第四話 魔法師ガーテルン
<あなたはレベル0[非才者]です>
「……」
この返答を聞いたとき、僕の中にまだあった"希望"が砕け散った音がした。
<あなたはレベル0[非才者]で
「二回言わなくてもいいよッ!」
正直、才能がないっていうのは予想していたけど、いざ面と向かって才能がないって告げられるとかなりメンタルにくるね、まぁ、世界に約21000人しかいないんだし仕方ないか。ていうか本当にテーちゃんは凄いな、
<お悔やみ申し上げます>
「いやなんかその言い方だと僕が死んだみたいだからやめてくれないかな!?」
<フッ>
またさっきみたいに小馬鹿にしたように笑いやがった。てかこの鏡から写し出されてる女性、最初はなんにも感情がないロボットみたいなものだと思っていたけどさっき小馬鹿にするような顔をしたりしていたし、意外と感情豊かなのかな?魔法教団っていう教団の人たちはすごい技術を持ってるんだなと改めて感じたよ。
<では、以上を持ちまして魔法師才能検査鏡のサービスは終了させていただきます。ご利用ありがとうございました>
そう言うと鏡から写し出されている女性はこちらに向かってお辞儀した。多分普通の鏡になってしまうのだろうか?そうだとしたらちょっと寂しいな、見た感じ感情がないわけでもなさそうだし、もう少し話したりしたかったな。まぁ、回数は五回しか無理みたいだし仕方ないか…………………………ん?あれ?
「サービスが終了したら、君は消えたりするんじゃないのか?」
<消えませんよ?私は"魔法師才能検査鏡のサービス'は'終了しました"と言っただけです。私が消えるとは一言も言ってませんよ>
…確かにそうだな。ていうか、よくよく考えてみると才能云云関係なく一番強い魔法とか質問しても答えてくれたし、魔法師才能検査しかできないなんて言ってなかったね、
<なんですか?私は消えてほしかったのでしょうか?酷いですね主君>
「いや、別に消えてほしいわけじゃ……え?主君?」
僕は唐突に主君と言われて驚いた。主君ってことは、僕はこの鏡から写し出されてる女性の主ってことになってしまう。僕はこの鏡を買ったわけではないし、この鏡は今は亡き魔法師ガーテルンのものだし、
<先代の主君は亡くなってしまったのて先日までは主君はいませんでした。しかし、あなたが先代が亡くなってから初めてこの鏡を使用してくれました。つまり、あなたが次の主君です>
「ずいぶんと強引だな、」
なぜかこの人(?)の主君になってしまった。まぁ、消えなくてよかったしとりあえずいいか。ていうか前までの主君、ガーテルンさんが亡くなっていることに既に気づいていることに驚いた。
「お客さーん!もう少しでご飯できるよー!」
少し遠くからテーちゃんの大きな声が聞こえた。どうやらもう少しで夕飯ができるみたいだ。僕はとりあえず「今行くよ」と大きな声で返した。しかし、この鏡はどうしたらいいのか?
「んー、この鏡どうしたらいいんだ?」
<私は"この鏡"という名前ではありません。私の名前は"オムニ"という名前があります>
いきなり少し不満そうに名前を教えてくれたから驚いた。今の所、自分の名前を理解していないのは僕だけみたいだ。いや理解していない方がおかしいか。とりあえず、テーちゃんに呼ばれたし行くとしよう。
「あー、とりあえず僕は呼ばれたし行くとするよオムニ、また後で話そう」
<はい、分かりました>
心なしかオムニのこちらを見る目が少し悲しそうに見えた。とりあえず僕はとりあえず外に出た。外を出て空を見てみるとかなり暗くなっていた、もうこんなに時間が経っていたのか。僕が空を見ていると近くにいたテーちゃんが話しかけてきた。
「あ!お客さん!もう少しで夕飯ができるから早く来なよ!」
「あー、分かっt」
テーちゃんがこう言うと僕の腕の裾を掴んで強引に引っ張った。引っ張る力が思った以上に強くて僕は軽々と連れていかれた。
<……………あなたはどうか、死なないでください、>
テーちゃんに強引に引っ張っぱられて数十秒、すぐに食卓についた。食卓と言っても机とか椅子が並べてあるんじゃなくて床に絨毯を複数枚敷いてある。そして、絨毯の上には他のマーサ族の人たちが座っていて楽しそうに話している。
「ここはね、みんなと一緒にご飯を食べる場所なんだ!ご飯ができるまでみんな座る場所を決めて待つんだ!私たちはあそこに座ろっか!」
テーちゃんがこう言った後、僕たちは近くにあった絨毯に座った。ここの人たちはとてもいい人ばっかりだし全員仲が良さそうだ。
「お腹空いたし早く食べたいな〜」
「確かにお腹すいたな、テーちゃんは料理の手伝いするって言ってたよね?どんな料理がくるんだい?」
「フッフッフ〜、それはきてからのお楽しみだよ〜」
僕は正直嫌な予感しかしない。なぜやらビルガンさんはあの化け物は貴重なタンパク源で美味しいって言っていたし多分…いや絶対さっきの化け物が料理にでてくると思うからだ。
「ご飯できたわよ〜」
僕とテーちゃんがいろいろ話していると、テーちゃんのお母さんの声が聞こえた。ようやく料理が完成したみたいだ、木の実や野菜を持ってきている女性の中にビルガンさんもいた。ビルガンさんはなんだか凄い量の料理を運んで…ん?いやなんだあれ、見た感じ狩っていた化け物をただ丸焼きにしたようにしたのを積んでいるようにしか見えない、あれ本当に美味しいのか?一応、他の人はめちゃくちゃ喜んでるけな、テーちゃんも含めて、
「お客さん!凄いでしょ?今回の料理!作るの頑張ったんだ〜」
テーちゃんがとても純粋な笑みを浮かべながらこう言ってきた。こんなの食いたくないなんて言えるわけがない。ビルガンさんや他の料理を持っている人たちはみんなに平等に料理を分けていっている。みんなとても美味しそうにあの丸焼きの化け物を食べている、マジかよ。僕が混乱をしているとビルガンさんが料理を分けに近づいてきた。
「どうだ?これめちゃくちゃ美味しそうだろ?お客さんには特別に大きめのをあげよう!ガハハハハ!」
ビルガンさんが豪快に笑うと大きめな化け物の丸焼きを分けてくれた。横でテーちゃんが「いいな〜」って感じで見ている。この雰囲気で「食べれません」なんて言えるわけない、とりあえず僕は勢いに任せてこの化け物の丸焼きを丸齧りした。
「うまぁぁぁぁぁ!なんだこれぇぇぇぇ!?」
俺はこの肉を齧った瞬間、とんでもない旨みが脳天を突き抜けた。何も味付けしてなさそうだし味が薄いって思っていたけど全く違った。しっかり肉に味がついていて塩味のバランス、そしてほのかにスパイスの匙加減、全て完璧でまさにパーフェクトだった(?)僕は無我夢中でこの肉を食べた。そして、気がつくとこの肉は骨だけになっていた。
「いい食いっぷりだね〜お客さん。このお肉本当に美味しいよね〜」
「ほんとに見た目からは想像ができない美味しさだな」
「いいねぇお客さん!まだまだ肉はあるぞ!」
ビルガンさんは更にお肉を僕にくれた。マジでありがたい。僕はまたさっきのように勢いよくお肉にかぶりついた。周りの人もお肉を勢いよく食べている。もちろんテーちゃんも食べているしビルガンさんも食べ始めた。ビルガンさんはなんか四個一気に食べている、化け物かな?それにしても、ここは本当にいい場所だ。全員仲良く楽しそうに夕食を食べてる。僕もとても楽しいし料理も見た目に反して凄く美味しい。正直、ここにずっと住みたくなってきた。
こうして、楽しい夕食の時間はあっという間に過ぎてしまった。なんで楽しい時間はすぐに過ぎてしまうのだろうか?
「いや〜美味しかったね〜」
「確かにめちゃくちゃ美味しかったよ」
「じゃ、私片付けのお手伝いに行ってくるよ!またね〜」
テーちゃんは意外にもかなり食べていてなんと10匹くらい食べていた。あの小さい体の一体どこにあの量のお肉が入ってるんだ?ビルガンさんは、まぁ、うん、凄かった(語彙力消滅)。
「どうだ客人?めちゃくちゃ美味しかっだろう?」
「あーはい、めちゃくちゃ美味しかったですよ」
「ガハハハハ!そうだろう?明日もめちゃくちゃ美味しいのを狩ってくるから楽しみに待っててくれ!」
そう言うとビルガンさんはどこかに行ってしまった。できれば、次はもう少し見た目がマシなやつにしてほしいな、僕もとりあえず宿に戻るとしよう。そういえばオムニは宿でなにをしているのだろうか?僕は宿に向けて歩いて帰った。ていうか、これ入り口開きっぱなしみたいなものだけど大丈夫だろうか?
「帰ったよ、オムニ……ファッ?」
<お帰りなさい主君。ふふっ>
なんとオムニがなにかの本を読んでいた、しかもなんかニヤニヤしながら読んでる。本を読むことは普通だけど、なんと本を手に持って読んでいる。見た感じ半透明だし実体は無いと思っていたけど実体あるのか、
<なにを驚いているのですか主君?あぁ、この本ですか?ふふっ、面白いですよ。読みますか?>
「一体なんの本を読んで……あーーー、」
|面白いダジャレ集⑤|…え、こんな本読んでオムニは笑ってるのか?いやマジかよ、しかも本が数冊散らばってるし、まさか全部ダジャレの本か?てかどうやってこの本取り出したんだ?鏡から写し出されてるんだし移動とかできないと思うが、
<今、主君は私がどうやってこの本を取り出したのか疑問に思っていますね?実はこうやって取り出しているんです>
そうオムニが言うと少し離れた本棚から一冊、なぜか本が取り出されてオムニの近くまで浮いて移動した。正直、訳が分からないよ。これも魔法の一つなのだろうか?
<これはマジアではありません、超能力です>
「超能力?なんだそれ?」
<超能力とは個人が持っている固有の能力のことです。私の超能力は物体浮遊、5t以内の物体であれば自由に操作可能です>
「けっこう凄い能力だな、」
<他にもありますが…特に言う必要もないので割愛いたします>
けっこう気になるけど、言いたくなさそうだし追及しなくてもいいか。とりあえず、散らばってる本は片付けるとしよう。あれ?なんで僕が本を片付けてるんだ?まぁいいか。僕が本を片付けていると少し気になる本を見つけた。
「ん?|日記|、気になるな、ガーテルンさんが書いた日記だろうか?」
あまり人の日記を勝手に読むのはよくないと思うけど、気になるし少し読むくらいならバチは当たらないだろう。僕は日記を開いた。
[日記]
|多分この日記を誰かが見ているとき、私はこの世界にはもういないだろう。この日記を読み終わった後、みんなですぐに逃げてくれ|
僕は内心かなり驚いた。もしかしてガーテルンさんは自分が死ぬことを予言していたのか?それに、読み終わった後逃げてくれ?なんかちょっと怖いな、とりあえず読んでみよう。
|私がこの日記を書くのはマーサ族みんなに伝えたいことを伝えるということとと私の自己満だ。私はめちゃくちゃ頑張ったからな、それをみんなにも知ってほしい。
ダジャレ本とかからで分かっていたけど、かなり気の良い人だったのが分かる。死んでしまったのが本当に残念だ。
|さて、なにか書こうか、とりあえずマーサ族みんなに言いたいことがある。少し気恥ずかしいがこの10年間、よそ者の私をこの集落に住まわしてくれて本当にありがとう、感謝している。
それじゃあ本題を書くとしよう。約3年前から少し離れた所に魔王四天王、直属配下の1人、ジン=マコモの城ができたのは知っているだろう?このときの絶望感は本当に凄まじかったな、みんな「この集落は終わりだ…」とか「ここから逃げないと…」とか言っていたな。
ジン=マコモ、ふざけた名前だけど魔王四天王、直属の配下って絶対めちゃくちゃ強いよな、なんでそんな奴がこの森で城なんか建てたのだろうか
|でも実際のところジン=マコモどころか強い化け物は全く攻めてはこなかった。なぜ攻めてこないのか?みんな凄く不思議そうにしていたな。実はな、私が押さえ込んでいたんだ。正直かなり辛かった。なんせ責めてくる化け物は全員かなり強かったし、かなりの数がいた。それに、このことはバレたくなかったし妨害系の魔法を展開しながら戦ったから魔想の消費がかなりキツかったし毎回怪我をしてしまった。
でも、やっぱり回復系の魔法、癒しは本当に便利だ。どんな傷でも死んでなかったらすぐに治ってしまう。これがなかったら多分私はすでに出血死しているだろう。
正直、こんないたちごっこはもう散々だ。だから私は明日、ジン=ノムジの城を攻め込もうと思っている。死ぬ確率は五分五分くらいだろうか?まぁ、私が死んだとしてもジン=ノムジにはそこそこダメージを与えれるはずだ。回復を阻害する魔法も撃ち込むつもりだからもし私が死んだ後、すぐに攻め込んだりはしないと思う。
私が死んでも傷が癒えない限りは多分やつも攻めてはこないと思う。だから、その内にみんなは逃げてくれ。後、逃げるときはオムニも持って逃げてくれ。奴らにオムニが渡ってしまうとかなりまずい。
てか、もし誰もこの日記を誰も読んでいなかったらかなりヤバイな。まぁ、誰かが読んでいるとこを願っている。
そして少しくどいけど、本当にありがとう。料理も凄く美味しかったし、よそ者の私をみんな本当に優しく接してくれた、感謝しても仕切れないよ。今回のこの行動はみんなへの恩返しと思ってくれ。まぁでも、別に私が死なずにやつを倒せばいいだけだ、正直こんな日記を見られるのは恥ずかしいからな|
「……ガーテルンさん、本当にいい人だったんだな」
感動している場合じゃないな、とりあえずこのことを他のマーサ族の人に伝えないt
「敵襲だ!化け物が攻めてきたぞ!」
ビルガン
年齢 20
誕生日 3月9日
身長 312.5cm
体重 210.8kg
好き 肉、狩り、集落のみんな、テービン
嫌い 玉ねぎ、化け物、皆を傷つけようとする者
小話
ビルガンのこの化け物みたいな体つきになったのは3歳の頃から筋トレをしたかららしい。しかし最近デカくなりすぎて家に入りにくくなったり足の小指をタンスにぶつけたら痛がるどころかタンスがぶっ壊れたらしい。