第三話 すごい家
「す、すげぇ、この家」
僕は家の中を見て驚愕した。魔法師の家だから小難しい本とか変な道具とか置いてあるとか予想はしていたけどこんなに多いとは思わなかった。本は多分千冊くらいあってよく分からない杖みたいなものや、なにかの研究で使いそうな道具などいろいろあった。
「家が大きかったのが納得だな」
この家の中を見ただけでガーテルンという人がどれだけ凄い人だったのかが分かる気がする。でも、なぜこんな凄い人が死んでしまったのだろうか?あの2人の母親は死因についてはなにも言ってなかった。まぁ、普通初対面の人に言うわけないか。
そして、僕は家の中にあるものをいろいろ調べてみることにした。まずは本を調べてみよう、と思ったがぱっと見千冊以上ある本を全て調べるなんて気が引ける。なので僕は適当に三冊くらい取って本の中身を見てみた。
[ 面白いダジャレ集 ①]
|虫は無視 内臓がないぞう 草がくさい 箱を運ぶ
ダジャレを言ったのは誰じゃ 豚がぶっ倒れた
お金はおっk |
俺は途中で本をバタンッ、と閉じた。今は冬の季節なのだろうか?鳥肌が立つくらい寒くなってきた。なんだこのろくでもない本は嫌がらせか?とりあえず一冊目はガーテルンって人がおっさんだと分かっただけで大ハズレだった。そして僕は次の本を開いた。
[面白いダジャレ集⑩]
「なんッでだよッ!」
僕は速攻で閉じてこの本を放り投げた。さっきの本で①って書いてある時点で嫌な予感はしていたけど。まさか⑩もあるとは思わなかった。待て、まだ⑩ってだけでこれが最後というわけではない、もしかしてまだこんな本があるのか?魔法師って、もっとなんか威厳がある人かと思っていたけど、多分気のいいおじさんみたいな感じだったのだろうか、
「まぁ、悪い人じゃなかったのは分かるな、」
正直言って辟易としていたが三冊目の本も確認してみることにした。まぁ、多分またダジャレの本だと思うけど、
[基礎魔法]
僕はかなりびっくりした。なぜならダジャレまみれの本ばっかだと思っていたのに急に真面目そうな本が出てきたからだ。いや、多分これが普通なんだと思うけど、
「基礎魔法、名前からして多分、会得するのが比較的簡単な魔法かな?」
「比較的簡単」とは言ったものの、ビルガンさんが言ってたみたいに才能がない人だと、会得するのに2、3年はかかるのだろう。僕も正直使ってみたい気持ちもあるけど、さすがに2、3年は長すぎるな。とりあえず見てみよう。
|基礎魔法その1 炎火
炎熱系の魔法で最も基礎的な魔法である。指定した可燃物を燃やしたり、鍛錬を積めば指や手に炎を出してそれを指定の方向に放つこともできる。これを応用した魔法は多数存在していて、有名なものだと火柱や永遠炎火などがある。|
「なんかカッコいいな、これ」
|基礎魔法その2 加速
「加速、ビルガンさんが使える魔法だったね」
|自分が放った物の速度を上げることができる魔法である。飛来物など自分が放っていない物は速度を上げることはできない。上げることができる速度にも限界があり、自分が放った物の元のスピードの30灰が限界である。速度を上げれば上げるほど、使用者への体の負担が大きくなるデメリットがある。因みに、これを応用した魔法は現時点では存在していない。|
結構汎用性が高そうな魔法だからなにか応用した魔法があると思っていたのにないのは意外で結構驚いた。
|基礎魔法その3 豪雷
雷系統の魔法の中で最も基礎的な魔法である。指定した場所に落雷を落とすことができるシンプルな魔法である。基礎魔法にしてはかなり高い威力を有しており、力量次第では巨大な岩石すら破壊することができる。これを応用した魔法も存在しており、有名なものだと雷雨や槍雷などがある。|
「これもめちゃカッコいいな」
|基礎魔法その4 能力上昇
|自身の基礎的な力、基礎的な速度、基礎的な判断速度、基礎的な防御力など自身の能力を上げることができる魔法である。上げることができる能力は上限はないものの上げれば上げるほど身体的負担が増えてしまいう。これを応用した魔法は現時点では存在していない。
「これけっこう便利そうだな」
まだページ数はあるがとりあえず今は一旦ここまでにしよう。調べてみてわかったことは、魔法はとても奥が深そうってことだ。基礎魔法だけでもまだページ数がそこそこあるし、応用した魔法の数はとんでもなさそうだ。
「んー、僕って魔法師の才能ってあるのかな?」
どんなに本を読み漁って魔法のことを知っても才能がなかったら結局は最低でも2年も練習しないとまともに使えないからね。でも、どうやって魔法師の才能があるかないかを見分けるのだろうか?僕はふと変なものがいろいろ置いてあるところに目を向けた。
変な形の杖、変な模様の絨毯、変な物が載ってる額縁、なんかよく分からんものとかいろいろ置いてある。僕はとりあえず近づいて見てみることにした。正直、変に触ったらよくないことが起こりそうだから触れたくない。
「ガーテルンって人のセンス凄i…ん?」
僕はとある物に目線を向けた。それは、少し大きめの鏡だ。マジでめちゃくちゃ普通の鏡でこの変な物の中で明らかに浮いている。僕はとりあえずその鏡を持ってみた。みた感じ重さも普通だし、自分の姿もしっかり写るし、持ってみても特に変なことが起きない。僕は「置く場所ミスったのか?」と思った。
「見た目は普通の鏡だし、これ魔法と関k…」
僕が「魔法」という単語を言った瞬間、唐突に鏡が強い光を放った。僕は直で鏡を見ていたから、当然こんなん予想できるわけないし、光が目に直撃した。
「ギァァァァァ目がぁぁ目がぁぁぁぁぁ」
太陽を直で見た時レベルの光が当たって僕は悶絶した。なんだこの鏡、嫌がらせってレベルじゃねぇぞおい。幸い目は失明しないで済んだが、多分視力は落ちてるように感じる。
「なんなんだよこの鏡……ゑゑゑ!?」
僕は目の前の光景に驚愕した。なぜなら鏡からうっすらだけど2mくらいある修道院服を着た女性が写し出されているからだ。僕は衝撃的なことが連続で起きていてかなり混乱している。僕が目の前の光景に唖然としてると、なんと目の前のうっすらとした女性が話し出した。
<この度は|魔法教団作、魔法師才能検査鏡をご利用いただきありがとうございます>
「魔法教団?」
多分魔法に関係がある教団かな?でも、それより気になるのは「魔法師才能検査鏡」というやつだ。さっきまで普通の鏡だと思っていたけど、どうやら今僕が一番ほしいと思っていたものだったらしい。こんなに楽よ見つけれるなんて日頃の行いがよかったかr……いや、視力下がったし楽ではないか。僕が思考を巡らせていると目の前に写っている女性が話しだした。
<今回で検査は5回目のため、今回の使用でこの鏡は普通の鏡に戻ってしまいます。前回の使用者は[種族]人間 [所属]マーサ族のテービン様が使用しました。彼女は魔法師の才能はレベル1[才覚者]でした>
「レベル1[才覚者]、つまりテーちゃんは魔法師の才能があるってことなのか、凄いな」
だからテーちゃんはあんなに熱心に魔法師の事を語っていたのか。てかこの鏡すごいな、なんの変哲もない鏡から人が写し出されているし、しかもその人が喋っている。なんていうか、未来的すぎてここの集落の雰囲気とはあまり合っていない物だな。
<質問がありましたら60dB以上のトーンで話してください。返答可能なことのみ返答させていただきます>
質問、正直聞きたいことがけっこうな数あるけど早く自分に才能があるのか気になるし、三つくらいにしておこう。
「それじゃあ、レベルってなんなのか教えてほしい」
<レベルとはどれだけ才能があるかの値を表しています。レベルが高いほど才能を有していることになります。基本的にレベルが一つ上の人物にはどれだけ努力しようと勝つことは不可能だとされています。なぜなら魔法師とは努力よりもセンスが重要視されているからです。レベルは5まで存在しており、レベル0[非才者] レベル1[才覚者] レベル2[天才者] レベル3[鬼才者] レベル4[次元者] レベル5[神能者] と名義されています。レベル1[才覚者]は約20000人、レベル2[天才者]は約1000人、レベル3[鬼才者]は86人、レベル4[次元者]は10人、レベル5[神能者]は3人です>
この話を聞いて僕は魔法師になれるという希望にヒビが入った。この世界にどのくらいの人がいるか分からないが、合計で大体21000人くらいしか才能がある人がいないってことは才能がある確率はかなり低いってことだね。ま、まぁ、なれないって決まったわけじゃないし、とりあえず他のことも聞いてみよう。
「この世界で一番強い魔法ってなんなんだ?」
<この世界で一番強力な魔法とされているのは虚無です。使用者は確認できる範囲では現在存在していません。この魔法は現在禁止魔法に指定されています。この魔法能力は概念、万物、存在など全てを無に帰す最悪の魔法とされています>
僕はこの魔法を聞いて身震いした。こんなにもやべぇ魔法があるなんて想像もしてなかった。禁止にしてマジで正解だよ、こんな魔法。それじゃあ、最後に一番気になっている質問をするとしよう。
「記憶を治すことができる魔法って、あるのか?」
そう、記憶を治すことができる魔法だ。俺はここで目が覚める以前の記憶が全くない。いや、厳密には記憶が全くないというよりから目が覚める前の自分がどんなやつだったのか、どんな人生を歩んでいたのか、どんな人と関わっていたのか、どこに住んでいたのか、とか自分のことが全く思い出せない。
だから、この事を全部思い出すために記憶を治すことができる魔法があるのかどうかがすごく気になる。僕が息を呑んで回答を待っていると、いつもより少し遅れて回答が返ってきた。
<ありません>
「いやないんかいッ!」
少し焦らしてきた割にはめちゃくちゃきっぱりと、そして短文で返答されて思わずツッコミを入れてしまった。少し鏡に写し出された女性の顔を見てみたら小馬鹿にするようにこっちを見ていた。なんだこいつ絶対性格悪いやん。
「なに笑ってんだお前ェェ」
<笑っていません>
僕が少し文句を言うと鏡に写し出された女性はさっきまでのように真顔になった。とりあえず記憶の修復についてはまた考えるとしよう。てか、見た感じこの人?も一応自我みたいなものはあるようだ。よく分からないけど、魔法教団の人たちはすごい技術を持ってるみたいだ。
あぁそうだ、本来の目的を忘れるところだった。僕は魔法師の才能があるのかどうか、危うく質問だけで終わるところだった。
<質問はもうよろしいですか?>
「あぁ、もう十分だよ」
<それでは、あなたの魔法の才能があるかどうかの検査を始めようと思います。まずはあなたの種族を教えてください>
種族はテーちゃんと同じで人間でいいだろう。
「種族は人間だ」
<[種族]人間、分かりました。次にあなたの[所属]を教えてください>
所属、僕はマーサ族じゃないし「マーサ族」って答えるわけにはいかない。でもどう答えたらいいのだろうか?僕は別になにかに所属しているわけじゃないし、どうすればいいのだろう?てか、多分この後名前も聞かれるだろうけど、僕は自分の名前すら分かんないし、これ検査することできるのかな?僕が悩んでいると鏡から写し出された女性が話し出した。
<所属がない場合や、諸都合で名前が言えない状態であれば言わなくても検査は可能です>
「wowマジか、ならどっちもなしでお願いするよ」
とりあえず分からない2つをスキップすることができてマジでよかった。この2つが必須とかだったらマジで絶望してたよ。
<了解しました。それでは始めます>
鏡から写し出された女性がこう言うと、いきなり手を開いて顔ギリギリまで近づけてきた。いきなりすぎてびっくりしたがなぜか声が全く出ない。
<手のひらから強い光が放たれるので、目を瞑ることを推奨します>
俺はこの言葉を聞いて速攻で目を強く閉じた。また強い光で目がやられたらたまったもんじゃない。僕が目を瞑って数秒後、目を瞑っても分かるくらいの光が放たれた。そして、よく聞き取れなかったが女性からなにか唱えてるような声が聞こえた。僕はこのとき、言葉では言い表せないような感覚に陥っていた。言葉では言い表せないような不思議な感覚だ。
そして、この感覚を数十秒感じていると突然、なぜか瞬発的に目を開いてしまった。「やばい、また光が」と思ったら既に光も手のひらも目の前に映っていなかった。多分、検査は終わったのだろうか?僕はワクワク感が高まってきたので早速聞いてみた。
「僕には魔法師の才能はあるのか?」
<…>
なぜか鏡に写し出された女性はすぐには答えなかった。また焦らしているのだろうか?正直、早く聞きたいから焦らすのはやめてほしい。僕は「早く言ってほしいな"」と「な」をなぜか強調して言った。そうしたら満を持して答えてくれた。
<あなたは、レベル0[非才者]です>