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SGS097 アドミンはお友だち

 アドミンの反省はさておき、アドミンがオレたちのことを初代の神族に匹敵すると持ち上げているのは何か理由があるのかもしれない。


 ああ、そうか。その理由が分かった気がする。アドミンはオレたちを初代の神族のように働かせたいのだろう。以前にユウやコタローから聞いた話だが、初代の神族の役割はウィンキアの人族を指導し、守ることだと教えてもらった。それにさっきのアドミンの話では、行方不明になっているマスターの捜索も初代の神族の役割であったらしい。


 初代の神族たちは何千年も前に死んでしまっているし、今の神族たちは本来の役割を忘れて、陰で人族の国を支配して互いに争っているだけだと聞いている。


 つまり、そういうことだ。アドミンはオレたちに初代の神族の役割を果たすことを期待しているってことだ。


『ねぇ、ケイ。マスターの捜索、手伝ってあげないの?』


 オレが考え込んでいると、ユウがまた話しかけてきた。オレが黙っているからか、ちょっと苛立っているようだ。


 アドミンはマスターの捜索については自分からは頼めないと言ってるから、取引きのような形にはできないということだ。つまり、こちらからマスターの捜索を一方的に手伝うことを明快に伝えるのが最善の策ということか……。


 アーロ村の守護神というのがソウルゲート・マスターだったら簡単に結果は出せるけど、もし違っていたら大変なことになるよな……。


『ユウは気軽に言うけど、ホントにできるのかなぁ。1万年も前に行方不明になった人を捜すなんて不可能に近いよ。だから、何も約束できないな』


『そうか……。そうだよねぇ……』


『いえ、約束など不要です。私は何も求めません。ましてや約束など滅相もないことです。ケイ様とユウナ様は自らの意志で行動すればよろしいのです』


 なるほど。やはり、こちらの意志を明快に示すことだ。


『よし、決めたっ! わたしは自分の意志でマスターを捜索する。ただし、自分ができる範囲の捜索だけどね。それに、わたしには他にやりたいことがあって、そっちを優先するから、マスターの捜索は後回しになると思う。ムリそうなら途中で捜索を諦めるかもしれない。結果はもちろん約束なんかできない。そして、捜索のために必要な知恵や情報なんかはアドミンに提供してもらう。わたしの意志は分かってもらえましたか?』


 オレは偉そうに宣言したが、自分で言いながら可笑しかった。自分に都合が良いことばかりを条件として並べたからだ。これはダメだな……。


『マスターの捜索を行うことについてケイ様の意志を確認しました。それに関する私の知恵や情報の提供は可能です。それから、今回の件とは直接関係しませんが、ケイ様への魔力制限を解除し、この異空間ソウルをケイ様に正式に割り当てます。これに合わせてサポートプログラムの魔力制限も解除され、独立したソウルリンクが与えられます。ケイ様がマスターの意向に反しない限り、異空間ソウルの正式オーナーの状態が継続されます』


『サポートプログラムってコタローのことよね? コタローにもソウルリンクが与えられるのなら、私には?』


『失礼しました。ユウナ様にも独立したソウルリンクを割り当てます。異空間ソウルについてはこれまでと同じようにケイ様との共有になりますが』


『魔力制限は?』


『もちろん解除します』


『やったわっ! やったーっ!』


 ユウが嬉しさいっぱい喜びいっぱいの感情を込めて念話を送ってきた。だが、オレはまだ喜べない。オレが宣言した内容について、アドミンがあっけなく了承したので、信じられなかったのだ。アドミンの真意を確認する必要がある。


『わたしに都合が良いことばかりを条件として並べたんですけど、それで本当に良いんですか?』


『マスターの捜索に関して、私からケイ様に求めることは何もありません。私に言えることは、初代の神族が死に絶えてから約8千年になりますが、その間、何も前進が無かったことに比べれば、大きな一歩を踏み出したということです』


 アドミンの言葉を聞いて、オレはようやく嬉しさが込み上げてきた。


『ええと、魔力制限が解除されたということは魔力が本来の〈400〉になったということですよね。独立したソウルリンクが与えられるというのは?』


『ケイ、そんなことも分からないの? コタロー、ケイに説明してあげて』


 ユウが偉そうに口を挟んでくるが、たぶんユウも分かっていないと思う。


『独立したソウルリンクが与えられたのは凄いことにゃのだぞう。それはだにゃ……』


 コタローが説明してくれたのはこういうことだ。今まではオレのソウルリンク1本をユウやコタローと共有していた。分かりやすく言えば、1本のパイプの中に流れる魔力をオレとユウとコタローで分け合いながら魔法を使っていたということだ。


 三人で分け合うから魔力が足りなくなることをいつも心配しながら魔法を使っていたのだが、ユウとコタローに独立したソウルリンクが与えられたことで、三人が並列で最大値までの魔力を遠慮せずに使えるようになったということだ。


 これは言わば戦力が一気に3倍になったことと等しい。オレの魔力が〈400〉になったということは、これからはユウもコタローも同時にそれぞれがオレと同じ〈400〉の魔力を使えるようになったということだ。しかもオレの魔力が高まれば、それに連動してユウとコタローの魔力も高まるそうだ。


『ただし、ユウナ様。ソウルだけの状態では異空間ソウルの外には出られません。なぜならユウナ様のソウルはケイ様の体にリンクされている特異な状態にあるので、無理に外へ出ようとするとソウルリンクが不安定になってリンクが切れてしまう恐れがあるからです。そうなると浮遊ソウルになってしまいますので十分にご注意ください。それとソウルが異空間ソウルの中にある状態では外部への攻撃魔法は使えません。今までと同じですからお分かりですね?』


『ちょっと待って。ソウルのままでは異空間ソウルからは出られないし、外の相手に対して攻撃魔法を使えないってことは……。別の言い方をすれば、私のソウルが体の中に入った状態になれば異空間ソウルから外に出られるし、攻撃魔法も使えるようになるってことよね?』


『ユウナ様、そのとおりです』


『もう一度確認させて。ケイや私の魔力が〈500〉以上になればソウルの一時交換ができるようになるから、そのときには私は自分の体に一時的に戻って異空間ソウルの外に出られるようになる。そういうことで間違いないわよね?』


 ユウの念押しには何としても異空間ソウルから出たいという執念が感じられる。


『はい。間違いありません』


『よかったぁーっ』


 嬉しさいっぱいの感情がユウの念話から伝わってきた。


 それにアドミンとこうして話し合いができるようになったことは大きな成果だ。


 この機会にオレとユウは遠慮なくアドミンへ色々と質問をさせてもらった。つまらない質問であってもアドミンは丁寧に答えてくれたのだが、その中の一つが暗示魔法についての質問だった。質問に対するアドミンの説明を聞いていて、自分が暗示魔法について大きな誤解をしていたことに気が付いた。どういうことかと言うと……。


 暗示魔法というのは普通の人族では使うことができない魔法だ。だがオレは暗示魔法を使うことができる。ただし発動に何度も失敗して時間が掛かり、その失敗にめげなければ、という条件が付くが。それはともかく、暗示はオレの切り札的な魔法と言って良いだろう。


 以前にユウやコタローから聞いた話だが、暗示魔法を使うには暗示スキルが必要とのことだ。そしてオレはその暗示スキルを保有しているらしい。今までは自分が神族と同じ能力を持っているから暗示スキルを保有しているのだと思っていた。だがそれはオレの勝手な思い込みだったようだ。


 この暗示スキルというのはスキル取得が極めて難しいそうで、神族でも大半の者は暗示魔法を使うことができないとのことだ。


 それではなぜオレが暗示スキルを保有しているのか。アドミンと話をして、その理由が分かってきた。


 実はその理由もミレイ神が行ったあの悪行が影響していたのだ。それを理解するためには、ミレイ神のあの悪行とアドミンが行った暫定処置を思い起こすことが必要だ。


 人工授精卵を代理出産の母体(ユウナの体;今ではオレの体だが)に入れたときに、母体の魔力特性がミレイ神と同じであったため、アドミンは母体をミレイ神だと誤認した。母体が神族であるにもかかわらずソウルリンクが途絶えており(実際は母体はユウナの体であるからソウルリンクが無いのは当然なのだが)、アドミンは母体のソウルリンクが異常な状態にあると判断して、母体に対して暫定的に新たなソウルゲートの個人用エリアやソウルリンクを割り当てたのだ。


 この暫定処置のことは半月ほど前にユウやコタローから教えてもらったからオレも知っていた。この暫定処置のおかげでオレは神族と同じ能力を持つことができたのだった。


 しかし、アドミンが行った暫定的な処置はそれだけではなかった。母体をミレイ神であると誤認していたアドミンは、ソウルゲートにバックアップしていたミレイ神のスキルを母体(正確には母体に定着したオレのソウル)に書き戻していたのだ。


 スキルの書き戻しが行われた結果、ミレイ神が保有していた暗示スキルをオレが取得することになった。このときにオレが得た暗示スキルは低いレベルらしいが、普通ならば絶対に使えない暗示魔法をオレが使えるようになったというのは大きな意味を持つ。


 オレは心からこの幸運と寛大なアドミンに感謝した。なにしろアドミンがこの誤認による暫定処置をたいした問題ではないと見過ごしてくれたおかげで、オレが暗示魔法を使えるようになったのだから。


『アドミン、ホントにありがとう。これからもよろしく』


 話し合いが終わってオレがお礼を言うと、ユウも何か言わないといけないと考えたようだ。


『ええと、アドミン。私たち、良いお友達になれそうね。よろしくね。それと私のことはユウと呼んでいいからね』


『はい。こちらこそ、よろしくお願いします』


 アドミンとは良い関係でこれからも付き合えそうだ。


 ※ 現在のケイの魔力〈400〉。

   (魔力制限が解除され、各自へ独立したソウルリンクが与えられたため)

 ※ 現在のユウの魔力〈400〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈400〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈180〉。


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