次第だ。頑張ってほしい。


桜井先生「行き先は任せるが、それはそうと、車のガソリンの残量が少なくなっているようだ。どこかで補充したいな」

立花先生「もうちょっと東の方に行くと、『ガソリンスタンド』って書いてあるエリアがあるよっ! 寄ろうよ!」

栞「良いわね。それじゃ、ガソリンスタンドまで飛ばすわよ!」


 行き当たりばったりで目的地を決め、僕たちは移動した。もはや安全地帯の真ん中からはだいぶ離れてしまったけれど、移動手段を確保しなければそもそも真ん中に行けないので、一旦燃料を補給するのは理にかなっている。



僕「おい、ガソリンスタンドに先客がいるぞ。敵も燃料補給中みたいだ。引き返した方が良いんじゃないか?」

立花先生「いやいや井上くん、ここは突撃一択だよっ!」

僕「そんな無茶な……」


 と言いかけて、僕は「待てよ」と考えを改めた。

 先日、立花先生に教えてもらった日本史。その日は戦国時代辺りの復習をしたのだけれど、あの内容をもしかしたら活かせるかもしれない。


僕「皆、やっぱりここは攻めよう」

栞「あんた正気なの⁉ 正面から突っ込んでも、きっと蜂の巣にされて終わりよ!」

僕「何も馬鹿正直に突撃する必要はないよ。裏から、車のエンジン音も聞こえないほど遠くから回り込むんだ。あの山の裏側を登ってから表側に出て、急降下して奇襲する。これは現代の桶狭間の戦いだ!」

栞「面白そうね。乗ったわ!」


 車を方向転換させ、山へ向かう湯川栞。


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